第38話 全てが終わる
全てが終わる
これで共和国と魔族の事務方が裏で手を組み国民を騙していたことが分かり、今後の問題解決にも拍車がかかるだろう。
女王が言わずとも即裁判をやり直さなければ、周辺諸国も黙ってはいない。
「いいのですか?」
「あら受けた恩は倍返しよ、それに再調査は終わっているはずよ、さっきの話はくぎを刺しただけ」
「あとはしかるべき人たちがちゃんとやってくれるわ」
「また先読みですか?」
「うふふ」
「ママなんかずるい!」
「あなたもしっかり先を見る勉強をしないといけないわね」
船は6時間後、惑星ワイトムの首都パドヴュにある星間空港ドルムントに到着した。
「ここからはスカイロードで3分ほど移動しますのでどうぞこちらへ」
促されるまま、後を付いて行くと透明なドーム状のチューブの中に動く床が設置されていた。
そのスピードは自動で制御されているらしく、上に乗ると数秒で最高速まで加速するが、見た目ではそれほど速度は出ていないように感じた。
そしてほんの数分、空港の横にある巨大なホテルはそれはもう高級に見えた、俺には他のホテルを見たことがなかったので比べようがないのだが。
そのぐらい立派な建物だということだ。
会場となるホテルの晩餐会までは少し時間がある、その前に一行はそれぞれの用意のため、一旦個室に通されることになった。
「こちらになります」
「ようこそホテルパドヴェへ」
「お部屋はこちらでございます」
ホテルに着くとすでにそれぞれが宿泊する部屋も着替えの用意もされているらしく、全員に一人ずつボーイが付いて各部屋へと通された。
「それではご説明いたします」
流れるような作業でいつの間にか王女たちと引き離されてしまったのが少し不安だったが。
気功術によるBIW(ビーアイ)キコー通信で連絡はすぐ取れるので、とりあえず部屋に入ると用意された洋服を手に取ってみる。
「こちらがお召し物でございます」
この星の正式な衣装なのだろう、下着はシルクのような素材だが上着は羽織って紐で縛るようになっている。
ホテルの従業員も同じ服を着ており、着るのにさほど煩わしさはなかった。
「これもですか?」
「はい、こちらも正式な服の一つです」
それは帽子のようなもの、ずいぶん前のベレーという帽子の形に似ている。
それに靴まで用意してあった、これはさすがに洗練された素材でできていた、今まで履いていた軍用のごついものと違い、柔らかく足にフィットする。
全部着替えるとボーイが全身をチェックする。
勿論着替え中はボーイも外に出てくれていた。
「これで完了です、素晴らしいお似合いですよ」
「こちらの服はクリーニングしておきます、帰っていらしたときにはお部屋に運んでおきますのでご安心下さい」
この国のファッションが分からないので、何とも言えないが。
「それではこれから晩餐会会場へと参りますのでどうぞ付いてきてください」
その後はボーイの後を付いて行くだけ、晩餐会会場へは廊下をぐるっと回り行き止まりの窪みに入るとその窪みの前を透明な壁が覆い、窪みごと階下へと降りていく。
急に降りる感覚を初めて覚えた、内臓がヒヤッとしたのはこの時が初めてだった。
「こちらです」
そこはどのぐらい広いのか分からないほどの広さがある場所だった、天井は白く輝き床と天井との間にはきらきら光る照明のようなものがいくつも浮かんでいる。
少しその空間の中でぼんやりしていると後から女王様と姫様そして隊長が入ってきた。
「シュウ!」
「あ、姫様」
「あら似合うじゃない」
「女王様」
「よっ!」
「隊長!」
【惑星ビュリア、アルフレア王国女王オシアナ・オースティン・アルフレア様のおなーりー】
「どうぞこちらへ」
係のボーイの後を女王と一緒についていく。
そこには腰ぐらいまでの高さがある台が用意してあり、どうやら女王様はその前で挨拶をしなければならないようだ。
目の前には30人ぐらいの、同じような服を着た面々。
種族は人族が多いが中には獣人もエルフもそして魔族に見える者までいた。
「本日はわたくしのためにお集まりいただき誠にありがとうございます」
「ようやくわたくしの国で起きました紛争に一段落付けることができました、今までこの件に関わり努力してくださった方々に深くお礼を申し上げます誠にありがとうございました、両国そして全宇宙の安定と未来永劫の繁栄をお祈りいたします」
「パチパチパチ」
「続きましては…」
その後はこの国の大臣やら長官やらが挨拶し、ようやくパーティーが始まった。
テーブルは5か所に設けられており、真ん中には植物の様なものが置かれオードブルが各テーブルへと運ばれてきた。
すでに飲み物も一人ずつ手渡され、透明な液体なのにフルーティな香りが会場全体に漂っていた。
女王の元にはこの国の重責を担うものが続々とあいさつに訪れる。
「私 共和国辺境自治長官に本日赴任いたしましたアラベル・フーラッドと申しますこの度は私共の不手際でご迷惑をおかけしました、謹んで謝罪を申し上げます」
「ようやく変わったのね」
