第18話 婚約って…
婚約って…
「でシュウお前、姫さんと婚約したんだって?」
「どうしてそれを?」
「いや、皆、知っているぜ」
(オーノー、既に皆が知っているとか冗談じゃない!)
「で…」
「いやー俺の仲間で婚約なんて他にいねージャン、どういう気分かなと」
「ああ別に」
(最悪な気分、などとは言えず)
「何だ、割と普通だな、でも負け国の姫とは言え王族だろ、一応玉の輿ジャン」
そういう昔のデータはBIWのデータの中にも残されており、その時の気分や雰囲気に使いやすい言葉が例題として使われるようになっているらしい。
(玉の輿)
「それって彼女らと一緒にいて生き残れれば、の話だろ」
「ああ~そうか、命狙われているんだっけ」
そう彼女らはビンゴゲームのターゲットよろしく、標的になっているのだ。
だから相手の国だけではなく賞金稼ぎや盗賊などという輩からも命を狙われている可能性が高い。
まったくもって、なんで俺が彼女達の手助けをしなきゃならないのか分からないが。
一応女王からは最初に記憶と言うプレゼントをもらったことで、知らん振りをして頼みを断ることもできやしない。
あれから毎日気功術の訓練そしてデータボックスから一つずつ取り出しては、それを自分のものとして受け入れる作業を続けている。
じいさまのデータには魔法だけではなく何種類もの武術データも含まれる。
魔法はやっと2箱開封し手に入れた、だがそこには魔法の箱だけで数百もあるのだ、いつ終わるとも知れないデータの量。
その中には世界の終わりに関する記述もあったりする、世界の終わり。
西暦4千500年ある星がその命を終わる、その200年前その星に住む人族は宇宙へ次の住処を求め旅立った。
今は地球歴西暦4万3千187年、地球滅亡から3万8千年後。
何度もの戦争や星の終焉を経験し今に至る、人族も今は100種以上いるため自分のルーツがどの種族かも分からない。
現在では竜人族、獣人族、精霊族などという種族までいる。
人族はいくつにも分かれ、ほとんどが機械化文明をそのまま受け継いだ方向へと舵を切る。
そして人族は生活が安定してくるとまた自然を壊しだすのが悪いところだ。
星を開拓開発しては壊し、そして捨てる、その繰り返し。
人族の傍若無人は相変わらず、かといって今すぐこの暮らしを捨てられるかと問われれば否と答えるだろう。
とそう考えると姫様たちの星は?開発発展派?それとも自然保護派?
まあどちらにせよ便利な道具をお持ちなので、完全自然保護派はありえないだろうけどね。
俺の現在の状況で他の星の事など言えるような立場ではないのだが、王女様のお国が素晴らしい運営をなさっている事を祈るばかりだ。
翌日は第11地区の防衛システム解除の任務へと再度駆り出される。
エージのマシンはまだ修理中、片足がもげたため移動できないという話で、それならば、と仮登録であのデカブツを操縦している、確かにあれならば普段の倍以上の荷物を運べる。
2名搭乗用のマシンは一人の登録でも使用可能、そうしないと上が壊された時2名共倒れになってしまう。
一応一人で操作できるためあの機体は下で移動、上に乗り換え撤去作業という風にも使用可能だ。
「おい何で姫さんが付いて来ているんだよ」
「え お前婚約しているのに聞いてないの?」
「なんでも社会勉強のため仕事場を見たいんだってさ」
「え~ それ本当か?」
「嘘だと思うなら聞いてみな上に乗っかっているから」
そういうと上部搭乗コクピットへと通信を繋ぐ。
「姫さんシュウがなんでついてきたか聞いていますが?」
「えっ何?ここ、ここに話せばいいの?」
「あ、いやそのままで聞こえますよ」
「ええと一人シェルターに残されても暇じゃない?だから仕事を見たくなったのよ」
「それじゃ農作業の方に行けばいいのに?」
「一応あなたは私の婚約者になったんでしょ、じゃあ婚約者の仕事を見たいと思っただけよ」
「仕事と言っても な~」
「隊長からは、聞いているんでしょ」
「そうね、セキュリティーポイントの撤去でしょ」
「そうだけど命令ちゃんと聞かないと危険なのは解かっていますか?」
「わかっているわよ」
「じゃあいいんだけど」
「何シュウもう夫婦喧嘩かよ」
「なんですって!」
「なんだって!」
