第8話 武器屋

「なぁ。考えたんだけど武器を買わないか?」




ミッドが唐突にそんな話をし出した。




「ミッド。いきなりどうしたのよ。」




アンが朝食のパンを咀嚼しながらそう問いかける。




「この所よく襲われてるし、なんとかしなきゃいけねぇと思ってる。」




ここ最近私達はよく襲われてるのである。


なんでも私達は大人に道具のように働かされてるからお金をたくさん持ってるだのと言われており、うんざりするほど襲われているのだ。




「武器。どこ。手に入れるの?」




私は自分の武器というのを持った事はないがそういうのは厳重な決まりがあるものだ。




「ん?武器なんてそこらの店で買えるぞ。」




驚いた。武器とはそんな簡単に手に入る物だったのか。


そういえば街中でよく腰にナイフを吊るしている人を見かけるがそんな感じだったのだろう。




「なぁ、買うのはいいとして金はあるのか?」




ラックがそんな疑問を尋ねる。




「ふふっふ。実はちゃんとあるんだよな。」




ポケットから銀色の硬貨4枚を取り出す。




「ここに4000クィドがある。それで質屋に売ってる中古のやつなら一つ1000クィドだろうから四つ用意出来るだろう。」




「うん!これなら買えそうだね。」




「だろ!早速今日の仕事が終わったら買いに行こうぜ!」




そうして夕方。




私達は誰も近寄らない古びた外観の建物の前にいた。




「な、なぁ。ここで本当に良いんだよな?」




「そうだよ!俺達が入れそうなのはここくらいだって。」




そう言ってミッドが恐る恐る扉を開ける。




チリーン!




ドアベルの音が鳴り響く。




中にみんなでそーと入った。




中はところどころに照明器具が設置されているがほんのり薄暗くなっていた。




「いらっしゃーい。」




しわがれたお爺さんの声が奥から聞こえ、皆がビックと震える。




奥から紫煙を伴いながら1人のお爺さんがやってきた。




「なんだい。ただのガキかい。」




「なんだよその目は!ちゃんと買いにきたんだよ!」




疑うような目で見てきたのでミックが反論した。




「ふん。金があるならいいよ。」




そう言って奥に置かれている椅子に座る。




「たっく。なんだよ。」




「まぁまぁ、武器を選ぼうよ。」




そうして店内を物色する。店内は槍や斧槍、大剣・片手剣盾や斧など色々な武器が置いてあった。




懐かしい。家の武器庫みたいにさまざまな武器が飾られている。




触りたい。思わず手を伸ばすと-




「こら!売り物に勝手に触るんじゃない!」




その怒鳴り声に思わずビクッとなり手を引っ込めた。


確かに刃を迂闊に触ったら怪我をしてしまう。




「たっくもう。売り物が汚れたらどうすんだい。」




.......どういう意味だろう?




