第21話 ル キャム アボンタラトンペ

ゴブリンを燃やし、私達は森の中を進んでいく。


「ゴブリンはまるでこっちの方から逃げるように来た。それが何か引っ掛かる。後をつけて見よう。」


森の中を警戒しながら進んでいく。


「おい!あれを見ろ。」


先頭にいたハリーが声を上げる。

そこは木が薙ぎ倒されていて開けた土地だった。


「はぁ〜。こんなに開けるのは初めてだ。龍でも落ちてきたのか?」


「いや、これは違う。」


ハリーの疑問にウルファが答える。


「見て。これ。」


ウルファが指し示した場所を見る。そこは何か大型の生き物が体をひきづったような跡が地面に複数あった。


「追ってみよう。」


ウルファの提案に皆が同意して跡を追う事になった。


跡を追ってしばらく開けた土地を歩くと大きな洞窟があった。

その洞窟は私が10人肩に乗っても届かない。そんな大きさであった。


「なんだよ!このでけぇ洞窟は!」


「あぁ、でかいな。」


ミッドの驚きの声にチェスターが返事をする。


「お前ら!楽しい冒険は終わりだ!帰るぞ!」


「なんでだよ!」


チェスターが帰ると宣言する。それにミッドが不服なのか反発する。


「たかが大きな洞窟を見つけただけじゃんかよ!これからかっこよく戦ってズバッと解決してくれるんだだろ。」


そうせがむように言う。


「ウルファ。説明を頼む。」


チェスターが説明をウルファに頼む。


「良いわね?私の見立てでは巨大な未知の魔物だと思う。それも大地を容易に穿ち一夜にしてこんな洞窟の入り口を開ける。そんな化け物達がいる巣よ!私達パーティだけではとてもじゃ手に余る。私はチェスターの判断に賛成よ。」


「それに」


チェスターが話を引き継ぐ。


「仮に洞窟の中に入るとなってもお前達は足手纏いだ。引き連れていくつもりもない。」


「そんな。」


ミッドは肩を落とす。


「良いか?冒険者として長生きするには無理をしない事だ。自分の力量を把握して引き際を見極める。それが冒険者にとって大切なことだ。」


チェスターがミッドの肩を叩く。


「よし!お前達。村に帰るぞ。」


こうして村に帰る事に決まった。

--------

--------

「あ、ようやく見えて来ましたよ。」


ラックのその言葉にまたゴブリンの襲撃もなく、ようやく皆が安心感を浮かべた。


村は私達が来た通り周りを広大な畑で囲まれている。

村人は畑を耕す為に何やら作業している。

私も前にお父様に連れられ、春の畑を見た事がある。

私が見た時は乗馬用の馬と違い足腰が明らかに太い農耕馬が馬鍬を引き畑を耕して人々が汗水流してせっせと畑を耕していた。

だけど、ここは違う農耕馬が引く馬鍬で耕している所もあるが巨大な私の身長の3倍以上はありそうな大きさの背中に何か草を生やした人型の土の塊が馬が引く馬鍬より幅広の馬鍬を引いて畑を耕している。

それを初めて馬車の中で見た時は思わず驚いてしまった。

なんでもあれはゴーレムという物らしい。

ゴーレム。それはかつてダンジョンの最奥を守っていた守護者だったとの事。

私も御伽話として聞いた事がある。

力強く命令には絶対忠実な立派なお人形と。

それがこんな広大な土地を耕してるのだ。

これはお父様に話の土産で話せる。

そんな事を考えていると村の入り口に着いた。


「俺たちは村長達と話をしなくちゃならない事が山ほどあるからお前達は後ろから様子を見てろ。良いな?」


その言葉に異論はなく私達皆が頷いた。

早速この村で他の家より大きな家である村長の家に向かう。


村長の家に着くとチェスターがドアをノックする。


「はーい。ちょっと待ってくれ。」


その返事の後にしばらくして村長が家のドアを開けた。


「おぉ、これは冒険者さん達。何かわかったのかね?」


「えぇ、ここで立ち話も何です。中に入っても構わないですか?」


「どうぞ。今ちょうど我が村の騎士が来ていてね。構わんだろう。」


私達は村長宅の居間に案内された。

居間にはこの村の騎士がおり、チェスターが軽い挨拶をし、ソファに腰かける。

私達7名はチェスターの後ろに立つ。


「現状から言ってしまいます。大変危険な魔物がいつ襲ってくるかわかりません。」


「そんな。」


「詳しく教えてくれるかな。皆さん。」


騎士が詳しい話を聞きたがっていた。


チェスターが自分達見てきた物を正確に伝える。

森で薙ぎ倒された木々の事。地面を穿つ複数の巨大な跡。そして1夜にして空いたと見られる巨大な穴の事。


「そんなのが村の近くに現れたのですね。」


村長がそう呟く。


「えぇ、これは我々だけではとても解決できそうにありません。大掛かりなパーティを組んで事にあたる事をオススメします。」


「そうですか。」


村長は項垂れる。


「では私達はこれで失礼します。そろそろ日が暮れる。どこかに寝床を構えなくては。」


「それでは我が家の近くではどうでしょうか?」


騎士がそう言う。


「良いのですか?」


「あぁ構わん。案内しよう。」


こうして村長達との話し合いも終わった。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

ゴーレム

主に迷宮の最奥を守護する者なり

現在は魔法の解析で少しずつだが民間にもその技術を使われるようになった。

土に形代を埋めて少し経てば人型になり、人の言う事を聞く事ができる。

民間では主に重い物の運搬や畑を狙う動物や魔物を追い払ってくれる。

現状、簡単な事しか出来ず、体がでかいので通行の邪魔になったりするので街中で使用は許可が降りにくい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る