第52話 接近

「これは凄いな……」


パーティ会場は見上げる程の天井の高さ。その天井にはステンドグラスや細かに装飾も施されている。


広さはサッカーのグランド位あるんじゃないかと思う位広い。


「エメス!」


アナスタシアが声を掛けてきた。

綺麗なドレスに身に纏い、普段化粧っ気が無いのにこのパーティの為に化粧をしたようだ。男達が遠巻きにアナスタシアに注目しているのが分かる。


「……しっ! 俺はオムライスだ!」


「ははっ、すまない…… 久しぶりにドレスを着てみたんだけど……どうかな?」


「文句無しに綺麗だよ」


「えっ? そ、そうかな? いや……そんな直球に……言ってくれるから」


アナスタシアが顔を赤くして目を逸らす。ありゃ、どうしたんだ?


「いや……まぁ、お前には仕事を斡旋してくれたり、感謝しているし、義理というか……」


その言葉を聞いたアナスタシアはキッと顔が一瞬険しくなり「ふんっ」と言って去っていった。


『エメス様、女性に義理だからなんて言ったら怒りますよ?』


マザーが耳打ちをしてきて初めて失礼な事を言った事に気付いたが時既に遅し。

いや、まさかあんな反応するなんてな。


「おやおやおやー、大健闘したオムライスさんですよねー! 試合お疲れ様でしたー! 顔中包帯巻いてどうしたんですかー?」


メイプルが駆け寄ってきた。


「うっ、会いたくない奴が来た」


「そんなー、ひどい事言わないでくださいよー! 私はー、オムライスさんならー、別に付き合っても良いかなーって思ってるぐらいですよー?」

軽いノリで来るものだからコイツを相手にするのは疲れる。


「あー、ハイハイ。バズるネタは何もないからな? ラフシール、行くぞ!」


マザーの手を引っ張って行こうとするとマザーが居なくなっていた。

あれ? どこ行ったんだ? 

辺りを見回すがどこにも居ない。


何処かで見つかるだろう、そう楽観的に考えていた。

そう言えばこのパーティ、何が目的だっけ?


パーティ会場を見る限り貴族の男女がグラスを片手に楽しそうに会話をしていた。

社交界みたいなものか?


所々で、一人を囲んで異性が取り囲んでいるのが見えるし、未来の結婚相手でも探してるのだろう。


あれ?

今気付いたが俺の周りに誰も人が居ない……

ま、まぁ 顔面包帯をグルグル巻きにした奴がいたら避けるよな……


俺は給仕が運んできたグラスに入った酒を手に取ると一気に飲み干した。まー、景気付けってやつだ。


それにしてもマザーは何処へ行ったのだろうか?


「皆様、大会主催者のマゼランです。今宵、ダミナーイグ剣術大会が無事に終了いたしました。これも皆様のご協力があっての事です」


マゼランがマイクを使ってアナウンスをすると、会場は拍手で包まれた。


「皆さん! この大会を盛り上げてくれた英雄達を壇上へ呼びたいと思います。グロッグ選手、オムライス選手、スアルーホ選手! こちらへお越しください!」


マゼランがマイクで会場中に呼びかけると、再び会場中は大きな拍手で包まれる。これじゃあ隠れる事が出来ないな……


仕方なく遠く先に見える壇上へと向かうと周りから注目される。


「おい、あれってオムライスなのか?」


「グロッグでも無いしスアルーホでも無い。消去法で言えばオムライスしか居ないな」


「顔中包帯だらけでどうしたんだ?」


「試合の怪我だろう? ボロボロじゃないか?」


等、壇上へ到着する前に出席者達の好奇の目にさらされていた。


「準優勝のオムライス選手が最後に到着しました。皆様大きな拍手を!」


盛大な拍手が俺に浴びせられる。

恥ずかしいな……頼むから止めてくれ。


壇上に上がり、他の二人の横に並ぶ。


「うわ……」


思わず声が漏れる。

俺達を見つめる無数の視線。未だかつてこんなに注目をされた事なんて……無いわけじゃ無いがやっぱり苦手だ。


「御三方、唐突ですが試合の感想をお願いします。あっ、勿論手短に! 気になる異性に早く声を掛けたい方達も沢山いらっしゃいますので!」


「ハハハハ!」


観客からドッと笑いが聞こえてきた。


グロッグは涙を流しながら熱く試合の事を語り、共感した参加者から鼻を啜る音があちこちで聞こえてきた。


俺は……


「えー、運が良かったと思います。ありがとうございました」


と、一言で終わらせた。


その後のスアルーホは酒に酔って長い演説をするものだから途中でマゼランに止められていた。


晒し者になった俺達は一通り受け答えを終えて壇上から降りようとした時、誰かを静止する声が聞こえてきた。


「ルーシャ王女!お待ちくだされ!」


声の方を見るとルーシャがこっちにツカツカと歩いてくるのが見える。

モーゼの滝の様に集まった人達は二つに分かれてルーシャが通る先の道を開ける。


「ルーシャ王女……どうされましたか?」

ルーシャが段取りに無い行動をするものだからマゼランが困惑してたずねた。


しかし、ルーシャは意に介さず壇上まで登ると、今度は俺の目の前まで来てじっと顔を見つめてきた。


「な、なんでしょうか?」


「やっぱりエメスだ…… ずっと……ずっと探してたのよ?」


そう言うと、ルーシャは俺に抱きついてきた。


「あ、あのー、オムライス選手とは一体どういう関係で?」

目の前で起こっている状況に脳が追いつかないマゼランがルーシャへ再びたずねる。


「どういった関係? 彼は私の婚約者よ?」


「えーーーーーー!!!」



※※※※※※※※※※※※※※※※

【あとがき】

再開したら読んでくれている読者さんが予想以上に増えているので、更新……頑張ります。


《ラブコメ新連載》を始めました!


この作品が気に入っていただけている読者さんなら、こちらも気に入っていただけると思います! 両作品モチベーション維持の為、応援を込めてぜひよろしくお願いします


↓↓↓


https://kakuyomu.jp/works/16817330665662110777

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る