第13話 風呂

それはミッド達と出会って2ヶ月が経った頃


「はい。今日も頑張りましたね。」


いつものギルドの受付のお姉さんに仕事の報告のためにきていた。


「おう、今日は大変だったんだぜ!」


「あぁ、今日はクタクタだよ。」


「ふふ、そんな皆さんに朗報です。」


私を含めた4人の視線がお姉さんに向く。


「なんと皆さんは一ヶ月が経ちました。そこでギルドは皆さんが信用に足るかどうかの試験を用意しました。」


「お、マジか!」


「一ヶ月もうそんなに経ったんだね!」


「あぁ、大変だったな。」


この一ヶ月確かに色々あった。

魔導車から荷を下ろしたり、草毟り、荷運びや鼻曲がるような汚物溜めの清掃、道路の舗装の手伝いなどもやった。

大変だったけどミッド、アン、ラックが居たからやり遂げられた。


感慨にふけてるとお姉さんが話の続きを話す。


「明日は六時の鐘が鳴る時と同じタイミングにここに来てください。

あと、明日は大事な日だからいつもより清潔にして置いてくださいね。」


「いつもより綺麗にて俺たちは毎日、水で体を拭いてるぞ。」


「それだけでは足りませんね。パブリックバスで必ず全身を清めてから着てる服も洗濯して下さいね。」


パブリックバス?なんだそれ?


「げー!そんな金ないて」


「大丈夫です。ギルドも人員増強の為に今試験に限り前金を渡します。そのお金で行ってきて下さい。」


「なぁなぁ、ちょっといいか?」


ミッドが皆を呼んでお姉さんに聞こえないように固まってコソコソと話す。


「そのお金で風呂入らずに何か美味しい物食べに行かないか。」


「ん゛ん゛!聞こえてますよ。もし明日来た時、身なりが汚いと判断した場合失格となるのでそこは気を付けて下さい。」


ミッドの企みは失敗である。

こうして私達はパブリックバス?なるものに行くことになった。


「ねぇ。パブリックバス?て。何?」


私はパブリックバスについて尋ねた。


「パブリックバスていうのはみんなで使うお風呂の事だよ。」

アンが答える。

みんなで使うお風呂とは初めての経験だ。


「そこにはたっくさんの人がいて面白いんだよ。」


「ふーん。」


しばらく和気藹々と話してると色鮮やかな様々な輝きを放つ看板や建物などが立ち並ぶ市場などとは違う賑やかな通りに出た。


「ねぇ、ここは何?」


「ここは色町だ。」


色町?色町とはなんだろうか?


「ここは酒を飲んだり女が体を使って金を稼ぐそんな街だ。」


聞いた事もない事だらけで頭に疑問が溢れる。酒を飲むのは前にお父様が嗜んでいるのを見た事がある。でも体を使うとは何か?それがわからない。


「ここでは大通りから外れるなよ。もし行っちまったら命はないと思え、いいな?」


「う、うん。」


私は同意した。


しばらくみんなで固まって歩き、ある建物の前で止まった。


「着いた。ここが俺達が入る風呂だよ。」


その建物は青い屋根から何本もの煙突を伸ばし、柱は頑丈な作りをした物だった。


「いらっしゃい」


入り口に垂れた布を潜りそこの受付?にいたおばさんが愛想悪く出迎えた。


「おばちゃん。子供4人。」


「なら1200クィドと女2人に男2人なら石鹸2つとタオル2つで足りるだろう。合計2000クィドよこしな。」


ミッドがお金を払う。


「あと服洗いたいんだけどいくらかわかる?」


「服洗いたいなら乾燥もして男女別々に置いてあるから1回500クィドだよ。」


「ありがとうよ。」


・・・・・今のやり取りはなんだったんだ?まるで高位魔術の演唱だった。


私が呆気に取られるとミッドがアンに小銀貨5枚を渡す。


「それじゃ後でな。」


「うん。また後でね。」


そう言ってミッドとラックが右側の入り口に入って行ってしまった。


「私達も行こう。」


「う、うん。」


私はアンに連れられ、左の入り口に入っていく。


「な!」


そこには色々な女性がいた。


ただ、それは異常だった。

私達と同じように今来たばかりなのか服を着たままの人もいれば下着姿の人もいれば、何も着ていない裸の状態の人もいる。


「な、え、え、え、」


初めて見る状態に頭がこんがらがってきた。


「ほら、行こうよ。」


「う、うん。」


何がなんだかわからないままアンに手を引かれてどこかに進んでいく。


「さ、早く脱ごうか。」


そう言ってアンは服を脱ぎ始めた。


うん。脱いでるのである。

人前で脱ぐ事はメイドとかで経験あるもののこんな大勢に囲まれて脱ぐのが初めてでその.....恥ずかしい。


「何?ほら、早くしないとほらばんざーい。」


そう言って茶色の長袖のワンピースを脱がされていく。

ばんざーいてなんだろう。


「それじゃ洗っていくから服を持ってこっちきて。」


私はそれに従って服を持って裸のまま向かう。


「私も初めてだけれど、これにお金を入れれば洗って乾くらしいよ。」


そう言って1つの箱の前に立った。


それは箱に穴が空いていて閉じる為なのか蓋が付いてる。


「・・・・なにこれ?」


「ん?見るのも初めて?洗濯機だよ?」


「洗濯機?」


初めて聞く名前だ。なんだそれ。


「ほら、洗っちゃおうよ。」


アンに促されるまま穴(奥に銀色の底が見えたのでそこまで深くないようだ。)に服に下着を入れる。


アンが蓋を閉じて、上の方にある硬貨を入れる用の縦長の穴に小銀貨5枚を入れる。

すると箱が動き出した。

前にアンに教えてもらったがこのような魔石で動くのを魔導機ていうらしい。

これも魔導機なのだろうと見てるとふと紫の布が垂れてる入り口が目に入った。

なんだろう?ふと気になり手を伸ばした所で、


「まちなさい。」


ふとそう言われたので振り返るとそこには若く肌が白く耳が長い女性が立っていた。





作者の補足

洗濯代は受付お姉さんの好意です。


通貨に関してはこんな感じで設定してます。

金貨=一万クィド=一万円

銀貨=千クィド=千円

小銀貨=百クィド=百円

銅貨=十クィド=十円

鉄貨=一クィド=一円

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