第17話 サムジドルノール

「ありがとうございました。」


お客さんがパンを買って帰っていく。

夕暮れ時の時間、私達はパンを売っている。

パンも大分売れ、残りは僅かだ。


「うーん。売れた売れた。初めてにしては好調ね。」


「そうですね。」


「本当に疲れましたよ。」


「そうだな。大変だったな。」


「んーじゃあそろそろ帰りましょうか?」


女性がそう言う。


「え?帰るの?まだ売る物残っているのに。」


ミッドが尋ねる。


「そうよ。大分日も傾いて来たし、私達は暗い中売るわけにいかないし、まぁ何事も引き際が肝心なのよ。」


「わかりました。ミッド、そう気落ちすんなよ。」


「そうだよ。ささ!片付けましょう。」


そうしてその日のパンの販売が終わった。

片付けは初めと違い、すぐに終わった。


「それじゃ帰りましょう!」


女性の号令の元行きより軽くなった二輪車を押してパン屋へと戻る。


「あなた。ただいま〜。」


「おかえり。」


パン屋につき、男性が帰りを迎えてくれた。


「大丈夫だったか?」


「大丈夫だったわよ。ちょっとパンを盗まれたけど、好調だったわ。次回はどうしましょう。」


男性の心配を他所に楽しそうにそう返す。


「なぁ、この荷物どうすんだよ!」


「あら、やだ。私たら忘れてた。こっちよ。」


そうして荷物の片付けをする。


「あのー。この用紙にサインお願いします。」


片付けがある程度住んだ頃、ラックがギルドで貰った用紙を差し出す。


「あら、これは。ちょっと待ってて。」


女性が用紙に何か書いていく。


「はい。これ。今日はお疲れ様。」


用紙を受け取る。


「それじゃ俺達も帰るか。」


私達が帰ろうとした時、


「待な、ガキ共。」


そう言って男性が私達を止める。


男性がミッドに押し付けるように紙で出来た茶色の袋を押し付けてくる。


「うちの自慢のパンを持って行きな。」


え、パンをタダで私達に?

良いのだろうか?


「あら、それてさっき焼いてたパンじゃない。」

「うるせぇ!良いから持って行きな!」


男性が照れ隠しにソッポ向く。


「ありがとうな!」

「ありがとうございます。」

「ありがとう。」

「ありがとう。」


私達はお礼を述べてパン屋を出る。


「おい!今日は焼きたてのパンを貰ったからパン祭りだな。」


「あぁ、楽しみで仕方がないよ。」


「ねぇそんな事言って忘れないでよ。私達にはやる事がまだあるんだから!」


「わかってるよ。ギルドへの報告だろ。」


「さっさと行っちまう。」


そうしてギルドに向かった。


ギルドは仕事終わりの報告に来た冒険者がたむろして賑わっていた。

私達は人の間を縫って進み受付まで来た。


「あら、終わったのね。どうだったかしら?」


「無事に終わったぜ!」


そうミッドが言い、ラックが受付の女性にサインを書いて貰った紙を渡す。


「ふむ、特に何もなかったようです。これであなた達は我々ギルドの一員となる事を認めましょう。」


わっと私達は喜びあった。


「ギルド票をあなた達に渡しますので明日、来てください。」


私達はそれぞれ返事をし、今日の報酬を貰い、ギルドを離れた。

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--------

「さてとだな。」


ここは街外れの私達が寝泊まりしてる宿のその一室。

蝋燭なき窓から指す月明かりの中、私達は茶色の紙袋とここに戻る際、買った牛乳を中心に囲んでいる。


「それでは第一回!パン祭り!」


ミッドがそう囃し立てる。

私達は盛り上げるように拍手をする。


「まずは〜これ!」


ミッドが袋の中を見ずにガサゴソと選びとる。

取り出されたのは細長い茶色のパンに4頭分にされた茶色の衣で包まれた何かを挟んだパンであった。

それを手で4頭分に割き、それぞれに配っていく。


「それじゃ、大いなる女神に感謝をいただきます。」


祈りもそうそうにそれぞれ被りついていく。


私も小さいそれを半分程齧り付く。パンは少し柔らかく軽い歯応えがあった。

パンは噛んでいく事に少しの甘さが口に広がっていく。

パンに挟んであったのはこれは前に王都で食べた事がある。

そう魚という生き物の肉だ。

淡白な味わいに身がすぐにほぐれてしまう。

あぁ、美味しい。

今まで食べてきたパンとも違う。

忘れていた。肉のコッテリ感。油ぎっしゅ感が疲労を忘れさせ、故郷を思い出させる。あぁ、もう一度美味い。

もっと食べたくなるような旨味だ。

私は二口でそのパンを食べてしまった。


「ねぇ!次、次!これだけじゃ足りないよ!」


アンが次をせがむ。見ると皆まだ食べたいと顔に、表情に出てる。


「おう!次行くぞ!」


次のパンを紙袋から取り出す。

それは月明かりに照らされながら現れた。

白色と赤色が混ぜ込んだまだらな表面だ。


「ピザだ!」


アンがそう言葉を漏らす。

ピザ?ピザとはなんだ?

私は4頭分されたそれを更に千切れそうだった為、千切、口に入れる。

濃い独特な筆舌し難い旨味に酸味が口に広がる。

美味い。

世の中にはこんな美味い物があったのかと驚く。


「なぁこれだけじゃ足りないぞ。もっと食べよう。」


「あぁ、そうだな。食べよう食べよう。」


こうして紙袋の中を全部食べ切るまで宴は続いた。

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