外話iii話 今手元にある物を知らなくては何も出来ない

あれからキヴァルシ家を後にし、城に戻った。


知っているとはいえ愛しのベアトに知らないと言われる事はとても辛かった。


「殿下。いきなり出て行くのはおやめくださいませ。」


家令が出迎えてくれた。


「すまない。少しの間部屋に居させてくれ。」


「殿下」


私は私室に向かった。


バタンと扉を閉じて息を吐く。

こうしてはおけない時間がない。

せっかく貰った時間を有意義に使わないと。


私は今の状況とこれからの事を羊皮紙に書いて行く事にした。


今は光臨暦157年


私は今は9歳だ。

何故この歳にまで戻ったのかわからないが、今は別の事を考えよう。


私、ノエル・スーキ・ディリージュこの国、聖国の第一皇太子だ。

この聖王国は昔、圧政を敷く時の王から袂を分ち、素晴らしき国を築く為に立ち上がった祖先を中心に立ち上がった者達で築かれた誇り高き国だ。


この国は魔法によって発展した。

魔法には国の成り立ちと関わりがある。

それは建国前に遡る。当時、国は荒れていた。王を中心に権力、富が集まっており、富める者はより富、貧しき者はより貧しくなっていた先の見えない暗黒の時代だった。

この状況になんとかしようとしていた僕のひいおじいちゃんである初代聖王国国王。

そんなある日、祈りが届き天よりこの世を司るエネルギー 魔を操る方法 魔法を授かり、彼の周りに集った志しを共にする同士と共に独立。

そして地上の楽園が築かれた。


そしてかつての国である隣国皇国。

皇国は野蛮な国と言われてる。

今から14年後に皇国の王 苛烈王クラウディオ・アレクサンドルが突然宣戦布告してきた。


悪魔と契約したのか見たことがない幾つもの物を従えて攻めてきた。

空飛ぶ要塞、鉄の騎鳥、火を放ち動く鉄の箱。

それに皇国もどうやったのか魔法を放ってきたのだ。

皇国はどうやって魔法を使ってるのだ。

我々のものとは違う方法で使っている事には間違いない。


「とりあえずある程度はまとまったか。次は今後どうするか考えないと。」


・まずは今まで通りにベアトとの愛を育む。

前の世界では婚姻まで結んだんだ。例え最初からになってもまた初めてからすればいい。むしろまたあの甘酸っぱいドキドキの時間を過ごせるんだ。これはこれでいいのでは?

いや違う僕は前の世界の記憶を持っているんだ。

僕がリードするていうのもいいのかもしれない。


・国を前の世界よりも強くする。

前の戦では我が国が押されていた。このままではまた負けてしまうのは目に見えてる。

なんとかして強くしないとこれは前の世界を振り返りながら思い出そう。


・皇国の弱体化を狙うというのはどうだろうか?

前の皇国は強かった。ならその皇国を弱らせるのはどうだろうか?

例えばクラウディオを暗殺するとか数々の邪魔をするとか色々やりおうはある。

ただ、今の私ではそれらを実行する権限は持っていない。

なんとかしないと。


「ふぅ。こんなものだろう。」

ペンを置き一息つく。

まだ未定だらけだが今後やらねばならない事が定まった。


外の空気を吸いたくベランダに出る。


時刻は夜になっており、満天の夜空に真紅の月が昇っている。

月に手を伸ばし、撫でるように動かす。


今度こそ幸せな結末にしてやる。


そう月に誓った。

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