「あ いやごめん…」
第11地区の半分はすでに危険はなくなっているが後の半分が少し厄介だった。
前回にも調査した時に見つかった、元軍の倉庫。
そこにはまだ数機の大型ガーディアンが眠っているという話、悪いことにこれらは最初にプログラムされた内容通りに起動し自立行動をとるよう入力されている。
こいつらの基本行動は防御=守り、集団で向かってくることはあまりないが仲間との連携はあるし。
場合によっては同時行動をとる設定をされている場合もある。
なので、地下倉庫が見つかり次第強化ロボットを降りて生身で捜索をしなければいけない。
今のところレーザーポインターはこれといった障害などなく、撤去されているが。
何があるかわからないため、隊長の命令は慎重にという話。
「よしここで止まれ」
「エージと姫さんはここで待っていてくれ、安全が確保されたら瓦礫の撤去作業をしてもらう」
「了解」
今日は新しく強化ロボットを手にいれたサーベンも手伝いに来ている、クイントのマシンは塗装が剥げパイプが壊れたが部品を交換して今回も参加している。
エージと姫を残し4台のロボットが危険区域に入って行く。
「よし注意しながら散開」
「了解」
道の有った場所、障害物などを避けながら少しずつ進んで行く、レーザーポッドのある場所に近づくと先ず(チュイー)と最初に音がする、すると30センチぐらいある円柱の筒状の形をした物体が地上へ伸びてくる。
その後、1メートルほど地上に突き出ると最初に十字方向にレーザーを発射する。
2回目の照射は1分後に30度ずれた位置で同じようにレーザーを発射する、約20メートル以内に近づかないと起動しないため、普段目視では瓦礫に埋もれていたりして見えない。
発射継続時間は10分、それを過ぎると5分のお休み。
要はお休み時間内に壊してしまえということだが、このポインターも部品として使えるため解除するボタンもちゃんとある、それは上部の円盤を取り去り真ん中のレバーを引いて倒す。
簡単なようだが上部の円盤(蓋)は結構重いしさび付いて回らなかったりする場合がある。
「ん 音がしたな、回避!1時方向」
音がする方を見ると道の端にある瓦礫が盛り上がる、その方向に向かっていたのは2機シュウの機体とクイントの機体。
クイントは20メートル以上離れているので近くへ寄らなければ大丈夫だがシュウは10メートル以内にいた。
慌てて20メートル以上離れると真横を光の筋が通る。
レーザーの照射距離に限界があるので何とかなるが、それを知らず飛び出すと痛い目に合う。
マシンで最初に作業しているときはそれほど危険はないのだが、残っていたレーザーポインターにより生身の人間は即死なんてこともあり得る。
レーザーによる熱は5メートル以内なら厚さ4センチの鉄板を5秒で焼き切る。
生身の人間も数秒で穴が開く、こいつの危ないところはちょうど頭の位置と足の位置に照射されるというところ。
足が止まれば逃げるのは難しい、まして頭や顔をやられれば再起不能になる場合もある。
シュウはレーザーの照射される位置を掴み10分待った。
5分のインターバルを使い無効化に挑戦する、昨日も一つ無効化したが何とかコツは分かった。
この作業はシェルターでも教えてくれたので、やり方やこつさえ覚えればさほど難しいことはない。
作業している間はストップウォッチ機能を使い5分を測る。
「こいつを回してと」
今回はすんなり円盤が周り、上部のレバーを引き抜きそして倒す、引き抜いただけでは元に戻そうとまた動き出す、なのでちゃんと倒さないといけない。
そして本体を左に回して設置場所から引き抜くと完了。
「終わった!」
「よくやった、次に行くぞ」
「回収班頼んだぞ」
「了解」
無力化したポインターを見えやすい場所に引き抜いた後で倒しておく、これは後から来た作業車やロボットが回収してくれるのですぐに次の場所へと進む。
「こっちも一丁上がり」
「サーベン 覚えるの、早いな」
「働き まっせ~」
右へ散開し探索した強化ロボット初操縦のサーベンは呑み込みが早いのか、すでに2個目のレーザーポインターに向けて移動していた。
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