第26話 雨模様不穏な

私がここに来てから2ヶ月経った。


その日は雨が降っていた。

私は雨打たれながら走る。


「はぁはぁ!」


私は急いで宿へと走る。


「ただいま。大丈夫!」


私は宿に着くなり部屋のドアを思いっきり開け、部屋の中へ入る。

家具一つ無い部屋は静寂の中、小さく熱にうなされる荒い息遣いが響いていた。


「アン。大丈夫。絶対。よく。する。」


話は1週間ほど前になる。


あの日はまたいつも通り喧嘩をしていた。

あの時蹴り飛ばした1人に背を向け、他の子に向いた時-


「うおおおおおおおおお」


倒れていたその子は何かを地面から拾い上げ、-後でわかったがボロボロの錆びた長い釘のような何かだった-私に向かって襲いかかってきた。


それに反応する事が出来ずに完全に無防備だったところに-


「危ない!」


アンに突き飛ばされた。

アンのお腹から血が滴り落ち、倒れ、悲鳴をあげる。

その悲鳴に襲ってきた子供達は散るように逃げた。

私達は痛がるアンに駆け寄った。


ミッドがこんな釘が刺さっているからアンが痛がるんだ!抜くぞ!と言って抜いた。

それからはもう宿に連れてゆき、魔法を使って慰め程度癒しを施した。

それでも体調は良くならず、次第に熱を出すようになった。

ミッドとラックが医者を呼びに行くも私達はそこらにいる浮浪児と同じく金のない身分だ。

今は熱が下がるように祈りながら私達3人で手分けをして働いてお金を集めているところだ。


「アン。」


アンのおでこに着けている濡れタオルを洗い直し、おでこに着ける。

今はこれしか出来ない。

そう悔しがっているとドタドタと誰かが駆け上がってくる音が聞こえてきた。


「おい!戻ったぞ!」


そう言ってミッドとラックが部屋に入ってきた。


「今日は良いもん拾ったんだ!」


良い物とはなんだろう?


「じゃーん!鍋だ!」


ラックが持っていた袋から取り出したのは小振りのボコボコと所々凹み1箇所穴の開いた取手が外れた鍋だ。


「病人には体力を付けないとそのために雑穀も買ってきた。これを粥状にすればアンも食べやすくなるだろう。」


ラックがそう言いながら小振りの恐らく一食分の穀物が入った袋を床に置く。


「作ろう!早く!」


そして私達は雨が降るなか、なんとか外で火を起こし、粥を作った。


「ほら。アン。食え。食って体力つけろ。」


ミッドが今の状態のアンでも飲み込みやすいように水を多めに煮詰めた粥を口に少しずつ流し込んでいく。


「ゴホゴホッ」


アンが咳き込みながらも飲み込んでいく。

そうしてアンは粥をなんとか全て飲み込んだ。


「ちくしょう!アンの体調が全然良くならねぇ!」


アンの食事が済んだ後、私達は水の入った水筒を囲んで作戦会議をしている。

アンが倒れてからこのところ3日に一回の食事で後は水でお腹を満たす。そんな生活をしてお金を貯めているが一向に医者が提示した額に届かない。


「ちくしょう。どうすれば。」


ラックが項垂れ、その拳で膝を打つ。


私の魔法では気休めにしかならず、根本的な解決にもならずどうする事も出来ない。

こんな時、お父様がいたらどうしてただろう。

お兄様がいたらどれだけ心強かっただろう。

もし、私に今すぐ家に帰る手段があれば、きっとアンも救えただろう。

悔しい。

だが、今の私は無力だ。


「1つだけ方法があるとするなら。」


ミッドのその言葉に私とラックが同時にミッドの方へ顔を向ける。


「もし、アンを今すぐ。助けれる方法があるとするなら。お前達はどうする?」


方法?一体どんな。


「実はな。1つだけこんな話がある。それはな簡単な怪我や病気を治すポーションの最上級版であらゆる怪我や病も治しちまうエクスポーションがあるんだ。」


私達は固唾を飲んでミッドの話を聞く。


「そのエクスポーションの原料が北の森の最奥に生えてるらしいんだ。」


「おい。ミッド俺たちは薬剤師やましてや錬金術師じゃないんだぞ。そんなもんとっても調合は出来ないぞ。」


錬金術師?聞き慣れない単語が出たがラックの意見に同意だ。

薬の原料を手に入れても私達では調合が出来ない。

どうしようもないのだ。


「まぁ、待てよ。何もエクスポーションが必要てわけじゃねぇ。その原料だけでもすげぇ効能があるて聞く。なんでもその材料の中の紫の花の根は煎って飲ますだけで瀕死の患者でも回復しちまうて優れものだって話だ。」


その話が本当ならすぐにでも取りに行きたいでも、


「ダメ。危険。」


ダメだ。北の森の奥は危険な魔物がいるとギルドで聞いた。

そんな所に行くなんて危険すぎる。


「リーティエ。」


ラックがこちらを見つめる。


「良いか?リーティエ。これはアンの命がかかった。大事な!大事な事なんだ。ここで命張らないでどうする?俺は何がなんでも行く。」


「ミッド!」


ダメだ。何かあってからではダメだ。

ミッドを説得しないと。


「リーティエ。俺もミッドの案に賛成だ。」


「ラック!」


どうして!どうしてそう危険な事に命を投げ出せるんだ。


「良いか?お前はアンが死ぬのは嫌か?」


「嫌。」


「なら簡単だ。アンを救い出せる選択肢が出されてるんだ。例え、どんなに危険でもこの選択肢を選びたい。何故ならアンに死んでほしくないだろ?」


「うん。」


そうだ。私もアンの事を助けたい。でもこれとそれとでは話が違う。

どうすれば。


「そんなに言うならお前は来なくていい。」


ミッドがそう言い放つ。


「ここでアンの看病してるてのでも大丈夫だ。」


クソ。この2人だけで行かせるくらいなら。


「わかった。行く!私!行く!」


「ふ!これで決定だな。それじゃ明日の早朝北の森へ行くて事で決定だな!」


こうして私達は森の奥へ行くことが決まった。

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