第2話 日々の生活

日々の生活


そして今俺たちはこの廃棄された惑星でいつものように過去のテクノロジーを形作っていた部品を探しながら暮らしている。


(ギョヒーギョヒー)


強化ロボットに乗って幼馴染のエージが現れた。

古いせいか油が切れているのかエージのロボットは動くたびに独特な音がする。


「おいまだそんなとこでちんたら探してんのか?」

「しかたないだろ、許可が下りないんだから」

「まあ底辺にはそこがお似合いか」

「うるせーお前だってたまたまだろ!」


そうたまたまエージが採掘場で不思議な器械を見つけたのだ、それは昔のタブレット。

すでに壊れていたが、中の部品はかなり貴重なものだった、普通なら粉々になって使えないだけじゃなく中の部品も溶けてしまっていることの方が多い。

それが完全な形で見つけられたのだから、そしてパーツを売り得たお金で彼は採掘用の強化ロボットを手に入れた。

そのロボットはこの時代では珍しくもない機械だが操縦するには気功パワーを使用する。

操縦室に乗り込みハッチを閉めてあとは思ったように動かすだけ、操縦画面などは自分の脳内に表示されるのでまるっきりヴァーチャルで操っている感じになる。

そして採掘場は許可制、手探りで探せる場所は限られていて、それ以上は危険なためロボットを使用しないと許可が下りない。

当然のことながら機械を使えばよりたくさんの遺物(ゴミ)を採掘できるし、運ぶこともできる。

エージが操るロボットの背中には遺物を収容するため大きなコンテナが取り付けられていた。


「また10番採掘場か?」

「ああ他は取りつくしたからな」


10番ということはその手前に9番まである、そしてその9番採掘場で俺はちまちまと少ないお宝を探している。

一区画は約5k四方で昔の道路の区画らしい、網の目のように規則正しく道により分けられている、もちろん11番もあるし12番もある。

今のところロボットを使用しての採掘も10番採掘場までが許可されている。

ではなぜ10番までなのかいうとそこから先はいまだに各種の防衛システムが生きているから、そう機械がまだ死んでいない。

過去の遺物である遺跡群にはトラップがいっぱい仕掛けられており、場合によってはガーディアンまでいたりする。

要はそれらを退治もしくは無効化しなければその先は危険で採掘できないということなのだ。

昔のような大量生産大量消費で作られた品物はこの時代手に入れることはできない、エージの乗るロボットも見てくれはつぎはぎだらけ、偉そうにしているが今のおれにはぼろ布を纏った作業員にしか見えない。


「あ~そうだ、さ来週は合同誕生パーティーだからお前も出るんだろ」

「ああもちろん」

「じゃあ俺は先に行くから、またな」


さ来週は俺たちが所属していた孤児院の合同誕生パーティー、俺もエージも同じ孤児院出身だ。

この星はそういうやつが多い、子供の半分は戦争による難民だ。

食物もそれほどとれるわけではなく、開拓しまくったせいで人が住む場所も少ないが。

どこかの星で戦争が起こると、我が子を逃がすためコールドスリープのカプセルに入れ脱出艇や輸送船で廃棄惑星へと逃がす親は多い。

だから名前もちゃんと最初からあるし自分がどの星から逃れてきたのかもわかっている。

ただし両親が今どこにいて生きているか死んでいるかというのは分からない。

今俺たちがいるシェルターには総勢35人という孤児がいる、5年前はこの星だけで5か所の孤児院があった、5年間の訓練期間を終えて俺たちは各シェルターへ送りこまれて来た。

まあBIWのおかげで学校がないのは楽だけどね、勉強する必要がないのだから学校も必要ない。

だが知識と経験は別、その代わり孤児たちは争うことなくすくすくと育っているのだが、それもあと数日でまるっきり変わってしまうとは思ってもみなかった。


俺は朝8時にシェルターを出て、歩いて採掘場へ向かい手作業でガラクタを集め、昼休みを1時間取り午後4時間また採掘というごみ集め。

日が陰るとこの星の気温は一気に下がるため午後5時にはシェルターに戻っていないと体が氷り付き数分で死んでしまう。

だから4時には帰り支度を始めるのだ、そうしないと20k近くある道のりは帰ってくるのに1時間は確実にかかる。

脳内ビーアイのホロウ画面に表示されたハートマークが点滅を始める。


「もう終わりかな…帰るか…」


廃棄物採掘場からシェルターまでは約20k、歩いていると間に合わない。

重力が通常の0.9倍のためBIW気功システムを利用すればスピードは結構アップする。

ロボットに乗ればもっと早いのだが俺は自分の足で走ることしか手段がない。

だが最近おかしな夢を見る、それは行ったこともない場所へ瞬間で移動する夢だ。

BIW(ビーアイ)で記憶や情報が多くなったため、多分昨夜の夢はその副作用だろう、瞬間移動なんてできるはずがない。

4時に採掘場を出てシェルターには40分後に戻ってきた。


「はあはあ・」

「シュウ早いじゃない?」

「そうかな?」

「みんなまだ戻ってきていないわよ」


話しているのはこのシェルターに住んでいる幼馴染のリーザ、彼女はいつも早めに戻ってくる。

彼女はバイオトープ(植物生産農場)の世話を任されていて、最近は仕事もかなり早くなったと言う話。

このシェルターのバイオトープは20k先にあり採掘場とは反対側の山の尾根に作られている。

山の尾根はこの星では植物の生育に必要な光星の光が多く当たる場所であり、そこには70カ所の植物系生産施設が並んでいる。

もちろんすべて機械で制御しているが、収穫や点検の操作などは手作業だったりする。

彼女らは朝農場へ行くとまずは収穫、午後は点検という具合で作業するのだ。

なんとなく俺ら男子のごみ拾いと比べるとずるいような気がしないでもないが、まあ個々の能力にもよるので、狡いなどと思うことはあまりない。

それに採掘場でならお宝を見つければかなりおいしい思いができる、ロボットを手に入れたりシェルターの部屋も個室が使えたり、そう考えると男の子はどうしてもこちら側になりがちだ。

だが俺はいまだに相部屋だったりしてプライバシーがあまりない状態。

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