第45話 予選
俺含めて他の4人全て別グループになった。
これは後からアナスタシアに聞いた事だが、主催者側が忖度して別々のグループにしたらしい。
「先ずは安心だな。我々は別グループになる事が出来たから同じギルド会員で潰し合う事は無い。一人でもベスト16以上になればギルドとしても面目が保たれる。お前達油断するなよ!」
「はい!」
予選開始前、簡単な決起集会として最年長のグロッグが俺達4人を集めて鼓舞すると、俺以外の3人は真剣な顔で返事をしていた。
俺達5人は以下のグループに振り分けられていた。
Aグループ→ピエール
Dグループ→グロッグ
Eグループ→シャナズ
Fグループ→オムライス
Hグループ→ペゴンタ
各グループ16人のトーナメント方式。計算では3回勝てば上位2名に残り本選へ出場出来る事になる。
予選の予選と同じ様に各グループ同時に進行する為、自分の番じゃない時を見計らって他の4人の試合を見る必要があった。
俺は第一試合か……って、今すぐじゃないか! 慌ててFグループの闘技場へ向かう。
「Fグループ第一試合を始めますので、出場者は武道場へ上がって下さい!」
審判が武道場の真ん中で大声で叫んだ。
俺が武道場へ登ると後ろからペゴンタ達の声援が後ろから聞こえ、振り向くと4人は腕を組んで立っていた。
「俺達は第4試合以降だから応援に来てやったぞ! オムライス、油断は禁物だぞ!」
逆に見られていると非常に戦いにくいんだけど……そう思ったが言えるはずもなく、手を頭の後ろに置いてぺこぺこと頭を下げる仕草をして応えていると、4人が俺の後ろの方を見て表情が青ざめ始めたのに気付いた。
何事かと後ろへ振り向くと、新聞で見覚えのある男が立っていた。
あれは千人斬りの異名を持つ剣士……確かチョボコール。優勝候補の一人として挙げられていた剣士だった。
「オ……オムライス! 運が悪かったとしか言えないが、大丈夫だ! 少しでも爪痕を残せる様に頑張れ!」
ペゴンタが慰めの意味を込めて励ましてきた。アイツら全員、完全に俺が負けると思ってやがる。
でも悪いな、期待を裏切らせてもらうよ。ファクと戦うまでは負ける訳にはいかないんだ。
「チョボコール選手、オムライス選手は前へ。相手を再起不能、もしくわ参ったと降参した場合、後は場外へ出てしまった場合のみ勝敗が決まる。武器は剣のみとする。では始め!」
審判の合図でお互いが剣を抜いて構える。
「オムライスと言ったな? お前を斬れば1111人目だ。俺はキリの良い数字には特に拘りがあってな? 最高の技でお前を葬ってやろう。光栄に思うが良い」
チョボコールが両手に持った剣を舐めて言ってきた。
うわー、なんて悪趣味な奴なんだ。今まで斬った人数を数えているなんてな。
こんな奴に斬られて1111人目になるのはごめんだ。
そう思いながら、剣を抜いてチョボコールの攻撃に備えた。
「チェイヤー!!」
チョボコールが両手の剣を俺に向かって狂った様に連続で振り回してきた。
俺はそれを何とか剣で受け流したりしてかわす。しかし、一、二撃剣が胴の辺りの鎧をかすめた。※演技
防戦一方の戦いに、周りの観戦者はチョボコールがいつオムライスへ致命傷を与えるかと息を呑んで見つめていた。
「ヒャハー! 防御はなかなかやるじゃないか! だがこれで終わりだ! 髑髏流両刀斬首!」
そう言うと、両手の剣を交差してハサミの原理で俺の首を切り落とそうとしてきた。
ザクッ!
屈んで避けた拍子に足がツルッともつれて俺の兜がチョボコールの股間に突き刺ささった。
男なら想像しただけでも恐ろしい程の激痛だと分かるはずだ。
「なっ……が……こっ、こっ」
チョボコールは両手に持った剣を落とし、その代わり両手を股間に持っていった。
言葉にならない言葉を発すると、後ろに後ずさって行っいき、泡を吹きながら場外へ落ちていった。
審判を含め周りの観戦者は一瞬何が起きたか分からなかったが、審判が正気に戻ってチョボコールの状態を確認すると大声で叫んだ。
「チョボコール選手の場外! よって、オムライス選手の勝利です!」
ドッと周りの歓声を受けながら武道場を降りていくと、ペゴンタ達が駆け寄ってきた。
「ラッキーとはいえ凄いじゃないか! 足が滑って兜がチョボコールの股間へ突き刺さり……笑っちまうな!」
偶然を装う勝利。もはや剣術じゃないし……とにかく誰も気付いてない様で安心した。まさかチョボコールも自身が1111人目の犠牲者になるとは思ってなかっただろうな。
そして、残り二試合はギリギリで勝った様に見せて無事に本戦へ出場決定となった。
他の4人だが……
Aグループのピエールは3回戦目で惜しくも敗れて本選出場を逃す。
Dグループのグロッグは見事本選出場決定。
Eグループのシャナズは一回戦で敗退
そして、Hグループのペゴンタはあと一回勝てば本選出場に所まで来ていた。
「ペゴンタ! あと一回勝てば本選出場だぞ! 俺達の分まで頑張ってくれ!」
本選出場出来なかったピエールとシャナズがペゴンタを励ましていた。
最初はいけ好かない野郎だと思っていたが、俺の事を応援してくれたりと案外悪い奴でも無いし、素直に勝って欲しいと俺も思った。
すると、反対側からどっと大きな歓声が聞こえてきたのでそちらの方を見ると、見覚えのある剣を重ねた紋章を胸当てに施したファクが自信満々に腕を組んで武道場に立っていた。
ペゴンタの次の対戦相手はファクだった。
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