第30話、話は聞かせてもらった、地球は滅亡する!

 時は流れ、遂にその時が来た。

 高嶺家の司令室と研究室では、今日も日夜問わず地球外からの攻撃を警戒し、【サキュベーター】などの研究を行っていた。

「上空に高エネルギー反応確認、こ、これは……!!」

 白衣に身を包んだ研究員は、震える手を電話に伸ばした。

「所長……月の奴らが、攻撃の準備をしています」

「そうみたいだねー」

 電話から聞こえるはずの声が後ろから聞こえた。

「……所長、いつの間にっ!?」

 研究員が後ろを振り返ると、折り畳み式の携帯電話を持ったイロハがそこに立っていた。

「私の方でも観測できたよー。月に居る【サキュベーター】が例のアレを発動させたみたいだねー」

「わ、私たちはど、どうすれば……!?」

「策はあるよー。でも、まずは『あの子たち』を呼ばないとねー。もしもしー、レイコちゃーん? 緊急招集、鬼童くんとアカネちゃんも呼んできてねー」


───司令室


 ざわめく司令室、各員は戦闘配置に着き、指示を仰いだり送ったりしていた。研究員は貞男たちが司令室に入ったのを確認すると、大きなモニターの前に立った。

「現在対処中の所長に代わり、私から状況の確認と作戦のブリーフィングを行わせていただきます」

「高嶺さん、これって……」

「緊急事態よ、ちゃんと聞いてなさい、紅葉さんも」

 アカネは慣れない緊迫感に落ち着かない様子だったが、レイコの言葉を聞いて頑張って集中することにした。

「まず、順を追って説明します。数年前から私たちは月に生じた異常について検証を進めていました。所長の分析により、月は【サキュベーター】の【貞器】によって改造され、要塞化されていることが判明……つまり、あの月そのものが巨大な【貞器】となっていたのです」

「そして今日、月からとてつもない量のエネルギーが観測されました。そう、【貞力】が月に注がれているのです。これだけ高出力のエネルギーを使った【貞器】、いえ……【最終終末貞器】を使われてしまえば、地球は瞬く間に業火に焼かれ、全ての生命体は死に絶えることでしょう」

ざわ……ざわ……。

「お静かに。まだ猶予はあります。そして、手段もあります」

 モニターに作戦計画が映し出される。

「【最終終末貞器】の起動を停止するためにはいくつか方法があります。まず一つ、月そのものを破壊してしまう。しかし、月周辺に物理攻撃を遮断する強力なバリアが張られていることさえも予想され、そもそも月まで届く兵器を人類は有していません」

「そして二つ目、この【貞器】を破壊する。この方法は月に強力な【貞器】を使える人間を送り出さなければなりません。三つ目の方法は【貞力】を生み出す動力源を倒すというものですが、どちらにしろ誰かが月に行かなければ、地球は滅びます」

「それでボクたちが呼ばれた、ってこと……?」

「レイコ様、鬼童様……どうか、お願いします……」

 モニター前の研究員が頭を下げる。

「ワタシも月に行くぞ!! この星の生活気に入ったから!!」

「アカネ、ありがとう……」

「まぁ、あなたたち……いえ、私たちは友達だものね」

「うん!!」

「レイコ様、鬼童様、紅葉様……感謝します。作戦開始は今から10時間後、敵の【貞力】の充填完了、つまりタイムリミットは120時間、つまり110時間以内に先程説明した方法の内どれかを選択し、遂行しなければいけません。あっ……」

 モニターにイロハの姿が映る。

「やぁやぁ……どうやら三人とも説明は聞いたみたいだねー。こっちも準備終わりそうだから、こっちに来てねー」

 そして、彼らはまた高嶺イロハの家に向かうのだった。

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