第24話 隊長の話(閑話)
隊長の話(閑話)
12年前の首都防衛戦、辺境共和国は数十の星からなるたくさんの国の共同体。
その中でも一番大きく外宇宙に近い、貿易を主に生業にした、かなり潤っていた星がある。
(惑星バショウイ)
その星はさほど大きくはないが他の星へ行く為の中継点でもあった、たくさんの国から貿易や渡航をする船が行き来していた。
勿論当時は魔族も多く交流していたが、あるもめ事がきっかけになり戦争状態に突入。
辺境共和国軍は星を守るべく軍隊を派遣、その中に隊長(当時は新兵)も出陣することになった。
はじめ戦争まで発展するかは微妙だったのだが、魔族の上層部はなあなあで済ませることを嫌い無理難題を押し付けてくる。
そして会議の場で突然暴れだし審議官や調停人そしてバショウイの王族2人を惨殺し。
即日戦闘状態に、初日は民間人の避難を優先し軍人は戦闘行為ではなく民間人保護に力を入れていたが。
2日目魔族の増援はいきなり民間人をターゲットにし襲い掛かってきた、2日目でも民間人の数はまだかなりのこっていた。
その一つのグループ約100人を宇宙船に誘導中3体の獣機に攻撃された、その当時俺の乗っていた機体は防御タイプのごつい奴だったが大きさは獣機の半分といったところ。
完全防御タイプではなく、かなり外装は薄かった。
手には盾と警棒のような電磁ショックの棒。
その装備で縦横無尽に動き回る獣機相手に民間人を背にした俺は引くことなどできなかった。
当然他にも仲間がいたが、5機いたはずの味方の機体はどんどん壊され最後に残った俺は差し違える覚悟で、警棒を捨て道端に落ちていたコンクリートの塊を手にしていた。
なんでそんなものをと思った、簡単なことだ、やつらに電磁パルスの警棒がなんの役にも立たなかったからだ。
パワーだけは結構あった外装の薄い機体だったがすでに俺の内臓には外装を突き抜け獣機の爪が何度か突き刺さっていた、もう足には感覚がなくどうやら目もやられていたらしい。
コンクリートの塊、たまたま中に鉄筋が数本残っていた。
そう敵が飛びかかった時、手に持ったコンクリートの塊をその口へとたたきつけた。
たまたまだった、そいつの機体がそのグループの隊長機で、たたきつけられたコンクリートから突き出た鉄の槍が相手の機体の神経系統を突き破り中の装置を破壊、その衝撃でたまたま操縦室が爆発。
俺は最初の小爆発で吹き飛ばされ、たまたま瓦礫の陰に落ちた、それだけだったが。
やられた魔族の隊長格は戦死、魔族でも周りを金属で固められた棺桶の内部で起きた爆発には耐えられなかったらしい。
それを見たほかの魔族は撤退し誘導していた民間人は無事その星から逃げ出すことに成功した。
意識を失いかけた俺に聞こえたのは、誰かの声…だがすでに瀕死の重傷を負っていた俺にはその後どうなったのかはわからなかった。
死んだと思った、目を覚ました時にはガラス越しに医者の顔が見えた、内部スピーカーで声は聞こえたが体は全く動かなかった。
片足は膝からざっくり引きちぎられ、腹には大きな穴が開き、左目は瓦礫が突き刺さった。
腕の骨は3か所、肋骨はヒビだらけ、指は粉々でかろうじて指はついているが関節はボロボロ。
ガラス越しに自分の姿を映像で見せられ、自分の今の状況に絶句した。
確かにかなりやばい状況でも直せると、この時代の医療がどれだけ優れているのかはわかっていたが。
他人のそんな姿は何度か見て慣れてはいても自分の姿を見たときのショックはかなり大きい。
体が全快したのは1年後、あれだけひどかった体は小さな傷さえ跡形もなく完全に完治していた。
退院すると待っていたのは昇進の知らせと次の任務、恋人もいない俺は軍の強化誘導プログラムの一環で僻地への作業安全強化とかいう作戦に駆り出された。
要するに危ないところに民間人が仕事しに行くから教えてやれっ てことだ。
まあ死ぬよりはましだってことで、即任務を承諾 辺境行き宇宙軍艦に乗船した。
あの戦いで軍人の被害は数百人にも及び、民間人も同じぐらいの被害が出ていた。
俺が僻地行きに即承諾したのは、戦闘経験者の生き残りはほぼ最前線という言葉を聞いたことがあるからだ。
後から聞いた話だが、最初の任務先を断ればさらにきつい任務先を提示されていたそうだ。
確かに戦闘経験者で生き残りはそれなりに運などというものを持っているのかもしれない。
だからと言って毎回死なずに生き残るのは、運の良い軍人でも難しい。
俺が新兵で魔族と戦ったのはあの戦闘が初めてで、あの戦闘ではすぐ上の上官は一人も生き残らなかった。
確か軍人は1000人以上投入したが生き残ったのは100人に満たなかったという話だ。
100人の生き残りの半分は逃げ出したからという噂もあり、あの状況で武器が効かないとなればパニクッて逃げ出すのは仕方のないことだとも思うが。
もう少しまともな武器を持たせてほしいとも思ったよ。
ちなみにビームサーベルでもあの機体に穴は開かなかったとだけ言っておこう。
アニメのように現実はうまくいかないものだ、昔のアニメはそのまんまアニメだとしか言えないよ知ってしまうとね。
昔の様な重火器は現在使われていない弾薬も燃料も宇宙では使えるところが少ない、基本的には鈍器や切断器が主流だと言っておこう。
だから次の戦闘からはアームにはかぎ爪の装置、そしてハンド武器はナイフの形状に、のこぎり機構を付け足したものが開発された。
だがいかんせん機動力が追い付かなかった、だからこの星のような廃棄惑星から過去の遺物を漁っては、改良して軍用へと投入しているのだ。
案の定、大型の強化ロボットが地下倉庫から見つかったのでこれから発掘作業が忙しくなる。
まあそれも敵の魔族次第なのは変わらないがな。
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