第35話 瓦礫の山
瓦礫の山
既に動ける機体は無く、一瞬の静寂が訪れるが、そこへ最後の一撃。
勿論その攻撃は心臓部ではなく手足を切断する一撃だ、たまらず魔族は悲鳴を上げる。
「やめ~!」
「はいこれで終わり」
「ザシュ!」
「ズズン」
いつの間にかシェルターの前にはシュウの機体以外壊れていない機体はなくなっていた。
シュウは機体を降りるとすぐにシェルター内へと入って行く。
「とまれ!」
「貴様はだれだ?」
「ここの作業員ですが?」
「何だあの強さは?」
「え?聞いてないんですか」
「何のことだ?」
「気功術のファイルですよ」
「キコー術?」
「ああ~隊長、どこかであのファイルロストしたか、隠されちゃったみたいですね」
「ああそのようだな」
「それじゃ隷属魔法掛けちゃいますね」
「お前たち何を言っている!」中尉
「やってくれ…」コッド
「かの者の心をわが手に、心意掌握!」
勿論一緒に来ていた他の兵隊達にも同じ魔法を掛ける。
コッドの合図でほかの兵士を取り囲み押さえつける、気功防御と気功強化で底上げされた彼らには普通の兵士では敵うはずがなかった。
「女王様大丈夫でしたか?」
「騎士様ありがとうございます、このご恩は一生忘れません」
「な…何 言ってるんですか!」
「てへっ」
こんな時なのに女王はニコニコと微笑みながら冗談を言ってくる、こちらは結構必死だったと言うのに。
女王の腕にはめられた手錠を外すと、共和国軍の兵士にはご帰還願ったが、仕事はまだ残っている。
「女王様、もうひと仕事してくるのでもう少し待っていてください」
「シュウあまりやりすぎるなよ」コッド
「隊長、それは相手次第ですよ」
シェルターから出るとすぐに転移魔法で愛機の近くへ移動し、乗り込むと1k先の戦場へと向かい走り出す、シュウはすでにこの機体を200%の親和性をもって扱っていた。
まるで機体自体が自分の体のように。
勿論他のドライバーもシュウに引けを取らないほどの操縦親和性を示していた。
【エージやるじゃない】
【シドねえも、そんなにうまいとは思わなかったよ】
先日までシドニーの乗る機体の下部操縦席にはエージが乗っていた。
この機体は下でも上でも機体の操縦ができるが、今はシドニーが操縦を変わっているようだ。
もしかしたら姫様は逃げることばかりで飽きてしまったのかもしれない。
【エージ、皆ありがとう、向こうは終わったから、これから獣機を殲滅しよう!】シュウ
【待ってました】トラッド
【じゃおれは戦車叩いてくるよ】サーベン
【じゃあやるか!】エージ
それからはあっという間だった、気功術で強化された機体が獣機より俊敏に動き出す。
魔族側が投入した残りの15機そして戦車タイプ5機が、たった4機にあっという間に秒殺されていく。
「ガンッ!」
「バキッ!」
「チャイーン!」
「キンッ!」
「ガンッ!」
「バキヤッ!」
強化されたシュウたちの機体にはいくら噛みついて爪を立ててひっかいても全然傷さえもつかない。
なのにシュウたちが手に持つ電動ブレードが振るわれる数だけ魔族の機体はどんどん切り刻まれていく。
そしてその中でも動きのよかった獣機だけが最後に取り残された。
「こんな…」魔族兵
「ありえん」将軍
「あんた司令官だろ、話さないか?」シュウ
「いいだろう」
双方の機体から搭乗者が降りるとそのまま2人は近寄っていく。
「なんだ、まだ子供か?」
「子供じゃ悪いか?」
「いや俺も年を取ったと思ってな」
「なんだ魔族の司令官っていうからもっとずるがしこいのかと思ったよ」
「それだったらこんな辺境の作戦など来やしないだろう」
「ああ確かに」
「この状況、もしかしたら共和国側も同じか?」
「ああ 王族2人の捕縛は諦めてもらったよ」
「お前魔法を使えるのか?」
「さすが魔族の司令官だな」
「だてに20年も将軍職をしてはいない」
「しょ しょうぐん!」
「話は分かったこちらもこれで引き返す、だが教えてくれどうして今まで負けることがなかった魔族の軍がお前たちのような子供に負けたのか?」
