第7話 久々
ラフシールが死んでる?
「は? 何言ってんだよ? 外傷は無かったし、息していたじゃないか! マザー、理由を説明しろ!」
『カンケツ ニ イイマス カノジョハ ノウニ ダメージヲウケテ ホボ ノウシ ジョウタイデス コノママ ホッテオイタラ モッテ ミッカゴニハ ジハツコキュウガ デキナクナリ シンノイミデ シニマス』
そ、そんな、せっかく…… せっかく ラフシ―ルにお礼を言えると思っていたのによ。あの娘が毎日祈りに来てくれたお陰で、俺は長い間耐えてこれたんだ。
あんまりだ、こんな事って……あんまりじゃないか?
「ゴレーム様、どうぞこちらへ」
従者が怯える目をしながら作り笑いをして声を掛けてきた。
「バガッダ」(分かった)
招待された屋敷は村の中央に配置し一際目立っていた。建物自体は、俺の知っている豪華な洋館が当てはまるかもしれない。
大きな玄関扉を開けると吹き抜け構造になっていて、2階へと続く階段が見える。シャンデリア、装飾品、敷き詰められたカーペット、まさに貴族に相応しい内装だった。
コツッ コツッ コツッ
2階から男が降りてきた。
「ゴレーム様、村を救って頂きありがとうございました。私はこの村、セボニーを統治するサイモン、位は男爵になります」
「バブジールボよゔだびば?」(ラフシールの容態は?)
「?」
駄目だ、何言っているか理解していない。
「バザー、 ごのごえはんどがばほだいが?」
(マザー、この声何とかならないか?)
『ミズヲ ノンデ ウガイヲシテ ノドニツマッテイル イシヲ ハキダセバ ウマクシャベラレルヨウニ ナルハズデス』
俺は水を何とか貰って、マザーの言う通り、うがいを何度もして石を吐き出した。
「ゴホッゴホッ。ふー。よしっ、上手く喋られるようになったぞ。サイモン男爵、ラフシールの容態は?」
「えっ? ええ……司祭様が魔除けもしてくれましたし大丈夫です。娘をご存知で?」
「彼女は毎日俺にお祈りを捧げに来ていた。俺の恩人だ。後で、ラフシールへお見舞いしたいんだけど?」
「承知しました。ゴレーム様、部屋を用意させて頂きました。今日はゆっくり休んでください。明日からお忙しくなりますから」
明日から忙しくなる? 客室に通された俺は何か釈然としなかった。司祭の魔除けといい気になる事がたくさんある。しかし、久しぶりに身体を動かしたら凄く疲れてしまったようだ。
何だか眠くなってきた。
明日は……ラフシールに……会いに行かないと……
「ゴレーム様! おはようございます! お食事の用意が出来ました」
給士の元気な声で目を覚ます。あれ? いつの間にか眠ってしまったのか? 凄く久しぶりに眠った感じがした。
ぐぐーーー
続いて腹の音が鳴る。空腹の合図だ。懐かしい感じだ。
「どうぞこちらへお座り下さい」
案内された食堂には、白いクロスが掛けられた長テーブルがあり、その上には肉、魚、野菜らしい料理がところ狭しと置かれていた。
「さぁさぁ、ゴレーム様、ご遠慮なく食べて下さい」
サイモンが両手を広げて促す。ならば遠慮なく頂こうじゃないか。
ガツガツガツムシャムシャムシャムシャ
ガツガツムシャムシャガツムシャ
美味い!ご飯ってこんなに美味しかったのだろうか?テーブルの上に置いてある食事を全て平らげてしまった。
「……おほんっ! 所で俺を
「私の祖父がゴレーム様を見つけたのです。祖父は信心深い方で、一目見てただの石像では無いと感じ村の外れに守り神として祀ったのです。恥ずかしながら、私含め村人は祖父の事を信じておりませんでした。ただ一人ラフシールだけは信じて祈りを捧げていたようですが」
「俺は彼女の祈りに救われたんだ。彼女の容態が気になる。あんたは父親なのにどうして平静でいられるんだ?」
「そ、それは……前にも言いましたが、司祭様が魔除けをしてくださったので安心しているのです。それに、父親である前に村を統治する立場だからです。私だってラフシールの事は心配しています!」
雑談を終えると、ラフシールが療養している部屋へ侍女が案内をしてくれた。
ガチャ
部屋を開けると奥のベッドでラフシールが寝ていた。
周りには誰も居ない。魔除けをしたであろうよく分からない飾りがベッドを囲んでいた。それにしても、どうも色々と引っ掛かる。
ベッドの側まで行ってラフシールの顔を眺めた。この娘が、後三日の命だって? 俺にはとても信じられなかった。
この娘を助ける方法は無いのか? クソっ! 俺に特別な力があったら……あったら?
どうして気付かなかったんだ? 俺には世界最高のAI、マザーが居るじゃないか!
「マザー、この娘を助けたい。この世界の医学で助ける事は出来ないのか?」
『コノセカイノ イガクデハ タスケルコトハ デキマセン』
無情にもマザーの答えが胸に突き刺さる。この世界の医学では助ける事が出来ないなんて……この世界の医学では…… はっ!
「マザー、助けられるならどんな方法だっていい! 有るのか無いのか!」
……
「おい! 何で答えない! マザー、答えろ!」
『タスケラレル カノウセイガ タカイ ホウホウハ アリマス シッパイスル カノウセイモ アリマス』
「マザー、お前がそこまで言うんだからかなりリスクが高い方法なんだな? だけど、このまま何もせずにラフシールが死ぬくらいになら、一か八かやってみる価値はあると思う。だから、その方法を教えてくれ」
『ラフシールサマノ ノウノシュウフクヲ スルヒツヨウガアリマス ソレヲスル ユイイツノ ホウホウハ アナタノ ミミ二ツイテイル モノヲ ツカイマス』
「耳に付いているもの? 一体何が付いているんだ?」
ジャリ…… 耳を触ると耳の穴に砂まみれの何かがはさまっていた。これは……イヤホンだ。
「これって? まさかマザーの本体か? どうしてこの石像の耳についてるんだ?」
『キミツジコウニ フレルタメ オコタエデキマセン』
「あーはいはい機密事項ね。で、これをどうするんだ?」
『ソレヲハズシテ ラフシールサマノ ミミヘ ツケテクダサイ ソウスレ』
俺は外してラフシールの耳へ付けた。
「さぁ、付けたぞ! マザー、次はどうするんだ?」
……シーン
「マザー、聞こえているのか?」
……シーン
あっ! 俺は急いでマザーのイヤホンを自分の耳へ付け直した。
「マザー、で? どうするんだ?」
『オチツイテキイテクダサイ、ミミヘツケテ ミッカ ヨウスヲミテクダサイ。 モシ メヲ サマサナカッタラ シッパイデス ラフシールサマハ シニマス ソシテ ワタシモ シニマス ドウシマスカ?』
「当然やる! もう二度と大切な人を失いたく無い! 失敗したら俺も死んでやる!マザー、頼む!」
『ショウチシマシタ』
耳から【マザー】本体を外してラフシールの耳へつけた。後は目を覚ますのを待つだけ。
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