第26話、一番ダルい夏休み明けに事件を起こすのはやめろ!
長いようで短い夏休みが終わった。貞男はアカネとゲームをしたりアニメを見たり、とにかくよく遊んだ。時々レイコを呼んで外でも遊んだ。レイコは面倒見が良く、二人の急な思い付きで呼び出されても駆け付けた。彼女は実質、二人の保護者と言えるだろう。
夏休み明けの教室には色んな人間が居る。夏休みの課題が終わっていない者、遊び疲れて勉学に頭を切り替えられていない者、現実逃避をする者……貞男は無論、その全てだった。
「夏休みって、こんなに疲れるんだ……」
貞男は去年の夏休み、一度も家から外に出なかった。今年の夏は毎日のようにアカネが家に押しかけてくるため、気が休まることは一度も無かった。
「さっだおー!! 今日からまた学校だなー!!」
「そ、そうだね……」
教室の机で突っ伏していた貞男にアカネが大声で話しかけた。
「あんま夏休みと変わらなそうだね……」
「ずっと楽しい時間が続くな!」
「あ、あはは……」
貞男の口からは乾いた笑いしか出なかった。疲れ果てた彼の目の前でアカネがぴょんぴょんと跳ねていた。
二人の会話が止まると、教室が何やらざわついてることに彼は気づいた。
「おい……聞いたかよ」
「聞いた聞いた!! 担任が行方不明になって、新しい先生が来るんだよね!」
「急な教師の失踪……妙ですね。これはまさか淫ナミティか、フリーメ淫ソンか……うっ、僕の右目が疼く……静まれ、僕の中の邪竜……!!」
(なんか最後の人おかしかったけど、休みの間なにがあったんだろう……)
「貞男、聞いたか!! 新しい先生が来るんだって!!」
「行方不明とか言ってるから、あんま喜ばない方がいいかもね」
「まぁ、飽きたら戻ってくるだろ!」
「そんな、家出少年とか猫とかじゃないんだから……」
「猫とあのおっさんを比べるな!」
「えっ、えぇ……ボクが怒られるの……?」
そんなことを話していると、教室のドアが開いた。教室中の生徒が一斉に同じ方向を向く。その視線は、何もかもが青い若々しい、あの女性のもとへ……。
「あっ、あれは……!?」
「カリン……ッ!! 何しに来た!!!!」
「ふふふ……何しにって……今日から私がこの学校で、このクラスの担任に任されることになったの。アカネ、貞男くん、これからよろしくね」
夏休み明け最初の朝礼は、碧山カリンの赴任から始まったのだった。
そして貞男たちの新学期が始まった。アカネと貞男は課題を忘れていた……というより最初からやる気は全くなかったのだが、数日間居残りで、カリンの前で全ての課題をやらされることになった。その間、カリンは何も行動を起こさなかったようにみえた。
「はぁ……やっと全部宿題終わったね」
「疲れたー……よし、遊びに行くぞ!! レイコも誘おう!!」
「ア、アカネ……さすがにもう遅いよ、高嶺さんもう帰ってるはずだし……」
「ふふふ……いってらっしゃい」
「フンだ!」
そうして彼らはいつものように放課後を過ごした。しかし、この時にはすでにカリンの計画は始まっていたのだ。
時は流れて、周囲だけでなく貞男たちも「カリン先生」に慣れてきた。そんなある日のことだった。
カリンは朝のホームルームで、「重大発表」を行った。
「皆さん……よく聞いてください。少子化対策の一環として、皆さんには性について学んで頂く必要があります。今日の午前中は『ガチエロ・デイ』……どんな授業も情欲をそそる素晴らしいエロティシズムを感じられることでしょう。若者よ、性欲を抱け!!」
(……ガチエロ・デイ!? な、なんだか危険な響きだけど……ちょっと気になるから止めないで体験してみよう……)
貞男はちょっとどころかかなり興味深々だったが、アカネはカリンの話を聞きたくなかったので何も聞いていなかった。
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