第35話、突入せよ!月の要塞
ザザーッ!
「サダ、そっちも終わったか?」
「忠成くん!! 無事だったんだね!!」
「あぁ、俺はお前を残して死なねえさ。それより、もうそろそろだぜ」
月が見えてくる。しかし、その月はかつて人類が到達したそれとは様相が異なっていた。中央に大きな窪みが広がっていて、その中には筒状の何かが収まっていた。
「あれが、月の……いえ、【最終終末貞器】の主砲ね」
「主砲から侵入するぞ、付いてこい!!」
槍山の操縦する機体が穴の中に入っていく。それに続いて貞男たちの機体も侵入した。そして、彼らは遂に月の内部に到達した。
「まさか【シッポリドッキリメカ】に、生身で宇宙に出れる機能が付いてたなんて思わなかった……」
「194ページ目にあるわよ」
「レイコよくそんなの覚えてるな!」
「おっと、おしゃべりはそこまでだぜ、ここはもう『敵地』だ」
槍山は完全武装の多国籍連合軍もとい宇宙警察を引き連れてやって来た。
「戦闘は俺たちに任せとけ!!」
「HAHAHA……ハイスクールスチューデンツに危ない役割は似合わねえぜ」
「インドカレー、ツクタルヨ!」
「付いてくるネ!!」
貞男たちは先導する彼らに付いていった。前に進むとやはり武装した敵が現れた。
「侵入者だー!!」
「突破させるなー!!」
「インドカレーヲクラエー!!」
「ぐああーー!!」
槍山たちはあっという間に敵を蹴散らし、止まる暇もなく貞男たちも進んでいく。そしてひときわ大きいフロアに辿り着いた。
「凄い広いスペースだね……」
「あっ!? ここ来たことある!! 【性王】様と会う場所だ!!」
「謁見の場、ってところね」
一行が周りを見渡していると、部屋が暗闇に包まれた。
「きゅ、急に電気が……」
パチンッ!!
指を鳴らす音が響くと同時に、照明が点灯した。貞男たちの目の前に、よく見知ったシルエットが浮かび上がった。
「ククク……よくぞここまで辿り着いたね、この先で【性王】様がお休みになっておられる。彼女と謁見したいのならば……ワタクシたち【サキュベーター】四天王を倒していくことだね」
「ラティアーノ……どうしてここに!?」
「サ、【サキュベーター】四天王!? ワタシ聞いたことない!!」
パチンッ!!
照明の光が消えて、また点灯する。そこにはラティアーノの姿はなく、代わりに翠山シズクの姿があった。
「し、四天王の先鋒……わたしでよかったんでしょうか……?」
「リムジンの子……!? 鬼童くん、気を付けて。あの大きなタコみたいな【貞器】を召喚できるだけの空間はあるわ……」
「え、えへへ……わ、わたしのこと覚えてくれてたんだ……。じゃ、じゃあいくね!! ヌルヌル・スベスベ・チュルチュル───」
シズクは詠唱を開始した。
「出でよ、エロクラーケン!!」
【淫靡な手】が召喚される。無数の触手が狙いを定めるようにこちらを覗いている。
「ここは、ボクの【貞力】を解放して……」
「サダ、待て。ここでお前の力を浪費させるわけにはいかねえ……。ここは俺に任せろ」
「忠成くん!? ど、どうやって!!」
「もう一つお前に黙ってたことがあるんだ……。それは……シュワチ!!」
右手を大きく上に突きあげた槍山の姿が巨大になっていく。その姿は巨大なロボットのようだった。さらに、多国籍連合軍の面々も光となって、そのロボットの中に吸い込まれて行った。
「俺の本当の姿は……タイマー星人!! タイマー星人は30分間だけ四人乗りロボットに変身できるんだ。地球人と融合した影響で俺は10分しか返信を維持できない……。手ばやく済ますぞ、エロ触手!!」
「ヌオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
【淫靡な手】が雄叫びを上げる。槍山ロボットもゴリラのドラミングのような仕草でそれに応えた。
「ろ、ろぼっとかっこいい……で、でも、わたしのクラーケンくんも、ま、負けない……!!」
【淫靡な手】は無数に伸びる触手を一つに束ね、大きな触手を作り出した。それは一つの拳のように見えた。拳のような触手を大きく振りかぶり、槍山ロボットに殴りかかる。槍山ロボットはそれを避けずに、同じように右腕を大きく振りかぶった。そして、二つの拳が今───。
「ヌオオオオオオオオオオオオ!!」
「おらあああああああああああ!!」
ドゴオオオオオオオオン!!
───ぶつかった!!
すさまじい衝撃に、貞男たちは飛ばされそうになる。レイコは【勝利の槍】を床に突き刺して何とか踏ん張り、アカネは貞男の肩を抱き寄せて何とか吹き飛ばされないようにした。
衝撃の余韻で、【淫靡な手】は大きくよろめいた。しかし、槍山ロボットも同様に大きくよろめいている。二体は振り子のように揺れて、その勢いのままもう一度拳を重ねた。
「な、なんて威力なの……あれがタイマー星人の力……」
「忠成くん、ボクがそういう特撮とかアニメが好きなこと知ってて黙ってたなんて……」
「貞男、ワタシも見たけど面白かったな!! たしか、胸のランプがぴこんぴこんしてくるとピンチで……ピンチになるけどヒーローは絶対最後に勝つんだ!!」
「そっ、それはどうかな……わたしのクラーケンくんは、すっごくつよいよ!!」
「紅葉さん。勘違いしてるな? 俺はピンチになるまでも無く、コイツを倒す。まだ切り札を残してるからな」
「き、切り札……そ、そんなの怖くない!! クラーケンくん、やっちゃえ!! 無限触手!!」
「ヌオオオオオオオオオオオオオオ!!」
【淫靡な手】からとてつもない量の触手が伸びてくる。
「来たか……モード:ファイブメン!!」
「な、なにっ……?」
「槍山くんが……」
「ぶ、分裂しちゃった!!」
「か、カッコイイぞ……!!」
槍山ロボットの手足が分離して、触手の攻撃を回避する。右腕も左腕もそれぞれ別々に動き、【淫靡な手】を殴っていく。左脚も右脚もそれぞれ別に動き、【淫靡な手】を蹴っていく。残った胴体も飛び回り、腹部からレーザーで触手を焼き切っていく。
「そ、そんな……わたしのクラーケンくんが……」
【淫靡な手】は槍山ロボットの多重攻撃によって、なすすべなく闇雲に攻撃を繰り出すだけとなっていた。
「ううっ……クラーケンくん……クラーケンくぅううううん……!!」
シズクが泣き叫ぶ。祈るように両手を床に付き、涙で濡らした。
「これで……とどめだ!!」
槍山ロボットが再び一つに合体し、最後の一撃を繰り出そうとする。
「やっ、やめてえええええええ!!」
シズクは槍山ロボットの前に出た。その後ろには傷だらけの【淫靡な手】が転がっていた。
「も、もうやめて……。わたしの負けだから……ク、クラーケンくんはぁ……」
シズクは、【淫靡な手】……いや、クラーケンとの思い出を語り始めた。
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