第7話、本能に従う故に淫乱生じて街滅ぶ。
「研究室の案内はここまでですね。次に紹介するのは……司令室でよろしいですか?」
「構わないわ。宿舎や訓練所なんか見ても紹介することないでしょ」
(女の子ばっかり居る施設の宿舎ならちょっとぐらい見たくはあるけど……言ったら殺されそう)
「───ここが司令室です」
「す、すごい……」
司令室に入って最初に目に入るのは、巨大なモニターだ。性愛学園を中心に、街中のいたるところに置いてある監視カメラの映像が映し出されている。
「私もここに入ることは滅多にないのだけど、こう常に監視されていると思うとあまり気持ちのいいものではないわね」
「安心してください。この監視カメラが置いてあるのはあくまで現在【サキュベーター】の侵攻が予期される場所のみ。ほとんどの人のプライバシーは守られています」
「待って、なんで性愛高校の周辺に【サキュベーター】は侵攻するってなってるの?」
「それは鬼童くん、あなたが居るからよ」
「いいえ、レイコ様、それだけではございません」
「なんですって?」
「性愛学園周辺には、【サキュベーター】を呼び寄せる【貞力】の流れが存在しているのです。その流れはまるで渦のように、校舎を中心にぐるぐると渦巻いています。お二方も、それに引き寄せられてこの学校に入学したのではないかと私どもは考えております」
「それで……こんな頭の悪い学校に私が入った訳だわ」
(ボクは近場でこの学校くらいしか入れるところが無かったってからなんとなく受験したってことは言わないでおこう)
「それにしても、本当に凄い……計器とかモニターとか何もかもがカッコよくて……こういうの見ると、一昔前のアニメ思い出すよね! パターン青です! なんちゃって……」
ビーッ! ビーッ !ビーッ! ビーッ!
突如、警告音が鳴り響く。赤い警告灯が唸り光る。司令室のオペレーター達が慌ただしく走り、配置についていく。
「あっ、あれ!? 本当になんか襲来しちゃった!?」
「状況確認! 一体何が起こっている!」
「研究室から異常な信号を感知しました!」
「侵入者か!?」
「いいえ、これは……」
目の前の巨大モニターが映り替わる。そこに研究室に保管されていたはずの【貞器】の姿はすでに無かった。
「【淫フルエンサー】です! 【淫フルエンサー】が脱走しました!」
「なんだと……ッ!? 至急、隔壁展開!」
「駄目です……! 隔壁閉まりません!!」
「なにっ……!?」
映像が切り替わる。するとすでに【淫フルエンザ】に感染して理性を失った研究員らが隔壁の緊急停止ボタンを押して、閉鎖の妨害をしていた。
「うおーーーーーーー!!」
「オトコー!! オトコをよこせー!!」
「だかせろー!!」
「か、感染者がもうこんなに……どうしよう高嶺さん!?」
「何故隔壁閉鎖を止めるボタンがあるのかしら……?」
「申し訳ありません、レイコ様……所長は閉所恐怖症でして……閉じ込められたら嫌なのでこのような機能を設置しているのです」
「はぁ……なんて愚かなの……その所長は一体どこに居るのよ」
「今現在、出張中でこの街を離れております。今、連絡を取っているところでございます」
「……所長、繋がりました!!」
目の前の巨大モニターに小さな窓枠が表示される。どうやらビデオ通話のようだ。そこに、所長の姿が現れる。
「あれが、所長……?」
貞男は目の前の景色に唖然とした。所長と言うからには大人の姿を想像していたが、そこに現れたのはぶかぶかの白衣を着た幼女だった。長い袖は半分くらいで首を垂れているし、足元まで伸びた白衣は最早ワンピースのようになっていた。
「所長の娘さん、とか……?」
「鬼童くん、違うわ。この残念幼女ちゃんがこの施設の所長であり、研究室の室長であり、私の母、高嶺イロハよ」
「えっ、お、お母さん!? こっからどうやって産まれたの!?」
「そだよー。きみが鬼童くんねー。話はきいてたよー」
