第22話 震える大地 その2

ミッド達を家に避難させ、今は騎士と俺達冒険者が襲撃された地点へと向かう。


「チェスター!あれを見ろ!」


現場に到着するとゴブリン共が1体のゴーレムに殴りつけられている。

だが、ゴーレムの動きは鈍く、多くのゴブリン共は仲間を囮にし、ずる賢くもゴーレムをすり抜け真っ直ぐ村に迫っている。


俺はすぐにゴブリン共に杖先を向け、仲間達に指示を飛ばす。


「各人ゴーレムの取りこぼしを好きに攻撃しろ。なんとしても村に近づかせるな!」


俺はゴブリンの1体に凹凸の照準を合わせ、息を止め、引き金を引く。

反動が俺の肩にくる。

俺が狙ったゴブリンは仰向けに倒れる。

次だ。

手動でシリンダーを動かし、ハンマーを起こし、照準を合わせて引き金を引く。

またゴブリンの1体が倒れる。


「はああああああ!」


パーティーの中で身のこなしが軽いウルファはすり抜けて来たゴブリンの先頭を叩き切る。


「いやあああああ」


続いて村の騎士がゴブリンに切り掛かる。

ゴブリンは頭を切り飛ばされる。


「はいやあああああ」


ハリーが追いつきゴブリンを籠手で覆われた拳をゴブリンの1体に叩き込む。

吹き飛ばされたゴブリンは他のゴブリンにぶつかり、揉んどりうっている。そこにハリーが追撃をする。

仲間が前線に出た。同士討ちをしないように気を付けないと。

俺はゴブリンを撃ちながらフィルを呼ぶ。


「フィル!そっちはどうなってる!」


「こっちも邪魔にならんように戦ってるよ。それと2時の方角からゴーレム接近。トロいがもう少ししたら戦いに加わるよ。」


「あぁ、反対側からもゴーレムが接近するのが見える。」


どうやら村の周囲を守っているゴーレム共が戦闘の音を聞きつけこちらに向かっているようだ。


「しかしどうなってる!先から撃っても撃っても目の前の森からゴブリンが出てくる!」


「あぁ、しかもゴーレムがいる村にこんなに襲いかかってくるなんて自殺行為だ。」


「あぁ、気がしれないな!何か狙いが」


その言葉を言いかけた時、村から女性の悲鳴が響いた。


「あぁクソ!しまった!」


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私達はチェスター達を見送り騎士の家へと入る。


「さぁ、そこのソファに座って。」


中に入ると騎士の奥さんが暖かく迎えてくれてソファに座る事を薦めてくれた。


私達はソファにそれぞれ座った。


「何か飲み物を出すからちょっと待ってて。」


そう言ってキッチンに行こうとした時。

ドタドタと二階から駆け降りてくる音が家に響き、


「お母さん!」


二階から掛けて降りてきたこの家の私より2歳下と見られる少年が剣帯の穴を最大限締めてなお、余るベルトを腰に剣を差して母親を呼ぶ。


「僕も戦う!」


「こら。坊主俺らだって家の中にいろて言われてるんだからお前のような子供が出る幕はないんだよ。」


ミッドがそう言う。


「そうですよ。お父さんは今、村の為に戦っているから良い子にするんですよ。」


母親そう言ってキッチンの方に行く。


私はその子に近づいて頭を優しく撫でる。


「その。心意気。いい。良い子。大人しく。してる。」


私はふと少年が持っている剣が気になり、少年に尋ねた。


「その。剣。どうしたの?」


「これ?これは昔死んじゃったおじいちゃんが僕にてくれた剣だよ。」


「そうなんだ。」


お祖父様の形見の剣なのか。


「おじいちゃんはすごいんだよ!元ぼーけんしゃでとても強かったんだよ。この剣もミシュリルて言って岩も叩きっちゃうんだよ!」


ミシュリル。

今伝説の鉱物ミスリルて言わなかった?

気のせいだと思うけど。


「僕も強くなっておじいちゃんみたいなぼーけんしゃになるんだ!」


「えぇ。きっとなれるよ。」


私は微笑みながらまた少年の頭を撫でる。


その時、キャああああああああと女性の悲鳴が村に響いた。


「なんだ!今の!」


「何!?」


その時キッチンからドガラシャと何かを壊すような大きな音が響いた。


「お母さん!」


少年がキッチンに剣を引きづりながら走っていった。

私もキッチンに向かう。


キッチンは壁が破壊されており外が見え、そこには前に見たゴブリンより体格もがっしりした筋肉質なゴブリンが右手に斧を持ち佇んでいた。


「うぅ。」


吹き飛ばされた残骸を見ると奥さんが下敷きになっていた。

ゴブリンはキッチンの中に入り残骸に手をかける。


「お母さんから離れろーーー!」


少年が鞘から抜きかけのままの剣で殴る。


ゴブリンはうっとおしげに思いっきり叩くはたく

少年は私の方に拭き飛ぶ。

それを私は素早く動き叩かれた少年を受け止める。


「借りるよ。」


少年の剣を抜く。

剣は鉄に似てるが一段と違った別の輝きを放つ。

私の斬り込みに対応するようにゴブリンは斧で防ぐ。

そうやすやすと斬られないか。

ゴブリンは斧で私を弾き、斧を振りかぶる。

ならこれはどう?


『力よ!-ボンピィア-』


全身により力が入り、私は跳ぶように剣を斬りあげる。

ゴブリンの斧を握っていた右手は斬り飛ばされ血が噴き上げる。


「ゴアアアア!」


ゴブリンは斬られた腕を押さえながら後ずさる。


『そこ!』


私は素早く駆け寄り命乞いか剣を防ぐ為にあげた左腕ごと首を斬る。

斬り落とされた首と左手が地面に転がる。

頭を無くしたゴブリンの体は血を吹き出しながら膝をつき、倒れる。


「お母さん!お母さん!」


私は声の方を見る。

少年は母親に駆け寄り呼びかけている。


「リーティエ!大丈夫か?」


いつの間にかミッド達3人がキッチンに来ていた。

こうしてられない!


「ミッド!奥さん!お願い!」


「あぁ、来い!まずは瓦礫を退けるぞ!」


奥さんをミッド達に任せて私は剣を借りたまま家を出る。

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