第23話 迎え撃つための訓練
迎え撃つための訓練
シェルターでの訓練は気功術式を取り入れたことで着々と全員が力をつけていく。
1日で倍以上にレベルを上げた者や、すでに付与術を覚え自分の肉体強化だけでなく強化ロボットにまで強化術を使用できるようになった者が増えていく。
シュウはもちろんのこと隊長や軍曹、それに他の操縦者までキコーレベルを8以上に上げ、たった1日で魔族の獣機に対抗する力を付けていった。
「とうとう朝が来たな」
「ああ」
「やつら本当に来るかな」
「あれだけの啖呵を切ったんだ、来なければ笑いものだぞ」
「とにかくやることはやったんだ、あとはなるようにしかならないだろう」
朝7時が過ぎ昨日の話し合いでマシン乗りは3班に分かれた。
全部で7機だが修理が必要な1機は修理継続、今使える6機を3つの班に分ける。
戦闘がすぐできる隊長機とトラッドの機体、それに昨日単体で敵を撃退したシュウがクイントの機体と共にシェルター前で警備だ。
後の2機がバイオトープの護衛、こちらはサーベンの機体とエージと王女が乗る仮登録の大型機。
だが敵がどう攻めてくるのかがまだわからない。
魔族が今まで人族の生産農場を襲った記録はあまり残っていない。
それは食事情の違いだが、だからと言って背に腹は代えられない状況になれば人だろうが獣だろうが食料を腹に詰め食欲を満たすことができるのなら、人族の食べ物を横取りしないという考えは捨てた方がいい。
特に穀類は加工によっては肉と同じ栄養を含んでいる、まあその前に人族自体が肉だということも忘れてはいけないのだけどね。
シェルターのシャッターを開けるとまずは2機の戦闘強化ロボットに乗り込んだ隊長たちが周りを警戒する。
その後ろから護衛の2機が先導し運搬車両3台が後を続く、昨日の騒ぎで1日収穫が遅れている。
今日は昨日の分まで収穫しなければならない。
この時代の食料となる植物は遺伝子操作のおかげでかなり収穫量も生育速度も速く。
一日で昔の倍以上伸びるため、1週間も放置すると、とんでもないことになる。
「収穫組は出終わったな」
「では我々は1k先でトラップを設置する」
「了解」
シェルターから約1k防波堤のようになっている丘の上と入口として使っているなだらかな斜面にこの時代でも使用している電磁パレス式のトラップを仕掛ける。
まあひっかかるやつはいないだろうけど、うまくいけば数機は最初に無力化してくれる。
それともう一つの罠、これも古いタイプだが穴をあけそこに仕掛ける。
そう例のレーザーポインター。
無力化して回収したものを設置していく、有効範囲が20メートル
それらは丘の前に均等に設置、そしてそれをよけるであろう場所にはもう一つの罠。
こちらは昔の狩猟で使った大型のもの、踏みつけるとワイヤーが巻き付き身動きを阻害する。
設置時間は約1時間、その間に敵が来ないことを祈る。
「終わりました!」
「そっちは?」
「こっちもこれで終わりです」
「では我々は敵が来るまでそれぞれの場所で待機、これから連絡はビーアイテレパスを使用する」
【了解】
BIW(ビーアイ)の脳波同調機能を応用した通信方法、あまり離れていると使えないが2~5kぐらいまでなら指定した人間との脳内会話が可能となる。
先日シュウが敵将軍と会話した時使用したのも同じだが、昨日のはランダム同調を使った通話機能だ。
ランダム同調の場合遠く離れて使うと範囲以内にいるBIW使用者の全員に聞かれてしまう危険があるので威力は抑えて使う。
まあ昨日は近くにいた隊長や軍曹それに姫様にも聞かれた可能性はあるが、それぐらいは仕方のない範囲だ。
だがこれからは指定同調を使い会話することになる。
入り口近くのくぼみに身を潜め遠く丘の下を見渡す、他の2人も同じように左右に分かれ同じようにくぼみにしゃがんで身を沈める。
【隊長は魔族との戦闘経験がおありで?】
【一度だけな】
【やはり】
【だがその時はやられた方だ】
【でも今は?】
【俺も生命治癒装置のお世話になったことがある、姫様みたいに片足片目さらに内臓をやられて約1年治療ポッドから出られなかった】
【どうりで】
【ああ負けると死にたくなるのも同じだ、だがその時の経験は今でもしてよかったと思っている】
【負けたのに?】
【負けたからわかることもある、たった一回の魔族との戦闘で何が分かるって言われるけどな】
【いえ、一度でも経験は経験です】
【そうだその一度の戦闘で死ぬ思いをしたが、俺は友人や一般人を守ることができた】
【12年前の商業首都防衛戦?】
【ああ当時はまだ俺も20歳そこそこの新兵で結構浮かれていたが な…】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます