第4話 告白

「ゴレーム様。私、ずっと憧れだった公爵令息様と婚約が出来ましたの! これで、こんなど田舎の村とはサヨナラです。あっ、いけないいけない、村の誰かに聞かれてしまったらいけないわ! ふふっ(笑)」 


俺は見逃さなかった。彼女がそう言いながらもずっと笑顔を隠せなかった事を。 

勘違いしていた俺がいけないのだけど、俺に対して祈っていたのは村の安全を祈願していたのではなく、自身の玉の輿が出来るように祈願していたこと。そして、この村を出ていく事だった。  

それが、今日叶ったんだから、感情が抑えられなかったのだろう。


世の中、上手くいかないな・・・


マザー、調子はどうだい?


スキャンチュウ…


だよな。いったい何年スキャンするんだよ。


次の日、ラフシールは来なかった。待てど暮らせどラフシールは来ない。

おかしい…… いつもならとっくの前に来ていても良いのに。

結局、その日はラフシールは来なかった。


願いが叶ったからもう俺のお役御免と言うことか? 村を出ていく前にお別れの挨拶は来てくれるだろう・・・俺はそう楽観していたが、彼女が来なくなってから数ヵ月が過ぎようとしていた。  


ラフシールが来ないとこの村外れの場所には誰も来ない。つまり、数ヵ月俺は誰とも話していない。 

この村が廃れたら、村は忘れられ、俺という存在はこの世界から忘れ去られるのだろう。もう、それも良いかもしれない。 


ザッザッザッザッ 


遠くから足音が聞こえてきた。

こんな所に誰が?まさか・・・魔物か? 俺はすっかり魔物の存在を忘れていた。あの時以来、魔物は現れていなかったからだ。 


ドクドクドクドクドクドクドクドク 


心臓の鼓動が早くなる。 俺はただ、足音が聞こえる1点をじっと見つめていた。 


ガサッ!


見るとラフシールだった。相変わらず透き通るような美しさだ。

悲しい顔をしている。どうしたのだろうか?


すると、 ラフシールは俺の足下に突っ伏して泣き始めた。

俺は慰めることも寄り添ってやる事も出来ない。くそっ 俺の身体が石像なんかじゃなければ……


「どうして! どうしてよ! 私が何をしたって言うの! 何で・・・何で突然婚約を破棄されなきゃいけないのよ! ねぇ! ゴレーム! 何か言いなさいよ! 私のお祈りが足りなかったって言うの? ふざけるな! 折角、この村から出て優雅な社交界デビューが出来ると思っていたのに! この! この!気持ち悪い石像め! 」


ガシッ! ガシッ! ガシッ!


暴言だけでは足りないのか、不慣れな蹴りを2度、3度と俺に浴びせてきた。

なにも感じ無いから別に良いけど、正直言って彼女のこの行動にドン引きだった。


婚約者はラフシールの本性を見抜いたのかもしれない。だから、婚約破棄をしたんじゃないのか?


もう、ラフシールが明日から来ることは無いだろう、俺は彼女の願いを叶えてあげられなかったのだから……いや、もう来なくていい。俺が勝手なイメージを作っていただけだから、ラフシールは何も悪くない。


「もう嫌だ! 嫌だ! もう私は終わりよ!こんな人生を続けるなら死んだほうがましよ!このままこの村に居たら私は。、。。」


そう言うと、隠し持っていたナイフを自分の首下に突きつけた。


おい! ちょっと待て! 何やってるんだ! 


「死んでやる!」


マザー、おい 何とかならないのか!


スキャンチュウ・・・


ふざけるなよ! 逃げるんじゃねぇよ! 諦めるんじゃねぇよ! 残された奴の気持ちを考えた事あるか?


「あ・・・ヴ・・・」


「きゃあ! 何? 何なの? 石像から声が?」


「ブ... ケ・・・」


「ば・・・化物!いやーーー」


ラフシールは背を向けて一目散に俺から離れていった。


あれ? 今、少し喋れなかったか?

俺はもう1度喋ろうとしたが相変わらず駄目だった。


マザー、調子はどうだい?


スキャンチュウ…


この毎日のやり取りに疲れてしまった。

ラフシールはもう2度とここへ来る事は無いだろう。

もうどうでもよくなった。暫くはもう何も考えたく無い。



「司祭様、本当にこの石像を撤去してもよろしいので?」


「ああ、ラフシールが不気味な声がすると言っていた。これで大義名分でこの石像を撤去出来るわけだ」


「しかし、サイモン卿のお爺様の代から守り神として祀っていたこの石像です。お二人が黙っていると思いません」


「馬鹿らしい、こいつは守り神なんかじゃ無い、村に災いを持ち込む元凶だ!私からサイモン卿へは上手く言っておく。明日にでも撤去するぞ!」


「分かりました 」


「それより、例の手筈もしただろうな?」


「はい、、、しかし、村の安全が、、」


「なぁに、、、全てはこの石像のせいにしたらいい。物言わぬからな はっはっはっ!」


何だと? 俺は撤去されるのか?


まぁそれもいいかもな。このまま何も出来ないよりはいっそ止めを刺してくれた方がいいや。

煮るなり焼くなり好きにしてくれ!


マザー、調子はどうだい?


チョウシハ ワルクナイデス


ああそう、悪くないか…… って おい!


マザー、スキャンは終わったのか?


スコシマエニ カンリョウシマシタ


マザー、終わったなら早く言ってくれよ!


スミマセン


マザー、スキャンにどれだけの時間が経ったんだ?


10ネント252ニチデス


そんなに経っていたのか...


マザー, スキャンの結果はどうだった?


リロンテキニ ウゴカスコトハ カノウデス ナゼナラ コノカラダハ イキテイルカラデス アナタノシンオン ズットキコエテイマシタ


心音? そうだ。俺は魔物と対峙した時、鼓動が早くなった。どうして、俺はそんな事に気づかなかったのか?


とにかく動かす事が出来るんだな? よっしゃ!

でマザー、どうすりゃ良いんだ?


セツメイシテモ アナタノ アタマデハ リカイデキナイノデ カンタン二 セツメイシマス


ツヨイ デンキシンゴウヲ アタエレバ ウゴケルヨウニ ナルハズデス


さりげなく俺の事disってないか?

それでもいいや! 電気信号って言ったよな? どうやって? マザー、教えてくれ


コノセカイデハ キョウリョクナ デンキガ ソンザイシマセン


アナタヘ チョクセツ カミナリガ オチルノガ イチバン イイホウホウデス


100ネンイナイニ オチルカクリツ 2%


500ネンイナイニ オチルカクリツ 45%


1000ネンイナイニ オチルカクリツ 99%


えっ? そんなに待てるかよ!

俺は、明日には撤去されてしまうんだぞ!


ちくしょー! ぬか喜びかよ!

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