外話v話 私の君への想い

「君の事を教えて欲しい?」


突然の事なので聞き返すような事をしてしまった。


「えぇ、そうです。」


「ふむ?」


わたくしは聞いたように記憶を一切無くしております。私は自分がどのような人物なのかわからず。こうして殿下にお聞きするような真似を。」


「君が聞きたいのは名前はベアトリーチェ・スー・キヴァルシでキヴァルシ辺境伯の愛娘であるとかではなく?」


「はい。その以前の私についてです。」


以前か?もちろん答えられる。だが、それは今から見たら未来の事だ。

実は今は婚約者と決まって3ヶ月しか経っておらず、まだベアトの事を知らないと言う状態なのである。以前なら。

僕が深く考えているとベアトが不安そうにこちらを見つめる。

いけない可愛い彼女を不安にさせるのは申し訳ない。

ここは男として彼女が世界で1番好きな者としてベアトの良いところを言わないと。


「ベアト。君はまず可愛く綺麗だ。金糸のように艶のある輝く長い黄金色の髪。淡く何もかも受け止める水のような青い両眼。白い雪のようでいて温もりのある肌。もうこの世の美は君の為にあると思っても良いくらい綺麗だ。それに思慮深くそれでいて誰にでも優しい聖女と呼ぶにふさわしい性格の持ち主だ。それにダンスも上手で魔法にも長けており、その腕前は見事と呼ぶに他ならない。それに」


そこで話が途切れてしまった。ベアトが恥ずかしそうな顔をして顔を逸らしてしまった。照れてるベアトも可愛い。


「どうしたんだい。ベアト具合でも悪くなったのかい?」


ついイタズラ心でそう微笑みながら尋ねてしまった。


「い、いえ大丈夫です。」


「そうさっきの続きだけれど、君は本当に素晴らしいく」


「もう良いです!わかりました!殿下がそれだけ私の事を愛してるのは充分受け取りました!」


そう愛らしく顔を背け、顔を隠す。かわいいな。

しばらくして姿勢を正し、一息ついてから少し悲しそうな顔をする。


「殿下はそんなに以前の私を愛して下さったのですね。」


ベアトはそう言う。違う君に悲しい顔をさせる為に僕はここにいるんじゃない。


「私はそんな殿下の愛も忘れ、ここにいる。私は!私は!」


「ベアト!」


僕はいてもいられず立ち上がり真剣な眼差しでベアトを見る。


「ベアト私を見て!」


ベアトの顔を見つめるその淡い色のサファイアのような瞳から僅かに涙が溢れている。


「これから私達。お互いの事を知っていけば良いんだ。以前のベアトも好きだ!だが、これからも綺麗になっていくベアトも好きだ。この気持ちに違いわない。ベアト。」


「殿下。」


私達は見つめ合う。


「私は君の朗らかなあの太陽のような笑顔が好きだ。だからお願いだ。そんな悲しそうな顔はせず笑っていてくれ。」


「もう殿下たら。あなたは私の事を褒めるのが上手なのですね。」


そう言って涙をその細くしなやかなだが、しっかりとした指先で拭う。


「あぁ、なんたって。好きな人を褒めるんだ。褒めれる時に褒めないと。」


そうだ。後悔はいつだって後になってからああしておけば良かったと真綿に首を締め付けられるように苦しませるんだ。


「そうだ。今度はベアトから何かないか?ベアトの質問ならなんだって答えるよ。」


「そ、そうですか?」


ベアトは何かを考えるようにし、そしておずおずと私に尋ねる。


「では殿下。良いですか?殿下は何か趣味とかございますか?」


「趣味?趣味かー?」


私は少し考え、答える。


「最近はもっぱら剣の修行をしている民を護り導く王にやがてなるのだからな貧弱な王ではそれはなし得ないからね。他にも魔法を極めているよ。」


「魔法?ですか?」


ベアトが興味深そうに尋ねて来た。


「そう魔法!この国の誇りにして成り立ちに関わる魔法だ。」


「すごい!殿下は魔法が使えるのですね。もしお願い出来るのでしたらぜひ私に見せて下さい!」


ベアトが朗らかな純粋な笑顔でお願いをしてくる。

そうそうベアトは笑っている時が1番輝いて見えるんだ。


「ああ!良いとも!」


私はその高い天井の方に指を向け魔力を指先に集中させる。


「“火の粉よ。蝶と成りて舞え”-パピヨン ド フ-」


そう呪文を唱えると一羽の火の蝶が指先から飛び立ちひらひらと舞い上がる。

まだ儀式前だからこれが精一杯だけどこれだけ出来たら上出来だろ。


「すごい!綺麗な蝶なんでしょう!」


私は笑う。


「あはは。ベアトも感覚を取り戻せばいずれ使えるようになるよ。」


何せ私は知っている。ベアトは未来にて聖女に選ばれ、傷ついたものを癒し、その魔力を持って悪き皇国軍を切り裂いていく。そんな立派な聖女になる。


「他に何か出来ないですか?」


そうはずむように明るく尋ねて来た。

よーし!僕もベアトを楽しませないと!

その後、別の魔法を見せたり、さまざまな会話をし、やがて楽しい時間が過ぎていく。


コンコン。


ドアを叩く音が聞こえてきた。


「失礼します。殿下。お嬢様。」


廊下に待機していたベアト付きのメイドが中に入ってくる。


「どうした?」


「そろそろ日が落ちて参りました。お帰りになられた方が良いかと。」


「なんだ。もうそんな時間か。今日は楽しかった。」


「えぇ、私も楽しかったです。あの殿下?」


ベアトが躊躇いながらも何か聞きたそうにしている。


「なんだ?」


「あの。また。また会っていただけないでしょうか?」


ベアトが愛らしくも遠慮がちにそう聞いてきた。

そんなの決まっている。


「あぁ、また会おう。なんなら今度聖王城に来てくれ!」


「ありがとうございます!」


ベアトが微笑みながらお礼を言ってくれた。

あぁ、なんてかわいいんだ。


こうして私はベアトに見送られ屋敷を出る。


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「この先は見せない方が楽しめるのでカットしますね。」

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