第21話 震える大地 その1

私は今皆と火を囲っている。


「ほら。お前たち。豆入りスープだ。食って大きくなるんだぞ。」


ハリーが作ってくれたスープの入った深い鉄製の器を受け取り、目を輝かせながらその器を見る。


その器には村長から頂いた葉野菜に、にんじんがふんだんに入り、さらに干し肉から出たコクも合わさり、この生活になってから初めて見る彩豊かなスープだ。


「ほんとうにこれ食っていいんだよな!?」


ミッドのその確認のような疑問にウルファが答える。


「えぇ、今日は頑張ったからたんと食べて。冒険者にとって食事とは同じ鍋を囲み、同じ食事をし、親睦を含めていく。そんなものよ。あとちゃん女神に感謝のお祈りをしなさい。それがマナーてものよ。」


はーいと返事をし、皆が指を組む。


「大いなる女神に感謝を。いただきます。」


皆が祈りをし、食べ始める。


私もスープが入った温かい鉄製の器を手に取り、スプーンで掬って口に入れる。


これはキャベツが甘い。一口大にざく切りにされたキャベツが柔らかく、キャベツから甘みを感じる。

美味しい。豆も蛋白で噛めば簡単に崩れてしまうがこれも美味しい。

干し肉だ。

久しぶりの肉に思わず一口で食べてしまう。

肉は干し肉だったのか噛み切るのに苦労するがちょうどいい塩加減が口に広がりこれも美味しい。

最後ににんじん。

にんじん。にんじんて泥臭くて変な味がして苦手なんだよね。

でも、この生活をしてカビたパンを食べた経験から食べ物は無駄にしたら次はいつ食べれるかわからないのは身をもって学んだ。

私は恐る恐る口に運ぶ。

大丈夫。大丈夫。私は食べれる。

口の中ににんじんを入れる。

ホロっと崩れて何口か噛みなんとか飲みこむ。

あれ?にんじん食べれる。


「私。『にんじん』食べれる。」


思わずそう呟いてしまった。


「ねぇ、大丈夫?ちゃんと食べれる?」


アンがそう話しかける。


「うん。大丈夫。食べれるよ。」


その後も話好きのチェスターのあれこれやこのパーティーでの冒険譚など焚き火を囲みながらさまざまな話を聞いた。


夜中私達は焚き火を囲みながら眠ってしまった。

ふと、目を覚ます。

瞼を擦りながら眠りについている皆を見る。

ふと、辺りを見渡すとウルファがいない。

疑問に想い体を地面から起こし、村の中を探す。

どうしたんだろう?

しばらく探してると村の外れに何やら妙な人影があった。

その人影は何やら足をおり、地面に座っているようだ。

なんだろう?

その人影に近づくとそれはウルファだった。


「ウルファ?」


私が声をかけるとウルファは体勢を維持したまま振り返った。


「あら。リーティエ。」


「何。してる?」


「あぁ、私は毎晩月に向き瞑想をしてるのよ。」


「瞑想?」


「あぁ、私の毎晩の習慣なんだ。」


私がウルファの近くに座って良いか尋ねると良いというので近くに座る。


「ウルファ。聞いて。いい?」


「良いわよ。どうしたの?」


「ウルファ。知らない。国。不安。ない?」


「知らない国にいて不安がないかて事?」


ウルファがそう聞き返してきたので頷いた。


「私は好きでこの国に来たから不安は少しあったけど期待で胸がいっぱいだったわ。」


「期待?」


「そう期待。この先どんな冒険が待っているのだろう?どんな人と会うだろう?どんな未知の物と会うんだろう?そんな期待で楽しみだったわ。」


期待かー。

私もいきなり右も左もわからない。ましてや日光まで違う所に連れて来られて不安で押し潰されそうだったけど。ミッド達に出会って色々大変な目にあったけど初めて見る物、初めて感じた物、初めての経験色々あったけど楽しいと感じる事もあった。


『色々あったなー』


「ほら、子供はもう寝る時間よ。もし、眠れなさそうなら私秘蔵の茶でも」


その時。


「ギギイイイイイイイイイイ!」


突如、金切り声が村中に響いた。


「ウルファ!」


「早く皆の所に戻るわよ!」


私達は皆の所へ走った。


「みんな!起きてる!」


「あぁ、起きてるよ!」


皆の所に着くとウルファがそう声をかける。

焚き火の側にいたチェスターは魔石弾を魔導杖まどうじょうに弾を込め、ハリーは急いで鎧を着けている途中で、フィルは矢を装填済みのクロスボウを肩にかけ、まだ寝ぼけてるミッド達を起こしてる。


「皆さん!」


家から飛び出して来た剣を携えた騎士が私達に話しかける。


「ああ、準備は出来てる!お前ら4人!」


私達を呼び、


「お前たちは足で纏いだ。騎士さんの家に避難してろ!良いですね?」


「あぁ、構わない!」


チェスターに避難するように指示をもらう。


「なんでだよ!」


その判断に意を唱えたのはミッドだった。


「俺達だってゴブリンくらい倒せる!俺達も戦わせろよ!」


「時間がないんだよ!早く入れ!」


チェスターがそんなミッドに怒鳴る。


「ミッド」


私はミッドの肩を叩き首を横に振る。


「ミッド。」


「なんだよ。ちくしょう。」


私達は家の中でに入る。


「それでは行きましょう。」


「えぇ、鳴き声が聞こえたのは南側からです。」


私達は魔物の元へと向かって行くチェスター達を見送った。

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