「おいじじい!全部高ぇじゃねぇか!」




ミックがさっきのお爺さんに負けない声で文句を言う。




私もあれからちょっと文字を覚えたがまだよく分からないがどうやら銀貨4枚で買えない値段らしい。




「ふん。貧乏人が。たっくいくら持ってるんだい。」




私達の持ち金を尋ねてくる。




「4000クィドだよ。」




ミッドがボソっと小さな声で言う。




「なんじゃ!よく聞こえん!もう一度言ってみい!」




「4000クィドだよ!クソジジイ!」




「ハン!この薄汚いガキが!なんでそんな金で武器買えると思ったのかね!頭の中身は空っぽかね!」




ミックが今にも飛び掛かろうとしてるがラックが宥めながら羽交いじめで抑えている。




「ハァー!しょうがない。そこの箱の中なら一個2000クィドで売ってやるよ。」




お爺さんが店内の隅の方を指差してどこからか取り出した煙管にマッチという物で火を付けて吸い出す。


そこには大きな蓋つきの木箱が置かれていた。




「たっく。覚えてろよ!」




「まぁまぁ、箱の中にいい物が入ってるかもしんないし、さっさと開けようぜ。」




「でもこういう箱の中の武器を選ぶて怖いよ」




アンがそう言って震える。




「アン。それ。どういう事?」




ミックやラックも知ってるのか2人の方を見る。




「なんだそれ?ミックは知ってるか?」




「いや知らん。」




皆がアンを見つめる。




「私聞いた事あるのこういう箱の中には呪われた剣が入ってるて。」




「呪われた剣?」




ラックが尋ねる。




「そう。その剣は鉄やドラゴンの鱗さえ切り裂く程の切れ味の良さをほこるけどその代償に何人もの使用者の腕を切ってその血を貪るそんな呪いだって。」




場がシーンと静まりかえる。


私がゴクリと唾を飲み込むと-




「でゅははあはっはははははは!」




ミックが突然笑い出す。




「ど、どうしたんだ。」




「あー苦しい。よく考えて見ろよ。そんなよく切れる剣なら俺だったら絶対高く売り裁くし、それに曰くつきのならコレクションとして売った方がいいて。」




「そうだな...そうだよな!」




売るという事をなんとなくしか理解してない私としてはそういうものかとしか思わないがミックが言ってるのだからそうなんだろう。




「ねぇ、早く箱開けようよ。」




アンに急かされて私達は木箱を開ける。




・・・・・中を漁るが良いものが見つからない。




錆びて今にも折れそうな剣、斑紋のように錆が浮かぶ片手剣、刃こぼれした斧などなど。




「おいジジイ!まともなもんがねぇじゃねぇか!」




「うっさいガキだな。そこはそんなもののしかないんだよ。いやなら別の店で買うんだな。」




ミッドがお爺さんと口喧嘩してる横で私は箱の中を漁る。


お、これは?




「ミッド。」




「あん?どうした?」




私は箱から一本の鞘に入った剣を取り出す。


鞘から剣をゆっくり抜く。


見たところ錆も刃こぼれもない。


けど-




「お、良いのもあるじゃねぇか!」




「そ、それは!」




お爺さんがこちらにくる。




「ま、まさか呪いの剣じゃねぇよな?」




ミックの言葉に私を除くみんなに緊張感が走る。




ミック。それはない。




「その剣は呪いの剣ではない。祝いとして貰った剣じゃ。」




「祝いの剣?」




祝いの剣とはなんだ?




「仕入れ先の1人の鍛冶屋が新しく始めたから記念としてやると言われ貰ったんじゃ。こんな所にあったのか。」




「ねぇ。お爺さん。」




私はお爺さんに尋ねる。




「この剣。買って。いい?」




「ふぅむ?」




お爺さんが考えこむように腕を組んだ。




「そうだよ。ジジイ。この箱の中に入ってたから売り物に違いないだろ?」




「ふぅむ?確かにそれもそうだな。」




「お!マジか!サンキュー!爺さん!」




「あと。何。買う?」




「もしかしたらもっといいのが入ってるかもしれないよく探そうぜ。」




そうして私達はお爺さんにしかめ面をされながらも箱から一つ一つ確かめながら出していった。




だが-




「良いのがないぞ。」




「なんだよ!もう!」




「しょうがないじゃろ。その箱はそんなもんだ。」




みんなが諦めようとした時、アンがある提案をする。




「ねぇ、おじさん。お願いがあるんだけど。」




「ん?なんだ?」




「おまけしてくれない?そのかわり何か仕事するから。」




「ふむ?」




お爺さんが何か考え込むようにしている。




「じゃ、こういうのはどうだ。」




そう言って奥に引っ込む。




しばらくして何か葉っぱのような物を持って戻ってきた。




「ちょうど薬草がきれそうになっていてな。それをとってきてもらうてのはどうだい。」




「薬草?」




「ああそうだ。それだけなら簡単だろ。」




「まぁ、それくらいなら出来そうだけど。」




「じゃ、決まりだな薬草を持ってきたら砥石をやる。」




こうして私達は薬草を取りに行く事が決まった。

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