イロハはおっとりとした感じで話し出す。声を聞いてもやはり幼女だ。しかし、どことなく大人の余裕のようなものを感じさせる喋り方で、周囲は若干おっとりとした雰囲気に包まれる。その雰囲気を打ち破るようにレイコは怒鳴った。
「お母さま! 今一体どこにおられるのですか! あなたが捕獲した【淫フルエンサー】が脱走し、高嶺家は現在危機に瀕しております! この件に関しては、お母さまに責任があるはずですが……!!」
「まーまー、そう焦んないでー、状況はちゃんと把握してるからー。じゃあ、まず【淫フルエンサー】の特徴から復習していくねー。レイコちゃん、分かってる範囲はどこまでー?」
「【淫フルエンサー】は【貞器】の一種で、皮膚を噛むなどの攻撃によって【淫フルエンザ】を感染させる。【淫フルエンザ】に感染した女性は理性が失われ、男性を性的に襲う。そして、【淫フルエンサー】の子を産む……というのが私の理解です」
「おー、すごいすごい。私が出張する前に分析した範囲の内容は全部頭に入ってるみたいだねー。じゃあここからは、今分析が終わったところのはなしー」
「所長、既に分析をされたいたのですか!?」
「ちょっとねー。可愛い娘が男の子を家に連れてくるってもんだから、監……見守ってたらデータに変動があってさー。鬼童くんに反応して【淫フルエンサー】が覚醒しちゃったみたいでねー」
「ボ、ボクが悪いんですか」
「鬼童くんは悪くないよー。私たちは【サキュベーター】対策のために女ばっかりで固め過ぎたみたいで、男の子が近づいた場合のパターンデータを持ってなかっただけー」
「……何もかもが杜撰ね」
「しょうがないじゃーん。それより大事なのは今、【淫フルエンサー】の対策だよー」
「所長、何か対策があるのですか」
「んー、そだねー。まずその司令室は絶対に入れないようになってるから安全なはずだけど、男の匂いを嗅ぎつけた感染者達がそっちに向かってるはずだよー」
「開けなければいいって訳ね」
「うーん、そうとも限らないんだよねー。一応こっちの方で感染者の行動をシミュレーションしてみたんだけど、このまま放置し続けると諦めた感染者たちが街に出て、【淫デミック】が発生してしまうっぽいのー」
「い、【淫デミック】!? ちょっと興味ある!!」
「とにかく、その【淫デミック】を止めなければいけないわ。でも、ここから動かないことにはどうしようもないわね」
「ごめんねー、【淫デミック】は、もう起こってるのー」
「なんですって!?」
「理性が無くなったとはいえ、一応は精鋭の研究員たちだったからねー。ほとんどの感染者たちはここにいる【童貞】を食えないと判断して、すぐに街に出て行っちゃったー」
「そんな……ボクたちの街は、あぶない夜のパーティーみたいになっちゃったってこと!?」
「それについては、まだだいじょーぶ。感染者たちは仲間を増やすために、まず女から優先的に狙っていくから、ヤってるとしても、そんなにはヤってないんじゃない? まぁ、時間の問題ではあるけどねー」
「お母さま、下品です……鬼童くんのレベルに合わせないでください」
「ボクに辛辣すぎない?」
「とりあえず、わたしの権限でこの街は封鎖しちゃってるから、ここ以上には広がらないけどねー……治療薬の作り方は分かったから、後は材料さえ調達できればなんだけど……」
「その言い方、取ってこいとでも言いたげに聞こえるわ……」
「その通り! やっぱりレイコちゃんは頭いいねー。私の娘ってだけはある!」
「先生!! 材料って、何が必要なんですか!!」
「鬼童くん、まず君も材料の一つだね。」
「えっ!?」
「材料は、貞力を持つ【童貞】と、【サキュベーター】の血液、それ以外はこっちでも手に入るからそれだけ持ってきてー。あっ、早くしないとこの街から脱出できなくなるから、とっととそこから出てきてねー」
「……ということなので、とりあえず私は紅葉さんを呼び出すわ。鬼童くんは【貞力】を溜めなさい、できる?」
「できます。今のボクなら!」
(想像しろ……【淫フルエンザ】、【淫デミック】……最悪の事態を妄想して、それを興奮に変えるんだ……!)
