第11話 逃走

みんなで暗い森の中を走る


「なんだよ今の鳴き声!」


「知るか!そんなもん!それより街はこっちの方で良いんだよな!」


「あぁ、そのはずだ!」


私達は何とも知れない脅威から逃げる。


先頭をラックが走りその次にミッド、私、アンで走っている。


「あいた!」


アンが転んだ。凹凸が激しく走るのに不慣れな地面に木の根か石か何かに躓いたようだ。


「大丈夫?」


私はアンに駆け寄って起こす。


「うん。なんとか。」


「おい!ぐずぐずするな!」


ミッドも駆け寄って一緒にアンを起こした。


「ギィー!」


何かが声を荒げながら襲ってくる。


「危ない!」


私は2人を突き飛ばす。


ビュンと何かが通り過ぎる音が聞こえた。


目の前にはゴブリンが唸り声を上げながらこちらをいつでも襲えるように構えてる。


「大丈夫。2人。」


私は石斧をいつでも振るように両手に構えながら2人に尋ねる。


「あぁ、俺は大丈夫だ。」


「私も」


「構えて!」


「ギギィィ!」


ゴブリンが飛びかかってきた。


私はゴブリンに合わせるように石斧を振る。


入りが浅いのか力が弱いのかボールのように吹っ飛んでいかず、その場に倒れた。


「ミッド!」


「あぁ!」


ミッドが剣を振りかぶりトドメを刺そうと振り下ろす。


「ギギィィ!」


良いところに入ったのかゴブリンが悲鳴をあげる。


「ふふん!よし!」


「ミッド避けろ!」


その声の後ミッドが何かに押し倒される。


見るとゴブリンがミッドに馬乗りになっていた。


「ミッド!」


私はゴブリンをミッドから引き剥がそうと石斧を振りかぶる。

だが、


「が、」


何かがぶつかってきた。


私は堪らず横に倒れる。


ぶつかってきた何かを見るとそれはゴブリンだった。

そのゴブリンは刃がボロボロの剣を私に切り付けようと私に振り下ろす。


私は咄嗟に横に転がり刃を避ける。

転がり両足と空いた片手を地面に付く。


「やめろ!」


どこからか飛んできた石がゴブリンの側頭部に当たる。

一瞥するとアンが石を投げていた。


私は石斧を横に振りかぶり、思い切り振る。


ミッドはどうなったのか

そう思ってミッドの方を見るとラックがミッドに馬乗りになっていたゴブリンを引き剥がし、ナイフを執拗に何度も刺していた。


「ラック。もういい。」


私はラックの肩を叩き先を急がせる。


あれから長い事夕暮れが照らす薄暗くなってきた森の中を駆け抜けてようやく街を覆い囲む壁に到着した。


「ようやく到着した!」


「安心するのはまだ早いぞ!早く入らないと!」


私達は壁の穴の周りに着く。


「アン!先に入って荷物を中に引きづり込んでくれ。」


「うん。わかった。」


アンが穴の中に入っていく。


「オーケー!荷物を渡して。」


穴の中からアンの声が聞こえてくる。


ミッドが周りを警戒し、私とラックが穴に荷物を押し込んでいく。

なんとか苦労して一個目を穴の中に入れる。


「オーケー。次。」


私は穴から伸びたアンの手に二つ目の袋を掴ませる。


その時


「なんじゃこりゃ」


ミッドがふとそう言ったので私もその方向を見る。


1、2、3、4、5


それはたくさんのゴブリンがこちらに向かってくる。


「お、おい!袋早く入れろ!」


「わかってる!でも何かが引っかかって入らないんだよ!」


そうミッドとラックが口論してると


「ギギィィ」

「ギギィィ」

「ギギィィ」


ゴブリン達が獲物を狙うように遠吠えをあげる。


「くる!構えて!」


私は石斧を構えながらミッドにそう声をかける。


「クソ!こんな剣で戦えてかよ」


ミッドはそうぼやきながら剣を構える。


