第15話 戦闘は思ってもみない方向へ

戦闘は思ってもみない方向へ


そのごつい機体の外部スピーカーから女性の声で優しくなだめられた記憶がある、ボイスチェンジャーで、あのダミ声が女性の声に代わるだけで泣き止むとは思わなかった。

後で中から出てくる隊長の姿を見たときすごいショックで落ち込んだのも俺の記憶の中に残っている。

まあ隊長の声でなだめられたら倍以上の子供が泣き始めただろう。

この10年間あの機体は壊れることなく前を走り続けている。


「よーし、ここから11地区だ、ゆっくり進むから気を付けろ」


作戦は簡単だが、ガーディアンは地区によって1機から3機、たまに配置されていない場合もある。

ほとんどが防御タイプでエージのロボットのように運搬用としても使えるタイプの場合が多い。

勿論、今回の地区はガーディアンが配置されていることは確認済み。


「ここのガーディアンは1機のはず」

「出た!」

「よし左右に散開、挟み込むぞ」

「了解」


コッドのロボットが土煙を上げ突進して行く、いつものやり方だ、少し強引だがタックルをかませて突き倒し抑え込んで安全レバーを引き機体を停止させる。

コッドの少し後ろを散開した4機が続く、俺は左側の端をエージが右側の端を進む。

タイヤモジュールのない俺は普通の人のように、足を交互に出し走らなければならない分少し出遅れる。

それが良かったのか悪かったのか…


「ドンッ!」

「なんだ?」


右側から2機目のガーディアンが出現、そしてその衝撃でエージが吹き飛ぶ。


「グアッ!」

「エージ!」

「1機目は片付けた2機目を囲め!」コッド

「了解」


土埃が薄れてくるとそこには通常の機体の倍はありそうな戦闘タイプのガーディアンが現れる。


「オイオイ何だ、このガーディアンは…」

「うかつに手を出すな!」コッド


そう言われた時にはすでに遅かった、エージが吹き飛ばされて伸びている間に俺とトラッド、そしてクイントの乗る強化ロボットで取り囲むが、後ろへ回ったクイントが背後からデカブツに手を出した。


「大丈夫だ、いける!」


ちょっとした隙だった、後ろだからと安心しきっていたクイント、デカブツからまさか火炎が出てくるとは思わなかった。

後で分かったことだがこのデカブツはクーデターや暴動制圧で使用する為、脚部の左右に火炎放射装置と消火用の泡を積んでいる、しかも足が4つあるタイプ。

火炎放射を浴びてクイントは火だるまに。


「何だ、こいつ!熱い~~」


火炎放射を浴びてすぐに下がったが腕や足の連結部分を焼かれクイントは20メートル後退して停止した、火炎を浴びた両足脚部の油圧ラインが溶けてしまった。


「くそっ!」

「火炎放射は右足の付け根にあるぞ!」

「わかった後は任せろ」


武器の位置さえわかればそこだけ避ければ良いが、なんせ相手はでかすぎる。


「シュウ! 俺が正面からアタックをかけるから後ろの死角からなんとかしてくれ!」トラッド

「わかったやってみる」


デカブツの手にはハサミのようなモジュールが取り付けてあり、障害物を撤去しやすくなっているようだ。

トラッドはそこに突っ込んでいく、トラッドの機体にも同じようなモジュールが付いているが形はかなり違っている、トラッドの機体右腕の先はボール型の変形タイプ。

但し相手の鋏の大きさはこちらの倍以上ある。


「よしいけ!」


トラッドが正面から突っ込み予想していた通りカニ鋏みを抑えにかかる。

その攻防を合図に斜め後ろから俺は飛び込む、それは跳躍というよりほとんど飛んでいた。

案の定右足付け根からは火炎、左足付け根からは消火用の泡だがその泡は粘着性の強いもので、浴びれば行動を阻害される。

だが発射された泡の角度よりシュウの機体は上に跳躍していた。


「ガンッ!」

「取りついた!」

「こ これか?」


まるで大人におんぶされたような形になったシュウの機体は片手と両足を使い敵の機体にぶら下がり、空いたロボットの右手でレバーを探す、さすがでかい機体だけあり造りも隙間も大きく。

