第20話 冒険者の基礎

今回の話はグロ注意

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私達は森の中にいる。

村に着いてからはまずは村長の家に行き、まずは目撃証言を聞いた。

なんでも最近ゴブリンの遭遇率が高いとか薙ぎ倒されている木を多々見かけるとか、その木に付着した粘液から顔を顰めたくなるような苦く油臭い独特な臭いがするとか。

それで魔物の生態に詳しい冒険者に依頼を出したとの事。

それだけでは何の魔物かわからないため実際に森の中に入って確かめてみる事に。

ハリーを先頭にウルファ、ミッド、ラック、アン、私、チェスター、フィルという並びで進んでいる。


「気をつけろ。なんでもゴブリンの目撃例も増えてるらしい。不意に襲われる事もあるからな。」


チェスターが注するように各々が周りを警戒しながら森の中を進んで行く。


すると-


ギギギギィギギ!


そんな悲鳴とも雄叫びとも取れるような鳴き声が森に鳴り響いた。


「今の声は!」


「ゴブリンの鳴き声のようね。」


「お前ら!いつゴブリンと接敵するかわからん。気を引き締めていけ。」


チェスターの警告にそれぞれが同意した旨を返事を返す。


しばらく歩いてると


「チェスター!」


1番前を歩いていたハリーが足を止め、チェスターを呼ぶ。

見ると前方の生い茂った草木が不自然に揺れる。

ハリーが構え、ウルファが背中に背負っている鉄の剣を抜き、戦う構えをとる。


すると草むらから何かがウルファ目掛けて襲いかかってくる。


「遅い!」


そう気合を入れるように言い放ち、襲いかかってきた物体を切り伏せる。


「ギギィィー!」


襲いかかったゴブリンは斬られ倒れる。


「ギギィギー!」


草むらからわらわらと様々な武装したゴブリンが出てくる。


「お前ら!下がれ!耳塞いでろ!」


パリーン!パリーン!


硝子を割ったようなそんな音が周りに響く。

見るとチェスターの杖から魔力が発し、ゴブリンに命中していく。

チェスターとフィルが私達の前に出てウルファ達が取り逃し私達に迫ってきたゴブリンを倒していく。

私達は邪魔にならぬようにチェスター達の後方に移動して戦いを見守った。


すごい。杖は弓と同じく離れた場所にいる敵を倒せる。

だが、明確な違いがある。

それは弓のように引き絞る手間がない。

木製の部分を肩に当て、狙い、放つ。

僅か3動作で敵を倒せる。

しかも弓のように引き絞る力も要らなさそうだ。


そう考察してると戦いは終わり辺りにはゴブリンの死体が転がっている。


「よし。終わったな。ウルファ、ハリー。いつも通り見張りを頼む。フィルは悪いが先に進めててくれ。お前らは今から大事な授業だ。」


ウルファ達が見張りをし、チェスターが私達を呼ぶ。


なんだろう。


私達はチェスターに呼ばれてゴブリンの死体のそばに近づく。


「良いか。冒険者として大事な事を教える。それは魔石の採取だ。魔石はな炭鉱やダンジョンで採掘して取れるやつと魔物から取れるやつがある。その違いとかなんで魔石が出来るとかは今は省く。まずは」


そう言って近くのゴブリンの胸に取り出した片刃の山刀を刺す。

「そこらにいるゴブリンの捌き方を教える。まずは胸を大きく開く。」


手慣れた手つきでゴブリンの胸を開いていく。

その際、ミッドはウワァと声を漏らし、ラックは唾を飲み込み、アンはヒェと声を漏らした。

私?私はというとこの前ゴブリンを斬った感触が蘇り、手を揉んだ。

あの時は色々と必死だったからなんとも思わなかったがなんというか複雑な気持ちになった。


「それでここから大事な所だ。ほら心臓が見えるか?」


そんな事を考えてると邪魔な肋骨を取り除き、わずかに動く心臓を私達に見せる。

心臓を初めて見た。こんな形をしてるのか。


「まずは浅く切れ込みを入れる。そして多少強引で構わないから胸を開く。そしてほら魔石だ。」


チェスターは魔石を取り出した。魔石の大きさはそこらの小石と同じ位の大きさだが、紫色の鈍色だ。


「よし!お手本は見せた。次はお前らの番だ。」


そう言って山刀の持ち手を私達に向ける

皆が動作として引いた。


仕方がない。


「私。やる。」


皆がマジかという視線を向ける。

皆がやらない以上斬った経験がある私がやらないと。

チェスターから山刀を受け取る。


「どれ。やる。良い?」


「どれやれば良いかか?そーだな。これなんかが良いんじゃないか?」


そう言って一体のゴブリンの死体を足で突っつく。

そのゴブリンは胸から斬られて魔石を取り出すのに丁度良さそうだった。

皆に見守られながらチェスターに教わりながら胸を開く。

意外と肉が固く力を加えないと切れない。

なんとか胸を開けた。


「良いぞ。あとは骨を教えたように取り除いて、そうだ。」


ようやく心臓が見えた。

心臓に軽く切れ込みを入れる。

中から血が溢れ出てくる。

これに軽く驚いた。


「大丈夫だ。あとは手を突っ込んで魔石を取り出せ。」


私は意を決して心臓の切れ込みに指を入れる。

心臓の温かみに軽く身震いをするが歯を喰い絞って開く。

開いた先には何か硬い物が指に当たる。


これは?


私はそれを摘み出す。

手の中には紫色の鈍色の石があった。


「よし良くやった。お前はしばらく休んでおけ。」


私は頷き山刀をチェスターに返してその場にへたり込んだ。

自分でも気が付かないほど疲れがどっと来た。


その後1人づつ顔を青くしながら解体していき、私達全員がゴブリンから魔石採取を経験した。


「ウヒー!疲れた。」


最後に解体したミッドが地面にへたり込む。


「ほら。休んでる時じゃないぞ。このゴブリン達を焼却しないと」


チェスターがミッドを励ます。

私達はチェスターに指示された通りゴブリンを1箇所に運ぶ。


「ふぅ。」


「やっと終わった。」


葉っぱで血を拭った手で汗を拭う。


ゴブリンの死体の山が出来上がった。


「それじゃあなた達離れて。」


ウルファが皆に離れるように言う。

私達は死体の山から離れる。


「全ての生き物よマナに帰りたまえ。」


ウルファが祈るよう油をかけ、火打石で火を着ける。

死体の山は見る間に炎に変わっていく。

炎は直ぐに止み、後には灰しか残らない。


「魔物の死体は何故か直ぐ燃えて、直ぐに灰になるんだ。さて、さっさと行こう。」


私達は冒険者の基礎を学んだ

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