第28話 蛇口

私達は森の中を進んで行く。

森は奥へ行くごとに手入りされてないのか人間が立ち寄った後は見られず昼なのに鬱蒼とした暗さでその枝で日差しを遮り、わずかな日差しが時々、木々の間から照らされるだけで非常に暗い。


「なぁ、ミッド。本当にこんな所にその素材はあるんだよな?」


「うっせぇな!そんなの行ってみないとわかんないだろう。」


ミッドとラックがそう口論をする。

確かにこんなに薄暗くそれに魔力が溜まり、澱んでいる場はなんだが不安になっていく。


「落ち着いて。それより。薬草。どこ?」


私は薬草の場所を訊ねる。


「あぁ、薬草は森の奥の日差しが良い場所に生えてるて聞いた。」


「この森の日差しの良い場所か。」


ラックがそう呟く。

そう呟きたくなるのもわかる。薄暗く同じような木々がずっと続いてるのだ。いつ戻れるかもわからない。


そう考えてると目の前の茂みが揺れた。


「なんだ!かかって来いよ!」


ミッドが啖呵を切って剣を抜く。ラックもミッドに続いてナイフを引き抜く。

茂みから現れたのは-


「ブゥブゥ!」


垂れ耳に灰色の毛皮のに鋭い一本角が生えた兎のような生き物だった。


「なんだよ。一角兎かよ。」


「一角兎?」


「一角兎て名前の兎だよ。一応魔物て分類だけど大人しいからほっといても平気だよ。」


ラックの説明を聞き、私はそっと兎を撫でる。ゴワゴワした毛並みではあるものの大人しくくすぐったそうにしていた。


「行こうぜ!アンが待ってる。」


ミッドに促される。


「えぇ。行く。」


私達は森の奥へと進んで行く。

森の中を進んで行くと広場が見えてきた。


「おい!広場だぜ!もしかしたら探してる薬草があるかもしれないぜ!」


ミッドが走り出す。


「おい。待てよ!」


ラックも追いかけるように広場へと走り出す。

やれやれ。

そう思っているとシューと高い音が広場に響く。

何かがまずい。


「伏せて!」


私が叫ぶとミッドが頭から被りつかれた。

見ると全長は測りしれない大きさの蛇だった。


ミッドの呻き声と蛇の威嚇音が周囲に響き渡る。


「わわわ、ミッド!」


早く助けないと!


「ラック!借りるよ!」


私はラックからナイフを借り、ミッドを飲み込み中の口に強引に捩じ込み、切り裂く。

切り裂かれた事によりミッドを飲み込む力が弱まった。


「ラック!ミッド!引っ張って!」


「あ、ああ!わかった!」


ラックは暴れるミッドの足を掴んで引っ張る。

が、まだ蛇から抜けない。

くそ。まだまだ足りないか。だったら、

私は腕を引っこ抜き、目玉に向かってナイフを突き立てる。

突き立てたらグリグリとナイフを捻って目玉の傷口を広げる。


「シャー!」


蛇は痛みにより喉を鳴らしながら踠き、暴れる。


「うわわ!」


ラックが振り回されるミッドを離すまいと掴み、そのまま宙へ振り回される。

私もナイフから手を離すまいと両手でしっかりと握る。


「うわわ、早くなんとかしてくれ!」


ラックがそう言う。

なんとかしてくれと言われても今の私じゃ、

そこでナイフが抜け、私は放り出される。

くそ。片目じゃダメか。


「なら!」


私は地面に着く瞬間に受け身を取り、転がりもう一度蛇の方へと走り出す。

今度は蛇の真下を勢いを殺さぬように走り抜け、まだ無事な方の目玉へとナイフの刃を向ける。


「うぐ」


しかし蛇も同じ手をくらうわけではなく、体を揺するように揺らし、私に体を思いっきり当てて吹き飛ばそうとする。


させるか!

私はぶつかった瞬間になんとか体全体で掴む。

蛇は私を振り落とそうと何回も体を振り回す。私も振り落とされまいとしっかりと掴む。


『このー!大人しくしろ!』


私は再度目にナイフを突き立てる。

蛇は最後に思いっきり暴れてその身を土埃を立てながら倒れる。


「いてて。なんとかなったな。」


『ラック!早くミッドを助けよう!』


「..........リーティエ。何言ってるか分かんないぞ。俺がわかる言葉で話してくれ。」


おっと。

それからミッドを助けるため私が蛇の口を思い切り広げ、ラックがミッドを口から引きずり出して助けた。


助けられたミッドは全身を唾液まみれのねっとりした状態で口から出てきた。


「ウゲェ。助かった。」


「大丈夫か?」


「死ぬかと思った。」


「大丈夫?ミッド?」


私がミッドに対して手を差し出す。


「大丈夫だっつの!」


ミッドは自力で立ち上がった。


どうやら大丈夫そうだ。


「それにしても凄い動きだったな。流石だリーティエ。」


そうラックが褒めてくれた。


「いいえ。普通。」


そう言いながらナイフを返す。


「嫌々、あんな動き出来るかよ。」


「そう?私。出来る。やった。褒める。必要。ない。」


「助かったぜ。リーティエ。」


「おい!さっさと行くぞ!日が暮れちまう!」


ミッドに急かされた。


「ああ!わかった!ミッドに急かされている。さっさと行こうぜ。」


こうして私達は森の奥へと踏み込んで行く。

この時ミッドにそう思われていたとはこの時思いもしなかった。


それから3人で森の中を歩く事、数分。

薄暗い森を歩いてるとそこに鉄臭い変な匂いがしてくる。


「みんな。止まって。」


私が2人に止まるように言う。


「んだよ。早くしないと日が暮れちまうぜ。」


「変。何か。変。これは?そう。血。血。匂い。」


「ウゲェ血の匂いかよ。」


「といってもここから先引き返すわけにも行かないし、どうしようか?」


「そんなのこの俺様がスパーと敵を倒してやる。」


そう言ってミッドは見せつけるように剣を抜く。


「さっきは蛇にやられてじゃないか。」


「つぅ。さっきは不意打ちだったからであって今度はちゃんと倒してやるて。」


「2人。今度。敵。強敵。注意。」


「あぁ、気をつけて行こう。」


「勝手に仕切ろうとすんなよ。」


こうして奥の方へ向かう事になった。

が、その時。


「アオオオオオオオオオオオオオオオン!」


狼の鳴き声が森中に響き渡る。

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