外話i話 イル ディアボロ オーディエ ブルティエ フィナーリ
..光臨歴--年
「はい起きてぇ!ここで寝たら話が進まないでしょう!起きてぇ!」
その声に目を覚ます。
あれ?僕は一体何を?
目を開けて前を見る。
どうやら大きな建物の中の大きな一室であるようだ。
階段状の場所にたくさんの椅子がいくつかの列に並べられて全てこちらに向けられている。
1番上の方から見つめる事が出来ない。まるで太陽のような輝きがこちらを照らしている。
「ちょっとどこ見てるの!こっち!こっち!」
その声につられて下の方を見る。
声の主は顔は不健康そうな白い肌に貴族が付けるパーティ等で男性が着るような華美ではないが清潔感のある黒い服を着て椅子に深く腰掛けるように座っていた。
気付いた。いや気付いてしまった。
僕は地に足を付けてない。
前にいる男性の方に走るが一向に進まない。
後ろを振り返ると
「あー、めんどーくさい」
パァン!
.....あれ?僕はいったい何を?
「はいは−い!大事な話をするから一旦落ち着こう!まず初めにお茶でも飲んで落ち着こーよ!」
ふいに右手にぬくもりと不思議な柔らかい感触がした。
いつの間にかなにか飲み物が入った円柱状のコップが握られていた。
コップは触った感覚からして滑らかな紙で出来てるようだ。
匂いは…どうやら茶のようだが、飲めるのか?
男の方を見ると何かを期待するようにずっとこちらを見ている。
恐る恐る茶を飲んでみる。
…うん。茶である。だが、いつも飲んでる物と違い不味くはないのだがあまり美味しくない微妙な物だ。
「さてと。落ち着いた所で自己紹介をしよう。私はそーだな?そう!編集者とでも呼んでくれ。」
ヘンシュウシャ?聞き覚えがない単語だ。
それはそうとして相手が名乗ったからにはこちらも名乗らなくては。
「僕の名前はノエル・ス-」
「もちろん知ってるよー!君の名前はノエル・スーキ・ディリージュ!聖王国次期総主教にして次期国王!許嫁と愛し合い、良き指導者になろうと日々様々な事に努めながら幸せな日々を送っていた。」
自己紹介をしようとしたら遮られた。彼は楽しそうに話続ける。
「そんなある日隣国の長い事、睨み合ってた皇国が侵攻してきた。必死に抗戦したが結局許嫁を目の前で殺され、君も許嫁を殺した灰色の女性に殺された。」
先ほどの事を言われ、拳に力が入る。
「ここで訪ねます。あなたはこんな終わり方で良いのですか?」
目を閉じて自分のこれまでを思い出す。僕を慕ってくれた皆、守らなくてはならなかった民、そして素敵な笑顔を浮かべるベアト。
そんなの決まってる。
「良いわけないだろ!僕は守らければいけなかった!みんなを!民を!ベアト!笑顔にあふれていたあの日を!だから僕は!僕は・・」
だが、守れなかった。力の限り抗ったがダメだった。
無力感に膝の力が抜ける。
「クソ!クソ!クソ!」
悔しくて涙が膝を濡らす。
「一つ契約をしませんか?」
その真剣な声に顔を上げる。
「それだけ悔しいと思うならやり直せたらと思いませんか?あの時ああやれば良かったと思いませんでしたか?」
「それは・・」
それは何度も思った。
「私ならそれが出来ます。」
出来るのか?僕はただ見つめる。
「えぇ出来ますよ。」
「なら」
「ただし、支払ってもらう物は当然あります。」
その言葉に話を止めた。
「対価として死んだらあなたの魂は私の物になります。」
その言葉に息を飲んだ。ただでそんな事はしないだろと思っていたが魂を要求するとは思いもよらなかった。
これではまるで
そこで彼の正体に気づいた。
この異常な数々。そして魂を要求する。
まるで-
「悪魔」
「えぇ、そうですよ。」
彼は紙のコップに刺してある細い管で飲み物を飲む。
「私は悪魔です。それは事実です。でも悪魔だからこそ貴方を助ける事が出来る。」
そう言って脚を組む。
「神は一度決まった歴史は絶対に変えないだろう。だが、私は違う。私は変える事が出来る。」
彼は組んだ手を膝に乗せる。
「私はねぇ。君の事が好きだよ。」
...いきなり告白された。
「おっと、別に愛してるという意味ではないですよ。尊敬の方ですよ。自分の幸せを守る為、例え不利だと知っていても足掻き、逆境に挑み!勇敢に立ち向かうさまはなんと素晴らしい!」
ここまで褒められるとなんて答えたら良いのか困る。
「大好きな君を助けたい。だが悪魔にも守らなくてはいけないルールがある。万物に干渉するにはそれ相応の物が必要だ。」
彼はそう言って椅子から立ち上がる。
「人生は一度きり。それなら納得のいく終わらせ方をするべきだ。」
そう言って仰々しく手を差し出す。
「やり直しましょう。あなたならきっと出来る。」
納得のいく終わらせ方か。
あぁ、あの終わり方は認めない。認められない。
「わかった。魂を持っていってくれ!その代わりチャンスを!僕に全てを変えるチャンスを!」
彼は微笑んで椅子に腰掛けた。
「わかりました。これにて契約は成立。次こそは良い人生を過ごせるよう願ってますよ。それでは。」
そう言って彼は指を鳴らす。
部屋に法螺貝のような音が鳴り響き。こちらをずっと照らしていた光がより明るくなる。
「うぅ..」
僕は眩しくなり、目を瞑る。
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