第27話、セクハラハイスクール
一時間目、数学
「ウフフ……米山くん、私の点Pと点Pの位置の距離……求めてみなさい」
「はっ、はい!!」
数学教師の深山は教壇の上に脚を組んで、自らのパツンパツンのミニスカートを見えるか見えないかの微妙なラインで保っている。教室中の男子の視線が彼女に集まり、静かなる熱気が高まっていく。
「せ、先生……! 具体的な数字が無いので分かりません!!」
「じゃあ、定規で測ってみる?」
深山は胸元から定規を取り出し、それをおもむろに下腹部に押し当てた。
「米山くんのは、どこくらいかな?」
「そ、それは……ごにょごにょ……」
「ふーん、なるほどね……じゃあ、1.3……くらいかな?」
「ひゃ、ひゃい……」
深山に揶揄われた男子生徒は顔を真っ赤にして、机に突っ伏した。
「貞男、これ何の話だ?」
「さ、さぁ……」
その後もその女教師は男子生徒に円周率が云々とか、そんなことばっかり質問していった。
二時間目、日本史
「えー、今日のテーマは性の歴史……今日は『ガチエロ・デイ』とのことで、わざわざ自宅からこのようなものを持ってきました。
社会科教師の田代が持ってきたのは、木製でできた卑猥な玩具だった。
「これはハリガタと呼ばれる中・近世の性具です。その歴史は紀元前・古代からとは言われていますが……実態は分かっていません。ですが、中世にはすでに使用されていたということが分かっていまして……近世ではありますが、江戸時代にはこのような『春画』が描かれています」
教室がどよめく。田代が黒板に設置した紙には、いかにも昔の大衆文化という感じの絵柄で描かれたエッチな絵が描かれていた。
「このように、性具を使って自らを慰めるということに関しては、古来より行われてきたことで、何も恥ずかしいということが分かりますよね。永田さんは週何回くらいするんですか?」
田代は話の流れでしれっと女子にセクハラをする。しかし、誰も止める様子がない。
「えっ……えっと……その……ごにょごにょ」
「なるほど……意外と多いんですね」
「いっ、言わないで……」
その社会科教師は女子生徒だけでなく男子生徒にもそんなことを聞いて回って、授業の時間をフルに使った。
三時間目、国語
「フ、フヒ……で、ではここの文章を樋口さん、よ、読んでください……フヒ」
小太りの中年男性が女子生徒にそう言った。彼の名前は尾谷、この学校の国語教師で、その額からは常にだらだらと脂汗を流し、しきりにハンカチで顔を拭うことで校内では有名になっていている。女子生徒からは少し視線を感じた程度で陰口を叩かれるような嫌われ者である。授業中にもかかわらず、彼は笑いを抑えきれないようだった。
「は、はい……!」
樋口と呼ばれた女子生徒が教科書を広げ、口を開いた。
──美千留の夫の上司である花菱光男は、夫の不在中に二人の家を訪ねてきた。彼は学生時代ラガーマンをしていた影響で恰幅がよく、夫の弱弱しい身体とは比べ物にならないほど屈強だった。
彼はその程よく肉付いた柔い身体を抱き寄せると、彼女の声からくぐもった声が漏れ出た。
「駄目よ……主人が帰ってきちゃう」
「へぇ……アイツが帰ってこなきゃいいんだ」
「そ、そういう訳じゃ……」
彼は懐からスマートフォンを取り出し、彼女の夫からのメッセージを見せた。そこには飲み会の席で、彼女より若々しく美しい女性と腕を組んだ夫の写真が写っていた。
「今頃あの人も若い女の子と楽しんでるんだから、奥さんもちょっとくらいは……ね?」
「う、嘘よ……! 主人が……あの人がそんな……」
「我慢は良くないよ……だって、最近ご無沙汰なんでしょ?」
「そ、それは……」
光男は薄ら笑いを浮かべた。
「奥さん、まだまだ全然若いのに……可哀そうだなぁ。アイツはこんな良いオンナを放っておいて、若いオンナとヨロシクやってんだから、ねぇ?」
「あ、あの人の悪いこと言わないでっ……んむっ!?」
彼は彼女の唇を強引に奪い、さらに強く抱きしめた。夫がしたくてもできないような、痛くて苦しい抱擁だ。その悦楽とは程遠い苦悶が、彼女の中に眠るモノに火をつけた。
「……シャワー、浴びていいかしら?」
「寝室で待っているよ」
───
(な、なんだこの始まり方……こんな不倫モノが教科書に載ってるなんて思わなかったな……)
貞男は教科書を読み込んでいないので分からないが、そんな物載っている訳が無い。その後は怒涛の濡れ場展開が続き、その全てを女子生徒が読んだ。普段清楚なあの子から発される熱い吐息交じりの冒涜的な朗読に興奮した男子たちは授業が終わり次第トイレに駆け込んでいったのだった。
そして午前最後の授業の時が来た。
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