第16話 魔法の力
魔法の力
俺が協力してもどうしようもないと思うのだが、彼女は別な方法があるので協力してほしいとのことだった。
「それでどうすればいいんです?」
「まずは倉庫まで行きましょう」
「いいんですか彼女、嫌がるんじゃ…」
「もう一度見てしまったのでしょ?」
「はあ…」
「あなたならたぶん大丈夫よ」
何が大丈夫なのかは分からないが、母親公認なら遠慮することもない、いやそれはそれでまずい気がしてくる。
一応目をつぶって何とかなだめるしかないか…。
「私たち2人にしてもらえるかしら」
「わかったわ、済んだら知らせてね」
「ありがとう」
交代でポッドを見ていたナーダさんに断りを入れ女王と2人でポッドの側へと移動する。
倉庫のドアを開け中に入ると奥の一角に2つのカプセルが並んで置かれていた。
一つはすでに止まっているがもう一つは装置のランプが灯っている。
「よし、二人きりになったわね」
「え…え…何?」
「シュウ君そういうことしに来たんじゃないのよ」
(もう~かわいいんだから)
「あ はい」顔が一気に熱くなる
「頼みというのはね…」
昨日のことも有り、俺は少し舞い上がっていたのだが、どうやらオシアナさんに又心を読まれてしまったようだ。
だが、そんな俺の考えをよそに彼女から突拍子もない話を聞かされることに。
昨日女王から渡されたデータ、その内訳は過去3万年にも及ぶ歴史や文献のデータだった、その中には今では失われた歴史的情報がかなりあった。
脳内を拡張されたこの時代の人たちは5歳になるとBIW(ブレーンイメージライター)という機械を使い一般常識や算術などの基礎学習を瞬時に取得することができる。
それは並列に人の脳みそ同士を繋げるのと同じことなのだが通常それぞれの脳は普段は別々に行動している。
彼女の提案はその脳をリンクさせキコー力を倍化させ魔法を発動させようということ。
脳のストレージは何も一つという形ではなく数万とも数億とも言われたコアに分けることができる、コアは一つずつ別な働きをつかさどる、データの入れ物であったり他者との通信で使ったりという具合。
だが王女と俺のキコー力をリンクし倍化するには、魔法を3つ使用しなければならないという。
それにはまず、昨日もらった情報の中にある、ある男の記憶を取り出す。
その男の名はヒデキミスイ、苗字がなぜか俺と同じなのでもしかしたらかなり前の親族かもしれない。
そして俺は言われた通りその記憶の箱を開ける。
「どう?」
「何ですかこれ、こんなことって…」
「昔その叔父さんにもらったのがこのデータよ、でも私には開けられない箱があったの、箱の名前は分かっているのに開かないなんてそんなこと今まで無かったのに…」
「少し静かに、今はこの中を確認しています」
「あ ごめんなさい…」
「完全回復魔法、パーフェクトヒーリング、上級魔法、レベル10以上必要」
「レベル10!」
「安全マージンを考えるとレベル12は必要みたいですね、今魔法のデータを取り出します」
「わかったわ」
「取り出しましたけど…この魔法は直に触れていないと効果が出にくいみたいですよ」
「蓋を開けると腐敗が始まる、それに麻酔も切れてしまうわ」
「では空間に保全魔法を使用しましょう、そのデータもありました」
「あと魔法力を高める魔法と魔法使用量の半減魔法ですね」
俺はそう言うと俺と王女に魔法をかける、今まで魔法などと言う物の存在ですら知らなかったのだが。
脳内ストレージにあった親族のデータにはそれら魔法のデータが数100以上含まれていたのだ、そしてその使い方までしっかり記してあった。
「我が力の助けとなれ、マジックブースト」
「数の理を読み解き魔力の流れを改めよ、マジカルアシストダプルリデュース」
「大いなる神の御心をここに、パーフェクトワールド」
「これでいいはずです」
「ほんとに?」
「ええ親族の、ヒデキミスイの考えが僕の中に流れてきます、大丈夫だと」
「わかったわ、それじゃカプセルを開けるわよ」
「はい!」
カプセルの中には両足と片腕を失い、本来ならば死んでいてもおかしくない少女の痛々しい姿が目に映る。
彼女は今眠っているのか、最初に会った時とはかなり違う。
四肢の欠損は昨日より1センチほど回復しているがこのままでは1年以上かかってしまい、共和国軍のレスキュー部隊が来たとして果たして直すことなど出来るのか。
