第25話 日が昇りて

1夜明け

村は酷い事になっている。


「チェスター。そっちはどうだ?」


フィルがこちらの様子を尋ねてくる。


俺は駄目だと気持ちを込めて首を横に振る。


謎の生き物ーリーティエがドラゴンと呼んだ事からドラゴンと仮称しようとしたが神話との違いからドラゴンではないと話が出て結局決まらなかった。ーが村中を暴れ周り、村はほぼ全ての家が全壊。

今は倒壊した家から生存者がいないか探索中

ソルジャーゴブリンを含んだゴブリン共の襲撃から始まった今回の事件。

俺はゴブリン共はあのドラゴンから逃れる為に村を襲撃したのではないかと考えてる。

考えてみろ。あんなドラゴン巣食う森よりゴーレムに囲まれたこの村の方が安全だ。

あいつらは知っていたのか知らないがゴーレムは村の中に入れないよう設定をされていた。

村に入っちまえばゴブリンだろうとゴーレムに守られる。

そう睨んで下位のゴブリンを囮に守りが薄くなったところを襲ったのだろう。

だが、ゴブリン共の予想は裏切られた。

ドラゴンはゴーレムも容易に倒せてしまう。

戦闘の音に引き寄せられたドラゴンがゴーレムをその顎を持って打ち砕き、その巨体を持って村を暴れ尽くした。

今回の事件はこんな感じだろう。

結局ドラゴンは村を暴れ周って森に行き、そこでも暴れ、日が昇ると今までの事が嘘のように暴れるのをやめ、おとなしくなり、どこかへと行ってしまった。

これはギルド総出の騒ぎではない。

軍が出動するかも知れない。


そう今回の事件を考えながら倒壊した家にまだ生存者がいないか瓦礫を取り除きながら探す。

どうか誰か生きていてくれ。そう願いながら瓦礫を押し除けていく。

だが、人を見つけれるももう息をしてなかった。

ちくしょう。後どれくらいこれを繰り返せばいいだろうか。

そういえば、リーティエはどうなってしまったのだろうか。

俺の目の前で襲われてしまった。

結果は見えている。

ドラゴンのお腹の中かそれか森に打ち捨てられているのだろう。

いけない。暗い気持ちになってしまった。

作業に集中しないと。

俺は作業に戻ろうとすると


「お、おねいちゃん!」


そう少年の声が村中に響いた。

声の方を見ると荒らされた畑のところに1人の少女が、村の方へ何かを引き摺りながらノロノロと近づいて来た。

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私は意識を取り戻した。

顔を照らされ、その明るさに、その暖かさに瞼を動かし、少し痛む首を動かし、動かすと少し痛む右腕を動かし、顔を拭うように手を動かす。

.............生きてる。

体中が痛むが生きてる。

そう実感して痛む左腕を持ち上げて手のひらをこちらに向け、緩慢な動きだが握り締めたり開く事が出来た。

左腕も大丈夫か。

私は両腕を地面につけ、ゆっくりと上体を起こす。

足は右脚は大丈夫が左脚が木に挟まっている。

左脚の指は痛むものの動く感触が伝わってくるので大丈夫。

どうやら私は五体満足で大丈夫のようだ。


『ふあー。』


私は両腕を広げてその場に倒れる。

疲れた。

体中が痛むがなんだか怠くなり横になっていたい。

そこで昨日のドラゴンの事を思い出す。

戦ったんだな。ドラゴンに。

落ちる勢いを殺す為だとしてもドラゴンに手傷を負わせた。

自然と微笑んでいた。

私も戦えましたよ。お父様。


『騎士とはその誇りを持って相手と渡り合う物』


昔、言われた事をつい口に出してしまった。

また、お父様に話せる事が増えてしまった。

帰ったらこの事を伝えればお父様やお兄様も褒めてくれるだろう。

まずはラック達と合流しないと。

私は上体を起こし、左脚を捻るなどをして脚を抜いた。

左脚を動かしてみて目立った傷や怪我はなさそうだ。

私は痛む体を動かしてなんとか立ち上がり辺りを見渡す。

あった。

私が借りた剣が近くに刺さっていた。

剣に近づき引き抜こうとするがうまい事力が入らず、片手じゃ抜けない。

戦っている時は片手で振り回せてたのに今じゃ剣を持てない。

両腕で握る。

なんとかゆっくりと抜く。

『どっ こいしょ!』


その掛け声と共に剣は抜け、私は尻餅をつく。

痛い。

私は立ち上がる。

剣は今の私には重く感じ、剣先が持ち上がらない。

しょうがないそれより。


『ここどこ。』


深い森の中どこかに連れてこられてしまう。

えーと、日の光が東から差してくるなら反対は西でこっちが北だから。

多分、あっちだな。

そう考えて剣を引き摺りながら村があると思う方角へと歩いていく。

本当にこっちであってるのだろうか?

自分でも不安になる。


しばらく歩くと森が開け、広い畑が見えた。

助かった。ここを横断していけば村に着く。

そう思い。畑を踏み締める。


「お、おねいちゃん!」


歩いているとそう声が聞こえた。

見ると騎士の息子さんがこちらに向かって走ってくる。

よかった。あの子生きてたんだ。

あの子がくるのを待っているとその子がぎゅっと抱きついてきた。


「よかった!よかったよ!」


「大丈夫。大丈夫。痛い。」


「リーティエ。お前生きていたんだな。」


ぎゅっと抱きつかれているとチェスターが近づいて来た。


「チェスター。みんな。大丈夫?」


「あぁ、俺達パーティにお前の仲間は大丈夫だ。だが、村長が」


そうか。村長が。


「おねいちゃん?」


「ん?どうした?」


「剣どうだった。」


「助かった。ありがとう。」


私は少年の手に剣を握らせて返した。

こうして村での事件は終わりを迎えた。

それからラック達みんなにあって無事だった事を伝えてチェスター達を手伝い、村の中生存者を探した。

だが、生存者はなかなか見つからず、最終的に村の生存者は騎士の奥さんを含めて352人が生き残った。

それから私達はチェスター達をはじめ、残る人を残して疎開する人達と共に街へと帰っていった。

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