第13話、一方現実世界では
貞男誘拐事件から二日後、高嶺家の経営する病院のベッドで、彼は未だに眠り続けていた。
「貞男、早く元気になってほしいぞ……」
ベッドの傍らに置かれた椅子に座っていたアカネは、涙目になりながら彼の頭を優しく撫でた。
「鬼童くんはまだ目を覚まさないの? 本当に生きてる?」
アカネの横で立っていたレイコは安らかに眠っている彼を心配そうに見て、横に居る医者に話しかけた。
「分かりません……。外傷は大したほどではないはずですが……」
病室に居る人間が皆して項垂れていると、扉がゆっくり開いた。そこにはレイコの母、高嶺イロハの姿あがった。
「お母さま……!!」
「おー、貞男くん。やっぱりまだ寝てるねー」
「イロハ!! 助けてくれ!! 貞男が起きない!!」
「びょ、病室ではお静かに……」
「まぁまぁ、いいじゃないのー。貞男くんは当分起きないからさー」
「なんですって?」
「死んじゃうのか!?」
「死にはしないけど、私たちが何もしなければ起きないねー」
「どういうこと……?」
「病院から送られてきたデータを分析してみたんだけどねー。どうやらこれも【サキュベーター】の【貞器】の力らしいのー……アカネちゃん、何か知ってる?」
「うーん……あっ、そうだ!! そういえば夢の中に入って何かするとか言ってたヤツ居たぞ!!」
「多分その子ね、鬼童くんが起きない原因は……」
「だけど安心してー。明日には貞男くんを助ける装置が届くからー」
「三日も寝たきりなのか!?」
「そんなに寝てたら身体中の筋肉衰えてそうね。まぁ、元からあってないようなものだけど」
「そんなことないよー? 貞男くんの身体調べさせてもらったけど、レイコちゃんに鍛えられたおかげかな? 結構がっちりしてたよー」
「……そうね。なんだかんだ言って、あの鍛錬についてきたのだから、そうよね……。起きたらまず、労いの言葉くらいかけてあげようかしら」
そう言ってレイコは踵を返して病室から出ていこうとした。
「レイコ、もう帰るのか?」
「明日は月曜日よ。紅葉さんも学校に行く用意くらいしてきなさい」
「えー!! 嫌だ!! ワタシ、貞男が起きるまで隣に居る!!」
「駄目よ。明日の放課後にしなさい。それに、あなたもう二日間ここに居るじゃない。早く帰って明日に備えなさい。お風呂に入って、寝ること! いい?」
「はーい……」
アカネは口をとがらせて、とぼとぼと病室を出て行った。
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