第10話 強襲

森の中は空気が澄んでいて気持ちいい。

日向で寝てしまいそうだ。


「よーし!ここまできた!さぁここで取って取りまくるぞぉぉ!」


ミッドの号令の元、薬草を探す。


場所は日当たりの良い場所だと聞いてるがなかなか見つからない。


「うん!?あれを見ろよ!」


ミッドが木を指差す。


その木には小ぶりな緑色の木の実がたくさん実っていた。


「あれ?何?」


「あれはスーフの実だよ。酸っぱくて甘い木の実だよ。」


へー。そんな物があるんだ。


「おーい!落とすから受け止めろよ!」


ミックの声が上から聞こえてきた。


いつのまにかミッドとラックが木の上に登っていた。


「ねぇ、スーフの実もいいけど薬草見つけなくていいの!」


アンが2人に問いかける。


「あぁん!良いんだよ。せっかく来たんだ持って帰れる物は持って帰らないと。」


「そうそう。俺達は絶賛飢えてるんだから。」


それもそうか。最近ましになったとはいえ私達はいつも空腹に悩まされてる。


「そうだねー!じゃあパスパス!」


アンがそう声をかけると2人が登ってる木が揺れだし次々と降ってくる。


「大量だね。」


私達は持ってきた袋に詰めていく。

それにしてもどんな味がするんだろう。

私は1つ口に放り込んだ。

噛むと種なのかガリとした感触がした。

あーこれはブドウのように種があるやつなんだ。

種だけをペッと吐き出して、もう一度咀嚼する。

実の感触は柔らかくそして聞いてた通り酸っぱい。けど後から甘さを感じる。

うん。美味い。久しぶりに感じる甘さに自然と頬が緩む。

なんだろう。ジャムにしてパンに塗ったりクッキーと一緒に食べたい。

「この実。美味しい。」


「でしょ!この辺りで取れる貴重なやつだから食べれるだけ食べちゃおうか!」


そう言われていくつか食べる。


「あー!お前らだけ食べるのずるいぞ!」


ミッドが文句を言う。


「えー!良いでしょ!荷物を持つのも私達だし!拾うのも私達の仕事なんだよ!」


「なら俺も拾う!いくぞ!ラック!」


「おう。」


こうして私達は拾い喰いをしながら他にも採取していく。

薪になる枝木や食べれる野草、乾かせば丈夫なロープになる蔓など今まで見た事ない物や不足していた物を拾っていく。

だが、目的の物がなかなか見つからなかった。


「ねぇ〜。薬草見つかんないよ。」


私達は薬草を求めて森を彷徨うが見つけられないのであった。


そんな時草むらがザワザワと揺れだす。


「な、なんだ!」


草むらから出てきたのは背は低く、肌が緑で何かの襤褸を着た石斧を持った何かが現れた。

あれは


「ゴブリンだ!構えろ。」


ミッドがそう言い剣を抜く。

ゴブリン。単体なら弱い個体だと聞いている。

ミック達なら大丈夫だと思うけど。

ゴブリンが威嚇するような声をあげながら襲いかかってくる。

それをミッドはかわして、胴体部に剣を振る。


「ギギィィィ」


ゴブリンは吹っ飛んでいく。


「なんだよ!この剣全然綺麗ないじゃねぇか!」


気づいてると思っていた。

何せ刃引きされてるのだから切れるわけない。


「おい!ゴブリンが逃げていくぞ!」


ふとゴブリンの方を見るとゴブリンが石斧を放り投げ森の奥へと逃げていく。


「おいこら!まてええええ!」


「ぜってぇ逃してたまるか!」


まずい。


「待って!止まって!」


私が声をかけるが2人は構わずゴブリンを追って森の奥へと行ってしまった。

これはまずいかもしれない。


「アン!急いで追いかけよう!」


「う、うん。」


私は念の為、石斧を拾って追いかけた。


「待ってよー!私達が荷物背負ってるんだからもっと遅く走りなさいよ。」


後ろでアンがペースを落としながらも着いてくる。

スピードを落としたいけどこれ以上落としたら2人を見失ってしまう。


ようやく大きな洞窟の前で追いついた。


「はぁはぁ!ようやく追いついた!」


「2人。どうしたの?」


私が2人に尋ねる。


「あぁようやく来たか。ゴブリンがこの洞窟の中に消えていったんだよ。」


「どうする入るか?」


ラックがミッドに尋ねる。


「ゴブリンなんて雑魚だ!なら「待って!」


私が遮る。


「なんだよどうした?」


「ゴブリン!危険!1匹じゃない!たくさんいる!洞窟!暗い!どこから!襲われる!わからない!そんなところ!入ったら!ダメ!」


私は辿々しながらも必死に止める。

お父様に聞いた事がある。弱い者の策として逃げる事がある。

ただ逃げるのではない自分達が得意とするところに敵を引きつけて罠に嵌めたり、複数で襲ったりすると。

今回もその可能性が高いと思う。


「大丈夫大丈夫!俺様にかかればこれくらい余裕余裕!」


「そうだな。それにゴブリンはギルドの初心者向けの魔物だって聞くし、俺たちならいけるだろ。」


だが、2人は話を真面目に取り合おうとせずにいた。


「ダメ!ダメ!」


私は穴の前に立って石斧を翳す。


「お、落ち着けよ悪かったて。」


「うん。入らないて。」


「本当?入らない?」


「入らないて。それに日が傾いてきたし薬草も見つけないと」


「あー!そういえば薬草の事もあったな!」


「ミッド。今日の目的忘れるなよ。」


ラックが呆れて肩を竦める。


「悪い悪いじゃー早く薬草探そうぜ。」


私達は洞窟を離れた。

その後、森を駆け回り頼まれていた薬草を見つけた。

その頃になってるとより日が傾き辺りが暗くなり出した。


「は〜お腹空いたぜ。」


ミッドがそう言いながらお腹を摩る。


「そうだな〜腹すいたな〜」


「早く宿に戻って何か食べたねぇ〜」


「なぁここでちょっと休憩して食べていかないか?」


ミッドがそんな提案をする。


「ダメだよ。もう日が傾いて後ちょっとで夜になって迷子になっちゃうよ。」


「ダメか〜」


ミッドがガッカリしたように項垂れる。

そんな楽しかった1日が過ぎようとした時-


「ギギャアアアアアア!」


森中に響く鳴き声にみんなの足が止まる。

何?何?


「なんだ!?なんだ!?」


「ミッド。ラック。今の何?怖いよ。」


するとまた何かの鳴き声が辺りに響きわたる。


まずいなんだかわからないけどまずい!


「みんな!走って!逃げるよ!」


私は走り出す。


「おい!待てよ!」


他3人も追って走り出す。

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