ゴブリンが2匹同時に襲ってくる。

それを私は石斧を降り片方に当てる。

私に打ちのめされたゴブリンはよろめく。

追撃をしたかったがさらに1匹が飛びかかったので一度かわし、迎撃に石斧を振り下ろしてゴブリンの頭を打ちつける。

「ゴアアアアアアア!」


唸り声の方を見るまた新しいゴブリンが今度は両手を広げて突撃してくる。

それを屈んでかわしづつ足を引っ掛けて転ばせる。

体勢を立て直しづつ周りを見ると壁の穴から少し離れてたのでいつでも対処出来るように構えたまま後ろに下がる。


ミッドはどうしてるんだ。

そう思い周りを見渡すと


いた。ミッドはがむしゃらに剣を振ってゴブリン達を威嚇していた。


「ミッド!直そう!」


ミッドに状況を立て直そうと近づく。


「うわああああ」


ミッドは私に剣を横なぎに降ってきたのでかかんで避ける。


「ミッド!私!私だよ!」


「なんだリーティエか。脅かすなよ。」


私達は穴を背にジワリジワリとゴブリンににじり寄られる。


その時


「2人とも!早く穴に入ってくれ!」


穴の方からラックの声が聞こえた。


「待ってました!」


ミッドはゴブリンから背を向け一目散に穴の方に走る。


ゴブリンはその好きを見逃さずミッドを背後から襲おうとする。


『おい!』


私はミッドを守るように襲ってきたゴブリンを石斧で思い切り殴る。

そのせいか石斧が持ち手から折れる。

それに唖然し、しばし固まる。

「グルアアアアアア」


チャンスと見たのかゴブリン達が一斉に襲いかかってくる。

ハッとなり硬直から脱し後ろに下がろうとするがゴブリンの1匹に組み伏せられる。

まずい。

そう思った時、ゴブリンが剣を私に刺そうと切先を私に向けて両手で振り下ろしてくる。

私は咄嗟に両手でゴブリンの両手を掴んでその切先を止める。

切先が文字通り目の前で止まる。

ブルブルと私の腕から伝わった震えで切先が震える。

ゴブリンも負けずとより体重をかけて押し込んでくる。

そこで私はゴブリンのその出っ張った腹に足の裏を当て、頭上の方に投げ飛ばした。

私は急いで立ちあがろうとして地面に手をついた時に何か掴んだ。

私は立ち上がりながらそれを見る。

それは剣だった。

さっきゴブリンを投げ飛ばした時に落としたのだろう。

グリップは片手で握る用の長さ。

刃の長さは私の手首から肘くらいの長さ。

切れ味は悪くなさそう。

その場で軽く振るう。

振った感じは悪くなさそう。

私は徐に一歩踏み込みゴブリンの首を切り飛ばす。

私は気配で背後から近づいてくるゴブリンを感じ、振り向きざまに鎖骨から体の正中線まで切付け、刃が止まったところで蹴って無理矢理刃を抜く。

私は剣を振り上げる。

恐怖に駆られたゴブリンが棍棒を頭の上で庇うようにあげたので、腹を真横に切り伏せる。

次、次、次、次、

私は次々と向かってくるゴブリンを切り伏せる。

ただ淡々と切り伏せていく。


「リーティエ!」


その声にハッとする。穴の方を見ると誰もおらず、穴がそこに空いていた。


「リーティエ!早くきて!」


アンのその声に私はわかったと叫び、手近のゴブリンを切り伏せ、牽制のために剣をゴブリンの群れに投擲し、後ろに振り返り穴に向かって走る。


私は穴に向かって頭から飛び込み思い切りスライディングしながら穴の半ばでとまり、急いで這いずって中に入る。


「急いで穴を塞げ!早く!」


私が中に入るとミッド達が穴を塞いでいく。


壁を塞ぐ板からしばらく板を叩く音が聞こえてきたがやがてゴブリンが諦めたのか止んだ。


「ふふ。」


私は安心感からか笑ってしまう。


しまいには皆で笑った。

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