「それはね、あなたたちが人族をなめすぎたからなのよ」女王
「女王!」
いつの間にか戦いの現場まで女王が歩いてきていた。
「私はここの星の人たちにロストマジックを解放しました、遅かれ早かれこの情報は人族間で共有されるでしょう、もちろんあなたたちも手に入れることができるわ」
「私は本国の命で来ただけだ、あなたを殺すか捉えろと」
「それは惑星ビュリアのガリアナ魔王国ではなくサタルニア帝国からの命令ね」
「そうだ」
「あなた方はいいように操られたのね、確かに魔族の国同士連携するのは当たり前だと思うけど、ちゃんと真意を確かめずに協力しても敵を増やすだけよ」
「帝国がだまされたというのか?」
「だから星間和平調印の情報を持つ私たちを逃がしたくなかったのでしょう、たぶん帝国の軍部はガリアナ魔王国の暗部に操られているわ」
「だが私はこのまま戻っても職を追われるだけだ」
「大丈夫よすでにアルフレア王国はお友達が解放したから」
「何だとそんな話聞いてないぞ!」
「あなたには伝えなかったのかもしれないわね」
「そうか俺も捨て駒だったというわけか」
「そうだあなたにもあげるわ魔法の情報」
「女王様!」
「大丈夫よ彼はそこまで悪い方ではないわ」
そういうと将軍に近づき彼の頭を両手で押さえ目を瞑る。
「おっおお~~」
「どう?」
「こ こんなことが…」
「まさか、あいつが関わっていたとは、道理で無理やり俺のところに命令が来たわけだ」
「ああそれでか、ロストマジック、気功術そして魔法の数々、そうかそうか、我々でさえこのデータは持っていない、当然上層部はこれらのことを隠しているってことだな」
「真実を知るための魔法を得たいなら修行が必要よ、でもそのためには魔族を捨てなければならなくなるかもしれないわ」
「いやもう俺はあの国にはいられない、だがそれは最後の仕事を終わらせてからだ。」
「そう?では私から一言」
「勇敢なる戦士に神のご加護を」
「かたじけない」
その言葉を残し魔族の将軍は獣機に乗ると魔族達に撤退の命令をし、そのまま引き返していった。
「女王様、良かったのですか?」
「彼が今回確かめたかったのは、なぜ負けたのかということそしてなぜ王族2名を殺さなければならないのか?の2つよ」
「彼はれっきとしたサタルニア帝国の将軍よ、それがこんな辺境まで私たちを追ってくるなんて、命令の出方もおかしいと思うわ、彼も感じていたんじゃない?」
「秘密の情報を渡してよかったのですか?」
「大丈夫よ彼に渡したデータは気功術の一部と私の国と隣のガリアナ魔王国との間であった紛争の情報よ、かかわった魔族や人族側の情報もね、しかも映像付きで、うふふ」
「それでは魔族も気功術を覚えてしまうのでは?」
「それは心配いらないわ、もともと魔法から始まったのよ気功術はね、でも攻撃性のある魔法ばかり重んじたために現在の魔術は基礎が抜けているのよ」
「基礎が抜けている?」
「そう基礎が気功術、気功術を取り入れ基礎を補完すると守りの性能は上がるけど、リミッターが追加されるわ」
「ああ、悪いことをすると力を失うというデバフですね」
「普通の魔法のみを使用するなら基礎魔法はいらないわ、その代わり威力はそれ程上がらないけどね」
「彼がもし拘束されて頭の中の情報を削除されたとしても、彼はもともと知らなかったことなので問題ないし、気功術のデータを悪用しようとしても、あれは悪人には利用できないのよね」
「話は変わりますが女王様、この後はどうするんです?」
「え~と、どうしましょう?」
アルフレア王国の女王オシアナ・オースティン・アルフレア、彼女は少し天然の様なそぶりを見せることもあったが、沢山の知識を持ちもちろん外見は美しく、そして国民の絶大なる信頼のもとに数百年女王の座についていたと、後の歴史にはそう記されていた。
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