それともう一つの問題があった、そう機械の故障でさらなるキコー力を追加できない場合。
最終的には動作が止まってしまうのだ。
現在はこのポッドと彼女に残されたキコーエネルギーを使用しているだけで、そのエネルギーが底を尽けば彼女は助からないという。
開けられたカプセルから、少女の香りが立ち上る、思わず吸い込んでしまったシュウはなぜか彼女の体が今どんな状態にあるのかがわかってしまった。
クリスティ・オースティン・アルフレア
16歳
女性
アルフレア王国第一王女
種族 人族と精霊族とエルフのクォーター、別名ハイランドエルフ
犯罪係数 0 ブルー
魔法熟練度 166/200級
剣術 85/100級
小剣術 64/100級
槍術 54/100級
弓術 87/100級
体術 87/100級
HP 100/700 ヒットポイント(体力)
MP 110/1000 ミッションポイント(マジックポイント)
SPD 89/100 スピード(足の速さ)
AGI 56/100 素早さ(敏捷度)
AT 77/100 アタック(攻撃力)
MAT 113/200 マジックアタック(魔法攻撃力)
DF 75/100 ディフェンス(防御力)
MDF 122/200 マジックディフェンス(魔法防御力)
FA 84/100 フィンガーアクション(器用さ)
IT 76/100 インテリジェンス(脳力、頭の良さ)
魔法※火1水2土2風1聖3光3闇1無2
状態:両足・片腕欠損 顔面の皮膚40%欠損 生命維持装置使用中 睡眠状態
※現在の悩み もうお嫁にいけないわ なんで男の子に! 早く死にたい!
シュウの頭脳には3万年のデータが女王からプレゼントされたが、その中には魔法のデータとは別にスキルというデータも含まれていた、スキルは誰でも一つは持っているものだが、箱の中にあったヒデキミスイのデータにあるスキルはとんでもなかった。
だが、それがなぜシュウに使えるのか?
それはシュウが彼の子孫だったからに他ならない、このデータ実はヒデキが自分の子孫に残したものだった。
望むものがそれを行使するとき、親和性の高いデータは同化し遺伝子による同調が始まる。
女王はたぶんそれを知っていたのかもしれない。
2人は眠っている少女の体に手を触れ、顔を見合わせるとシュウが呪文を唱える。
「森羅万象 神の力をここに、パーフェクトレストア」
女王の手を取り自分のキコー力と彼女のキコー力を合わせて神の御業を呼び覚ます。
目の前に眠る少女が淡く光りだし見る見るうちに、今まで無かったはずの足や腕がどんどん復活していく。
顔に残ったあざや欠損していた耳も髪の毛も、どんどん元通りに戻っていく。
それはまるで時間を巻き戻したかの様。
「す すご!」
思わず自分のしたことに驚いたが、隣りで成り行きを見ていた女王も同じだった。
「やった!やったわ!」
女王は嬉しさのあまり俺を思いっきり抱きしめた。
(むぎゅ~)
(お おっふ!)
「女王…くるしい…」
その柔らかなふくらみをゆっくり体感したかったが、息ができなくなり背中を数回たたく。
「ヘルプ!」
「あら いけない」
「ぷは~~」
「ご ごめんなさい…」
「いえもう少し優しくしていただけたら…」
(なんてことを…恐れ多い)
つい口から出てしまった本音が、それを聞いて女王も顔を赤くしている。
「あなたたち、何をしているの!」
「えっ!」
「キャー@;:;@¥」
目を覚ました王女の前に抱き合う母と昨日見たことがある男子、その光景を本来は不思議に思うだけだが、ふと自分が裸だったことに気が付き、超音波よろしく裸の少女は叫ぶ。
当然、他の部屋にいた仲間が倉庫に駆け付けえらいことに。
「も~勘弁してくださいよ~」
「エイリアンかと思いましたよ~」
数人の仲間が駆け付けドアを開けると目の前に裸の王女、さらに叫ばれその声は地下4階まで響いた。
急遽とりあえず倉庫からサイズの合う作業着を見つけ彼女に着てもらう。
「どう?きついところはない?」
「はい大丈夫です、ありがと~」
「おいあれカプセルの中の?」
「そうだよ」
「か かわいい~」
「そう だね…」
実はその後がとんでもなかった、その時の話を書いておこう。
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