第33話 その場所は

じゃらじゃらと音が響く。

私が身を動かす度に金属の擦れる音がする。


「うぅ、」


私は朧げながらも霞がかかったような意識の中、目を覚ます。


ここはどこだ?


私は意識を取り戻しつつ付近を見回す。

辺りは真っ暗でまだ目が暗闇に慣れてないのか何も分からない。

なら自分の状態はと手を動かそうとするがそこで気がついた。

私の両腕の手首は何か金属の拘束具で拘束された状態で頭の上で拘束されている。

なんとか動かせないかと腕を動かすが金属音がじゃらじゃらとするだけで移動出来ないようだ。


「助けてー!助けてー!」


私は繰り返し助けを求めた。

喉がガサガサになるまで叫ぶも誰も反応せず、もう一度叫んだ時に、


「うるせーぞ!ゴラァ!」


少し離れた所が開き、何か小さな光源を持って、こちらに近づいてくる。

その人物は私に近づくと姿が見えた。

ランタンに照らされて現れた。

その人物はガタイがいい男性であった。

その人物はランタンを地面に置くと、


バチン!


頰を張り手で殴られた。

なんで、なんで殴られたのだろう。

私はヒリヒリする頰を堪えながら男に視線を向ける。

また頰を叩かれる。

髪を捕まれ私の顔を男に強制的に向かせられ、何度も、何度も頬を叩かれる。

私は痛みのあまり涙が漏れ、歯が何故かガクガクとしてしまう。


「ふん!」


髪を離され、じゃらじゃらと音を立てながら倒れる。


「もううるさくすんじゃねぇぞ!」


男はランタンを持って離れ、音を立てながら扉を閉める。

なんで?なんでこんな目に?

私は涙を流しながら解決しない疑問を浮かべながら考えてるとまた同じ所が開き、同じ男が何かを持ってこちらへと近づいてくる。


「ひぃ!ひぃ!」


私は体を引きづりながら壁にもたれ掛かる。


「ほら。食え。」


男は側にお盆を置く。

私はおずおずとお盆へと近づいていく。

お盆には深皿に麦をただ煮込んだだけの粥とコップに一杯の透明な水が入った物が置かれてるだけだ。


「ねぇ。腕。縛る。食べる。出来ない。」


私は自分の現状を訴える。


男は深いため息をする。

そして私に近づき、頭を掴み深皿へと顔を突っ込ませる。


「ほら!お前にスプーンは勿体無いんだよ!ほら喋る口があるんならさっさと食え!」


顔を深皿から離される。

私は咳き込み、体を引きづりながら深皿の粥を食べる。

少しの熱を感じながら顔が汚しながら粥を貪り食う。


「ほら、さっさと飲め。」


男がコップを掴み私の口へと流しこまれた。

男はお盆を持って出て行った。


『なんで』


なんで私がこんな目に合わなくちゃいけないの。

いきなりこんな所に連れて来られて拘束され、頰を何度も叩かれ、食事も張って動物のように食べさせられて!

なんでこんな目に合わなくちゃいけないんだ!

絶対こんな所を出て行ってやる!


まずはこの枷を外さないと。

私は立ち上がり枷を見る。

枷はよく見えないが黒く頑丈な作りになっている。


『灯よ-レジェロ-』


私の手の平から小さな光が現れ、枷を照らす。

枷には鍵穴があった。

これなら。


『開け-アプリーレ-』


鍵が開き、枷が外れた。

今まで拘束されていた手首を摩りながら周りを見渡す。

どこに閉じ込められていたのだろう。

辺りを見回すも暗闇に包まれ、何も見えない。

音を立てないようにそっと部屋を探索する。

見覚えのある少し傾斜が着いた床。

見覚えのある積まれた木箱。

階段の上に設けられた扉。

そして見覚えのある穴。だが鉄の格子を付けられており、前回と同じように穴から出て行けれなさそう。

それよりここは最初に閉じ込められてた所か。

どうしようか?扉は鍵穴が着いていて私でも開けられそうだ。

でも外の様子が分からない。

もし男が見張っていたらバッタリと出くわす可能性もある。

となると。

こうするしかないか。

音を立てないようにそっと枷の方に戻る。

スーと息を吸い込み叫ぶ。


「助けて!助けて!」


私は音を立てないように素早く扉の階段の側に潜む。

扉を観察しながらしばらく待つ。


扉は開きそうにない。

ならもう一度叫んで。

そう考えた時、扉の鍵が開く音がした。


「うるせぇ!ガキ!」


そう怒鳴る声が部屋に響き、男が部屋の中に入っていく。

来た。

男はランタンで階段を照らしながら一歩一歩降りていく。

男が階段を降りきった瞬間に背後から体当たりするように飛び掛かる。

部屋にはランタンの割れる音が響く。

私は倒れた男の口を手で塞ぎ、足で首を締める。

男は必死に暴れるも私も負けじと首を締める。

男が暴れるのをやめ、体から力が抜けるのを確認すると足を離し、急いで階段を駆け上りそこから部屋を出てそっと扉を閉める。


辺りを見渡すとそこはT字状の廊下になっており、窓から廊下の先の窓からどんよりとして空が見えた。

私はそっと足音を立てないように歩いて角の所に張り付いた。

慎重に左右を見、誰もいない事を確認して移動する。

どこの建物だろう?

時折、窓の外を確認するも建物を囲うように壁が築かれている。

その時、廊下の奥の曲がり角から足音が聞こえて来た。

まずい。私は近くの部屋へ入る。

部屋の中を見ると酷い。

まず、部屋の中を満たすマナが肌が騒つくような嫌な澱みを感じる。

吐きそうだ。それを堪え、部屋を見ていく。

部屋は中心部を囲うように見慣れない道具や箱が置かれており、その中心部は何か初めて見る魔法陣が床に描かれている。

この魔法陣から吐きそうになる淀んだマナが感じる。

もうダメだ。ここにいたらおかしくなりそう。

私は扉をそっと開けて周りを確認。

誰もいない事を確認して一心不乱に廊下を走る。

廊下の先の曲がり角を曲がった先に扉を開き、潜る。

そこは一度来た事がある長い座椅子。

そして女神像。

ここはまさか!

私は建物を出て振り返る。

ここは救貧院だ。

私はその場を急いで離れる。

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