シュウの乗る機体についている腕の操作でもレバーは引くことができた。


「ガコン!」

「プシュー」


今まで暴れていたでかい図体がレバー一つで何もなかったように動きを止める。


「おい 大丈夫か!」

「こっちは大丈夫だ」トラッド

「エージ!」

「やべえ、足が取れちまった」

「クイント!」

「塗装が剥げちまった…マジかよ、動かねえ…」


すでに1機目はレバーを停止位置に引かれ搭乗者を待つ状態。


「おいサーベン!」

「はい隊長!」

「こいつはお前が登録しておけ、昨日のこともあるからその方がいいだろ」

「ありがとうございます」

「問題はこのデカブツだな…」


通常のガーディアンの2倍近い図体、高さは1・5倍幅も2倍近く。


「これ操縦席あんのか?」


たまに自立型の機体には操縦席がない場合もある、その場合はAIを搭載している場合が多いが、もちろん全部ではない。

それに今、目の前にいるデカブツは4つ足で上部と下部が別々に稼働できるタイプ、それに下部の足は変形できるようだ。


「これ2人乗りですね」

「マジ!」


上部に一人そして下部に一人別々に操縦可能な陸戦にも使える制圧部隊用、デススパイダーと呼ばれていた戦闘ロボット。


「これどうする?」

「たぶん上下別タイプは下だけ登録すれば動かせるんじゃ?」

「エージお前登録しとけ、どうせお前のロボットは動かないんだろ」

「いいんですか?やった!」


そのあとは11地区採掘場のセキュリティーポイントを順次解除していくその数50個。

これがかなり面倒くさい、どこにあるのか分からないだけでなく中には壊れて死んいでるポインターもある。

だが全部解除しておかないと、探知システムが稼働し探索中にレーザーが照射される。

お宝を手に入れるのにはできるだけ危険を排除しておくことが重要だ。

初日は結局半分も解除できなかった。


「4時か撤収するぞ!」


回収したポインターとエージの機体そしてクイントの機体をデカブツに乗せ固定、解除した残りのポインターは動かせる機体に分散して運搬する。

結局、お宝と言える部品の回収はできずにシェルターへと戻ることになった。

けが人が出なかったのは幸いだったが、どうやらあのデカブツは昨日の墜落で瓦礫に埋まっていたのが動き出したらしいとのこと、それと11地区には同じ機体が数機残されているらしいということも分かった。

それはデカブツの行動記録を調べてのこと、あの地区は昔格納庫があった場所でもともとは軍事施設の研究所や備品倉庫があった地区。

この地を廃棄した際に地下に取り残された機体はまだ数機残っているはずではとコッド隊長が話してくれた。


「どうだったシュウ?」リーザ

「何とかなったよ」

「おう結構かっこよかったぜ」エージ

「おいシュウ隊長が及びだぜ」

「なんだろ…今行く!」

「じゃまたな」

「ああ」


機体を整備倉庫に順次運び入れ終わって話していたところでお呼びがかかった。

俺はコッド隊長がいる会議室へと向かう。


「隊長話って?」

「ああ私が呼んだの」オシアナ

「それで話って?」

「手伝ってほしいことがあるの」

「何でしょう…」


女王の話はこうだ、娘の再生を早く済ませたい、それにはキコー力の高い人間が必要。

コールドスリープ機能が付いた完全治癒装置その動力はキコー力なのだが、本人のキコー力だけでは足りない、それで女王も自身のキコー力を使い試してみたものの。

どうやら墜落したショックで操作回路が故障、今以上の負荷をかけられなくなっていたと。

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