第6話 新しい1日
「何か用か?」
とある建物のとある一室に男が尋ねてきた。
「例の件で報告がございます。」
「ほう?述べてみよ。」
「ハッ!実験体を見つけました。」
「ふむ?ならば何人か差し向けて捕まえればいいだろう。何故ここにきた。」
「そうしたいのですが何やら最近妙な連中に目を付けられてうまく動けないのでご尽力いただけないでしょうか?」
「なんだそんな事かならばダメだ。」
「どうしてでしょうか!」
「私が手を貸せばこちらも探られる。自力で捕まえるんだな。」
「くぅ!わかりました。」
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あれから一ヶ月が経った。
今、私達は街外れにある宿にいる。
ただの宿ではない。
木造の建屋に歩くと軋む廊下。
ようは庶民も住まいないような2階建てのボロ屋である。
さらにそれだけではない。
まず、部屋が私の部屋よりも狭い。
そしてお茶を飲むテーブルやクッション、ソファーにまさかのベットまでない。
そんな部屋に今は4人で身を寄せてる。
(いい点が石畳よりもマシな木の床で寝れる事と毎日無愛想な店主という人が体を拭くタオルと水の入った水桶を貸してもらえる事しかない。)
朝
朝日が昇るとともに目を覚ます。
今日はアンが抱きついてたので引き剥がす。
多少、力強くやっても目を覚さないので遠慮せずに退かす。
それから音を立てないようにそっと部屋から出る。
空は夜の暗さが薄まり、青い空へとなっていく。
私は以前、見つけた木の棒を掴む。
木の棒はなんて事ない私の腕と同じサイズの物だ。
それを両手で持ち構え、そのままの格好でいる。
お父様が言っていた。実戦とは日々の訓練の結果と
日々訓練をしてないといざという時に満足な結果を出せない。
だから訓練は日々欠かさず行うべきだと。
ここに来た?時は慣れない環境で訓練する余裕もなかったが今はだいぶマシな環境だ。やらないと。
私は脚に気を配って素振りをする。
何事も土台が大事である。
土台である脚がグラグラで軟弱だとダメだとお父様が言っていた。
しばらく振ってると太陽が見えて来たので素振りをやめ、持って来たタオルを濡らして体を拭く。
最初は濡らす事にも苦労をしたが、それも苦労しなくなった。
棒を隠すように元の場所に戻し、部屋に戻る。
3人はまだ眠っていたのでゆすって起こす。
「起きて。起きて。仕事。起きて。」
3人がそれぞれ眠そうにしながら起きる。
それからパン一欠片を分け合い、朝食を済ませたら宿を出る。
今日の仕事をもらう為にギルドに向かう。
ギルドには仕事をもらうための列が出来ていた。
私達はその列に並ぶ。
早く並べば良い仕事が貰えるらしいが私達は別である。
幼い私達は特別に子供でも出来る仕事を割り振ってもらっている。
主に店番・呼び込み・荷物運び等である。
「おはよう。」
挨拶をしてくれたのは初日に会った女性だ。
「ちょっと待ってね。今日の仕事は。えーとこれね。」
そう言って紙を渡す。
この紙を仕事場の大人に見せれば働け、終わったらサインを貰ってまたギルドに渡すと報酬を貰えるのだ。
紙に描かれた街の詳細な地図を頼りに色々な事を話しながら向かう。
向かった先に体格が大きな男と何かが積まれた荷車があった。
「お、今日はガキか。ま、よろしくな。」
「おう!任せとけ。」
ミッドが返事を返す。
それに続いて私達も挨拶をする。
「おう!威勢が良いのは良い事だ。さて日が沈む前にやらなくちゃならねぇ。お前らこいつを押してついて来い。」
そう言って後ろの荷車を無造作に指差す。
「おいおっちゃん!これなんだよ!」
「話してやるからいいから押せ。」
そう言われ、私達は荷車を押す事になった。
ミッドとラックは前の取っ手を引き、私とアンが後ろから荷車を押す。
これ、4人で押してるとはいえそれなりに重いぞ。
荷台の中には空の木箱と綺麗な石が入ってる箱が載せられている。
この石。魔力を感じる。
「この石はな魔力灯のための石だ。」
魔力灯。
大通りに等間隔で建てられてる魔力で先っぽが光る柱の事だ。
前にミッドに教えてもらった。
帰ったらお父様に教えようと思いどうゆう原理で光っているのか尋ねたらミッド達もわからないと言われた。
「そろそろこの魔石を交換しなくちゃなんねー時期だ。だからお前らには柱に登って中の古い魔石と交換してもらう。」
柱は大体3メートルくらいありそうだ。
落ちたら怪我をする危険があるのでは?
「お前ら古いのと新しいの入れ替えても一目でわかるからな!」
そう男が言う。盗むわけないでしょ。
しばらく荷車を押してると止まれと言われた。
「それじゃあ、お前だ!左後ろのお前!登って交換して来い。」
最初にアンが石を変えてくる事になった。
「アン。頑張って。」
「うん。任せて。」
アンが石を持って登り出した。
登る事に慣れてないのか震えながら登っていく。
「アン!落ちても受け止めてやるぞ!」
ミッドがそう声をかける。
「もう!大丈夫だってば!」
その声で持ち直したのか初めよりもスルスル登っていく。
「あー!探したぞ!ミッド!」
その声で私達3人は振り向く。
そこには柄が悪そうな子供達がいた。
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