───
封鎖された街は、【淫デミック】によって無茶苦茶になっていた。家で、公園で、街道で、学校で、市役所で、ありとあらゆる場所で、【淫フルエンザ】の感染者が男どもを貪っていた。どこに行っても逃げることができない、快楽の地獄がそこには広がっていた。
無論、僕たちもそこから逃れることはできなかった。僕を庇おうとした高嶺さん、そしてアカネまで、彼女らに噛まれて感染してしまった。二人は僕を独占するために、人気が無い路地裏に連行していった。
「はぁ……はぁ……ごめんねっ……鬼童くんっ……!!身体、抑えきれない……!!」
「オトコッ……!! オトコの匂いだ……!! 貞男っ……! 貞男っ……!!」
「うっ……ううう!! 二人とも、正気に戻って……!!」
【淫フルエンザ】に感染し身体を火照らしている二人のを間に、僕は挟まれた。
仰向けに倒された僕の左側にはアカネが居た。彼女は僕の右耳をじゅるじゅる、じゅるじゅる、とわざとらしく音を立てて舐りつくしている。そして、彼女の両手は愛おしそうに僕の身体を弄っている。
仰向けに倒された僕の右側には高嶺さんが居た。彼女は僕の左耳を、ちゅぱちゅぱ、ちゅぱちゅぱ、とわざとらしく音を立てて舐りつくしている。そして、彼女の両手は愛おしそうに僕の身体を弄っている。
二人の献身的な愛撫に、声が漏れそうになる。僕は感染者になった彼女たちの劣情をこれ以上駆り立てないため、必死に我慢しようとした。しかし、貪るような行為はさらに激しさを増していき、僕の身体は歓喜の悲鳴を上げた。
「だっ……駄目だよ!! アカネ!! 高嶺さん!! ボクたちはこの【淫デミック】を抑えるために、ここを脱出しなければならないんだ!!」
「何言ってるの、鬼童くぅん……あなたも、シたいんでしょ? だってほら、クスクス……」
「貞男!! 我慢は毒だぞ!! 大人しく私達に犯されろ!!」
「や、やめて二人ともっ!! ……むぐっ!!」
抗議しようとした僕に、高嶺さんは接吻した。しばらくして、僕の口の中に舌が侵入してきた。高嶺さんの舌に蹂躙された僕の舌は、オリーブオイルの味に満たされた。僕は夕食の時のことを思い出した。あの時は三人で仲良くご飯を食べていたのに、今では二人とも僕の【童貞】を乱暴に奪おうとしてきている。服を引きちぎり、身体中を支配しようとしている。僕の望んだ【童貞】喪失は、こんなものじゃなかったはずだ。
意識が薄れていく。高嶺さんの乱暴なキスは、僕から酸素を奪ったのだ。しかしながら、その感覚がまた、心地よくもあった。快楽の死、死の快楽、頭の中に「死」と「快楽」という言霊が輪廻する。
「レイコだけずるいぞ!!」
重力を手放そうとしていて矢先、アカネの声が聞こえてきた。朦朧とした意識で、手を伸ばす。
「ハァ……ハァ……アカネ……助けてぇ……」
「貞男!! 大丈夫か!! 死にかけているか!! 人口呼吸だ!! 人口呼吸!!」
アカネは天にかざした僕の手を恋人のように握り、やはり接吻してきた。一瞬だけ呼吸が戻ったため先程よりマシだったが、やはり高嶺さんの時と同様、長い時間口づけをしてきたので息が苦しくなる」
「鬼童くん、鼻で息を吸うのよ。大丈夫、あなたならできるわ」
優しく声をかけてきた高嶺さんだが、その手は太腿を弄っている。膝から脚の付け根まで、触れるか触れないかの微妙なタッチで、ゆっくりと、弄っている。時折イタズラのような変化を付ける。人差し指と中指を立て、てん、てん、てん、とゆっくり歩くように太腿を擦り、僕を焦らしていった。ゾクゾクとした感覚に、背骨を折りそうになった。
「……ぷはぁ。貞男、こっちにも集中しないとダメだぞ」
アカネのキスが激しさを増す。あまりの激しさにまた意識を散らしそうになるが、高嶺さんのキスより思いやりを感じるキスだった。一方で、高嶺さんの手はどんどんと下腹部に迫っており、上と下の同時の快楽に、僕は身を震わせた。
「だ、駄目だよ二人とも……目を覚ましてっ……ひぃん!!」
「何言ってるの、鬼童くん。本番はここからよ」
「そんなに焦んなくていいじゃんか! とりあえず一発、イっちゃえ!!」
「う、うわああああああああああああああああ!!」
僕は、果ててしまった───。
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