第3話 問答
ここは俺が住んでいる世界?
マザー、俺は凄く混乱している。俺は石像で、この世界は俺の住んでいる世界と言ったな?説明をしてくれないか?
キミツジコウガ フクマレマスノデ オコタエデキナイコトモ アリマス ゴリョウショウクダサイ
マザー、前置きはいいから答えてくれ。
ショウチシマシタ アナタガ セキゾウニナッテイル リユウハ キミツジコウニ フレマスノデ オコタエデキマセン
ハァ? 答えになってないじゃないか!
………
あー、くそっ! マザー、じゃあこの世界が俺の住んでいる世界だと言う証拠は?
オコタエシマス ソレハ ワタシガ カクニンシテイルカラデス
マザー、確認? どうやって?
キミツジコウニ フレルタメ オコタエデキマセン
マザー、この世界はお前が作ったんじゃないのか?
ワタシガ コノセカイヲ ツクッタノデハアリマセン スベテハ ナリユキノ ケッカデス
マザー、じゃあ機密事項とは何だ? 何が対象だ?
オコタエシマス キミツジコウトハ コッカニトッテ フリエキナル バアイデス
全く答えになってないじゃないか!
マザー、機密事項を解除する方法は?
オコタエデキマセン
マザー、解除する方法はあるのかないのか? YESかNOで答えくれ
……
マザー、聞いてるのか? 世界最高のAIでも答えれないことがあるんだな? とんだお笑いだな! YESかNOも言えないのか?
イェス
良し、機密事項の解除方法がある事は分かった。国家機密情報を素人が直ぐに確認出来るなんて思わないから後回しにするか。
マザー、肝心な事を聞くのを忘れてた。俺はどうして石像になっている?
オコタエシマス ゲンミツニハ アナタジシンガ セキゾウニナッテイルノデハ アリマセン ナゼナラ アナタノ カラダハ モウナイカラデス
マザー、俺の身体はもう無いって? ちょっと待て!俺自身が石化してるんじゃ無いのか? 俺の意識はどうしてこの石像に? 教えてくれ!
キミツジコウニ フレルタメ オコタエデキマセン
マザー、言い方を変える。さっき、”俺自信が石像になってない”と言ったな? じゃあ、誰かが石像になってしまった?
そう言うことか?
ソノトオリデス ソレイジョウハ キミツジコウニ フレルタメ オコタエデキマセン
またかよ・・・
俺の身体がもう無いって事は・・・死んでるようなものじゃないか。まさか俺は一生このまま生きていくのか? 冗談じゃない!
マザー、この状態を何とかしてくれ!動けるようにするにはどうしたらいいんだ?
ホウホウヲ ケンサクスルノニ ジカンガ カカリマスガ ヨロシイデスカ?
マザー、待つから早くしてくれ!
ショウチシマシタ ソレデハ オマチクダサイ
・・・もう、3時間位経っただろうか?
そろそろ分かっても良いだろう。
よし、マザー、分かったか?
スキャンチュウ……
まっ、まぁ時間は掛かるよな?気長に待つよ
・・・どれくらいの日数が経ったのだろうか?
マザーに聞いてもずっとスキャン中としか言わない。
今更気付いたんだが、この村の人間逹は奇妙な格好をしてるし、髪の色も千差万別。まるで違う世界にまぎれこんでしまった感覚だった。
しかし、マザーの回答ではここは俺が住んでいる世界と一緒だと言うし。
マザーの回答を待っている間、女の子は毎日俺の所へ来て今日あった楽しい事、悲しい事、お祈りを欠かさなかった。
それにしても、お祈りを捧げているこの石像は一体どんな姿をしているのか?残念ながら俺には確認する術が無い。
最初は女の子の話なんて興味無いし、適当に流していた。
いつしか、喋れない、動けない俺にとって彼女の話が唯一の楽しみになっていた。
そう、俺は孤独に耐えられなかったんだ。
女の子の名前はラフシールと言った。
ゼホニー村を統治する貴族がラフシールの父親だと分かった。つまり彼女は貴族令嬢ってわけだ。
母親は幼い頃に魔物に殺されたらしい。 いきなり”魔物”って言葉が出て違和感があるかもしれないが
この世界には魔物、まぁモンスターみたいなものがいるらしい。信じられるか? ゲームの世界じゃないのだから。
それにしてもこの石像…… 元・人間らしいけど何者なんだろうか?
ラフシールが言うには元々ゴミ捨て場所に汚物で泥々になって立っていたらしい。
村の皆が気味悪がって処分しようとしたら、それをラフシールのお父さんのお祖父ちゃん、つまりひいおじいちゃんが綺麗にして村外れに祀ったとの事。
こんな風に、ただ想像を膨らませて考え事をしているとあっという間に日が暮れてしまう。
夜になると誰も来ない、遠目にポツポツ明かりが見えるがそれだけだ。この時間が一番嫌いだった。
ガサガサ ガサガサ
すると奥の茂みから音が聞こえた。
ラフシール?
いや、違う。最初は風か何かだと思っていた。
しかし、明らかに違う”何かが”暗闇で動きゆっくりとこちらに近づいてきた。
な・・・なんだこいつは?
ゆうに2mは越える何かが目の前に立っていた。
熊? 違う。熊なんかじゃない! もっと違う見たことがない・・・もしかしてこいつがラフシールが言っていた魔物?
暗闇に真っ赤に光る目が三つ四つ俺を見つめていた。
怖い・・・来るな・・・ 直感がこいつと関わるなと警笛を鳴らす。
ドクドクドクドク
心臓が鼓動が早くなる。逃げることも、声も出すことが出来ない俺はただじっと奴の目を見るしかなかった。
「グルルルルルル」
低く唸ったかと思うと、奴は再び奥の茂みの方へ移動していった。
あれが魔物・・・奴がこの村の外れに来たという事はこの村が危ないって事じゃないか!
ラフシールの命だって・・・くそっ! 俺には何も出来ないのか!
マザー、聞こえるか?
スキャンチュウ・・・
「ゴレーム様、今日はご報告があります。ずっとずっと小さい時からお祈りした事が今日叶いました。神様って本当にいるのですね!」
ラフシールはすっかり成長し、誰もが羨うらやましがる程の美しい娘になっていた。
毎日変わらず俺の所へ来て今日あった出来事とお祈りをしてくれていた。
マザーは相変わらずスキャンチュウで回答がない。すっかり諦めかけた時にラフシールからの唐突な報告に、
俺は一体何の事だ?と次の言葉を待った。
「ゴレーム様。私・・・」
俺はラフシールに幻想を抱いていたのかもしれない。
父親想いで喜怒哀楽があって、母親が居なくても卑屈にならずに前向きに生きているところだった。
俺には無い彼女の清廉さがまぶしく見えた。
この告白があるまでは・・・
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