第2話魔導列車→イル・カオサイニチオ
ミッド達と出会ってから3日が経った。
今まで経験をした事がない事だらけだった。
悪い意味で。
まず、路上で寝ること。
今の季節が春なのか昼間はポカポカと暖かいが夜はひんやりと冷えて若干寒いし、硬い路上に毛布無しで寝なくちゃいけないので薄い服しか着てない身としては寒くて敵わない。
ふかふかのベットとふわふわの毛布が恋しい。
次に大変なのが飲食だ。
この3日間、パン一欠片と水しか口にしていない。
パンは今までで食べてた白くて柔らかい物ではなく。
黒くて酸っぱく、固く噛みごたえがあった。
水はこの街に設置されてる噴水から飲んだ。
最初は抵抗があったものの人は不思議と飢え渇きが強くなると抵抗なんて忘れて目を瞑って飲めてしまう物だ。
次に風呂だ。
3日も風呂に入ってないので肌がベタついてムズムズする。
噴水に飛び込めたら良いがなんとなくそれはしたくない。
「来い」
ミッドが腕を振って私を呼ぶ。
さっきは悪い事ばかり述べたが良い事もある。
それは言葉を覚えたということだ。
まだ簡単なことしか覚えてないけど。
「行く」
私はそう言ってミッド達の元に向かった。
今は何をしてるのかといったら簡単な事-物拾いをしている。
何を拾っているかというと釘、木片、紙を巻いた不思議な物体-煙草というらしいそれと糞だ。
糞。
例え臭っていてもそれを糞専用袋に入れ、皮を取り扱っている店に持って行き、お金と交換する。
昔、お兄様から皮の手入れには糞を用いると聞いた事があった。
あの時は冗談だと思っていたが本当の事だったんだ。
「止まれ」
ミッドが止まれの合図を出した。
そこは人通りが多く、大きな赤煉瓦造りの建物に人が出たり入って行ったりしている。
ここはどんな場所だろう。
私はアンの服の裾を掴んで聞いてみた。
「ここ。何?」
「駅。ここは駅だよ。」
えき?えきとはいったいなんだろう?
私が不思議そうにしてるとラックが体全体を使って説明をしてくれた。
「魔導列車。沢山集まる。人々。乗り降りする。首都に行く。」
.....なんとなく分かった気がする。
魔導列車という何かが沢山集まって。
人々が乗り降りして-おそらく馬車に乗っていくんだろう。-
シュトという場所に行く場所なのだろう。
「akshejeh。jwkksjejdjjsjjdj」
ミッドが何かを言ったが私は言葉がわからないのでなんて言ったか分からなかった。
「skjdhdjdh。nanshdhdjsje。」
アンがミッドを笑いながら嗜めた。
「ミッド。夢は。首都に行く。頑張る。」
アンがミッドの夢を教えてくれた。
なるほど。ミッドの夢は首都に行く事なんだ。
「ミッド。すごい。」
私はミッドの事をすごいと褒めた。
するとミッドは照れくさそうに顔を背けた。
それからこの駅で物拾いをした。
大きな駅だが中は人が沢山おり、物拾いしてる子や端でじっとしてる薄汚い大人がおり煙草やガラス片がそれなりに落ちている。
私達が物拾いをしてると突然-
シュボオオオオオオオオオオ!
大地を震わせるような聞いた事も無い遠吠えが辺りになり響いた。
『うわあああああ!』
未知なる音に驚き腰を抜かしてしまう。
すると近くで物拾いをしていたアンが笑いながらこちらにやってくる。
『ア、アン!魔物だ!私の知らないとてつもない魔物の遠吠えが聞こえた!』
「リーティエ。大丈夫だよ。魔導列車。出発。合図。」
そう言って先程から人の往来が多い通路を指差す。
僅かにであるがそこには大きな黒光りする見慣れない太い棒が横並びに連なる車輪に付いた謎の物体があった。
その物体はしばらくすると車輪が動き出し、いくつかの大きく長い馬車を引いてどこかへ行ってしまった。
あれが魔導車。なんて恐ろしい魔物だろうか。
あれがいれば馬よりも沢山荷を運ぶ事が出来そうだ。
そう関心してるとミッドが私を注意する。
「リーティエ!働け!」
ここで止まっているわけにはいかない。
何かお金になる物を拾わないと。
物拾いを再開すると
キーン!
金属が落ちる音が足音に混じりながらも高らかに鳴り響いた。
音が鳴った方を見ると何かがこちらに向かってくる。
なんだろう?
それを拾い上げる。
硬貨だ。
硬貨は糞と鉄で出来た硬貨を交換した時に見た事がある。
だが、これは黄土色に輝いてる。
その硬貨を上に翳して眺めてると男の怒号が聞こえてきた。
「ksjdhdj!俺のsjdhdhh!」
その瞬間、駅にいたミッド達や私達のように物拾いをしていた子達や端っこにいた薄汚れた人達が一斉に私の事を見る。
背中を冷や汗がゆっくり流れていくのを感じる。
…..どうやらまずい状態になった
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