第14話 とあるエルフのお話
私の後ろにいた耳の長い女性がこちらに近づく。
「その先は貴方がいくにはまだ早いわ。」
「どうしたの!?うわぁ!エ、エルフだ!」
エルフ?エルフとはなんだ?
「その子の連れかしら?その子が共同浴場に入ろうとしたから止めたのよ。」
「そ、そうですか。ありがとうございます。」
アンが礼をのべる。
「私も突然止めて悪かったわ。」
そう言ってエルフ?の女性が離れていく。
「ダメだよ。共同浴場に入ったらどうなってたか。」
「ごめん。」
「ううん。リーティエの身が大丈夫なら大丈夫だよ。ほら、早く行こうか。」
私とアンは煙揺らめく風呂に入っていく。
「ほら。私が洗うから椅子に座ろう。」
私は背の低い椅子に座らせる。
「と、お湯組んでこないと。ちょっと待ってて」
「うん。」
辺りを見渡す。
周りを知らない女性に囲まれている。
しかも裸でだ。
これが落ち着かないものだ。
「お湯汲んできたよ。それじゃ流すねー。」
「うん。」
じゃーと温かいお湯を頭から浴びせられる。
「まずは頭から洗おうか。」
そう言われ、頭から洗われる。
アンが上手いのか久しぶりの湯浴みだからなのか気持ちがいいものだ。
髪を洗われているとアンが話かけてきた。
「こうしてるとなんだか姉妹になった気がする。」
「姉妹?」
「そう。姉妹。思えばリーティエが来てから色々あったね。苦しい事もたくさんあったけど同時に楽しいこともたくさんあった。ほんと、楽しいかったよ。」
姉妹か。
お兄様どうしてるんだろうか?お兄様だけじゃない屋敷のみんなも元気にしてるか気になる。
今は生活していくのに大変だけど、いつかはどうにか帰る手段を見つけないと。
「じゃあこのまま体も洗っちゃおうか?」
「いい。体。自分。洗う。」
「そう。なら泡流すね。」
「うん。」
それから私達は体を洗いあった。
「ふー。体も洗ったし、お湯に浸かろうか。」
お湯に浸かる?
それが本当なら信じられない事だ。
ザーとお湯を掛け合ってたが本来ならたくさんの燃料を使って沸かすものだ。
そんなお湯に浸かる。
そんな贅沢な事をして良いのだろうか?
日頃からお父様に贅にかまけるのではなく、時には貧にも身に慣れよそれが騎士という者だと言われている。
私はアンに連れられるままどこかに行く。
そこは広く煙立つお湯がたっぷり張られた池のような所に着いた。
「さ、湯船に浸かろう。」
私はアンに連れられるまま恐る恐る足を入れていく。
暖かい。
やがて膝まで入った所でアンがその場に座り出した。
「ふー!気持ちいいね。」
私もそれに倣ってその場に座る。
・・・・確かにこれは気持ちいい。
頭を除く全身が温められてとても心地が良い。
私達が湯に浸かっていると
「やぁ。先はいきなり引き止めて悪かったわね。」
さっきのエルフの女性が話かけてきた。
エルフの女性は最初見た時は気づかなかったが体のあちこちに傷跡が付いている。
「いえ、私達の方こそ助けてもらってありがとうございます。」
エルフの女性も私達の隣で湯に浸かる。
私が失礼ながらも物珍しさからジーと耳を見てると
「あら、エルフは初めてかしら?」
「こら!リーティエ!エルフのお姉さんに失礼でしょ。」
「ごめん。」
「ふふ。慣れてるから気にしてないわ。」
私は今まで気になっていた事をエルフの女性に聞いてみる。
「エルフ。何?」
そういうとエルフの女性は答えてくれた。
「エルフというのは主にこの国の外から来た者達。種族と言った方が正しいわ。」
そう答えるとアンも質問をした。
「エルフて私達より長命て聞きましたけど、本当ですか?」
「一般にはそう言われているがほんの少し長命なだけだわ。」
それから色々話してくれた。
「この風呂があるのも私達エルフのおかげて話は聞いた事あるかしら?」
「いいえ?聞いた事がありません。」
「それは私達の父親世代の話だけど皇都を含めこの地は不浄の地であった
それを見兼ねた当時調停に訪れていた時の使者、ムアファク卿が水の改善に努めた。」
「水をですか?」
「えぇ、当時は近代史の教育で出る位に酷く皇都中からドブの臭いがし、使者団の鼻を曲げたという。それから時の皇様と協力し、水を清め、次にそこに住む民を清める為にお風呂の文化を広めたわ。」
「へーそんな歴史があったんですね。」
「あぁ、他にもこんな面白い話があるけど聞く?」
「はい!聞きたいです!どんな話ですか?」
私も同じく頷く。
それから色々聞いた。冒険者をしている事。その冒険中に起きた事など
だが、何事にも終わりがある。
「ねぇ。アン。」
「ん?どうしたの?」
「風呂。出たい。体。『暑くなった』」
「あら?どうやらのぼせたようね?」
「え?ごめん。付き合ってもらって。
すいません私達もう上がりますね。」
「いいえ。こちらこそ付き合わせてしまって申し訳ないわ。」
「いいえ。話楽しかったです。」
そうして私達は体を拭き、風呂を出る。
「お姉さんの話楽しかったね。」
「うん」
「それじゃ着替えてミッド達に合流しようか。」
「うん」
私達は着替えて、パブリックバスから出る。
「あーようやく来た!」
外にはミッドとラックがすでにいた。
「遅かったな。2人があまりに遅いから心配したんだぞ。」
「ごめんごめん。」
「さぁ、湯冷めする前に宿に行こうぜ。」
こうして私達は宿に向かった。
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