「前任者がかなり巧妙に仕組んでいたようで、軍部までその影響下にあったようです、誠に申し訳ございませんでした」
先日帰ったはずの共和国第6連隊辺境宇宙軍9番艦中尉、ファンコム・トムドリーへ命令したのは前辺境自治長官の仲間である、共和国軍司令長官補佐であるバッハウ・クースリーだった。
彼は前から魔族の辺境方面司令長官と通じており、本来は女王を保護しご足労願うという命令を改ざん。
捕縛した後魔族へ引き渡すという命令に書き換えた、命令を受けたファンコムが命令を執行できなかったことにより魔族側から直接補佐官宛てに、取引が破断になったことへの苦言が届き。
この件で内定を進めていた共和国府の調査官に、補佐官と魔族側との裏取引の証拠が漏洩。
その日のうちに補佐官は更迭、仲間の自治長官も同じく更迭されて。
即日、新しい自治長官としてアラベル・フーラッドが任命されたということらしい。
それにしてもずいぶんと、長い期間悪い奴を野放しにしておいたものだ。
女王様の国で事件が起こってから20年、シュウの星で起こった事件も大体同じ頃。
その間他の国も共和国も、魔族に対して及び腰だったことが手に取るようにわかる。
「これからはこのような事が2度と無い様にしていただくわ」
「はい肝に銘じておきます、それではこれで」
共和国側の要職人事は今回かなりの見直しがされたらしい、もちろん事件が発覚し証拠固めが終わったからだが。
それに例の気功術ファイルも軍部の指令補佐官がもみ消していたとのこと、改めてレベル8までの気功術の情報を共和国側へ進呈することになった。
晩餐会が終わり午後6時、別室へと通されたそこはホテルの部屋だが。
いわゆるスペシャルスイートと言われる高級ルーム。
そこには共和国の大統領が待っていた。
「こちらで大統領がお待ちです」
扉を開けるとそこには妙齢の女性が待っていた。
「初めまして、共和国惑星間自治統括大統領セイコ・オースティン・アルフレアです」
「お姉さまお久しぶりです」
「オシアナ久しぶりですね、よく無事にここまで来てくれたわ」
「途中妨害が少しあったけどね」
皮肉たっぷりに話す女王様、だが共和国大統領と女王様が姉妹だったとは知らなかった。
それからは全員が椅子に腰かけ、今までの経緯を話してもらった。
先ほどの晩餐会に出席しなかったのはさっきまで軍部の人事を大統領命により大幅に変更するための会議があったことで、そちらに出向き軍部の上層部と意見を詰めていたためだった。
クーデターを起こさせないための画策を軍部の最大派閥と話会っていたからということだ。
さらにこの状況を見て魔族の動向もあわただしく変化した、当然魔族の辺境派遣部隊司令官も現在取り調べ中だという。
大統領は妹のアルフレア王国女王との会見後も各方面への事情説明や人事異動の件で2・3日は寝る間を惜しんで動かなければならないらしい。
だが一番の知らせはやはりこうして無事二人が会って話すことができたことだろう。
「お姉さまも大変ね」
「貴方ほどではないわ、部下をたくさん死なせてしまったわね」
「はい私も彼らの死を無駄にしないためこの先を生き抜く覚悟です」
「これからも気を付けてね」
「お姉さまも」
「あ そうそう近いうち惑星メテラの人たちは釈放されるわ」
「ありがとうお姉さま」
「よかったわねシュウ君」
「はい」シュウ
「でも釈放後はどうするの?」姫
「責任は当時の双方の国にあり、その裁判はすでに済んでいるわ、彼らは当時の監督官たちに騙されて紛争になった事が証明されたから、でも元の国には帰りたくないでしょうね…」
「うふふ、だから私がシュウ達の面倒を見ることにしたの」
「あらら、あなた妹に相当気に入られたのね」
「だってうちの娘の婿様だもの♡」
大統領との会見を終えると女王様は数日後、一路廃棄惑星でお世話になったシェルターの人達に事情を説明する為、廃棄惑星に戻ることになった。
シュウたちの親が無事なことも分かったが、その後の事を話すためでもある、女王は家族の今後を皆で話し合い全員をアルフレア王国で受け入れると表明した。
勿論、それは任意であり強制はしない、中には廃棄惑星の暮らしに慣れてしまい、ここにとどまる者もいるだろう。
だが両親や肉親の無事が分かれば今後どうするか、今すぐに答えの出ることではないが。
一度国に裏切られたという心の傷もあるだろう、まあその中にありながら彼だけはすでに将来への第一歩を決めたらしい。
これからもたくさんの障害を乗り越え成長するために。
完
前回投稿してから1年近くが経ち、中身は大幅に見直しそしてついに出来上がった、確かに文章はかなりつじつまが合わない場所も多々ありました。
そんなつたない文章をご覧になられた編集者の方々にはお詫びを申し上げます。
ですが今回はしっかりと文章を見直し修正させていただきました。
まあそれでも昨今は優秀な作家の方が増えております、私の作品など足元にも及ばないのではと思いますが、それでも世に出せると感じていただけたなら清き一票を投じていただければと思います。
2022年8月7日
こちらは電撃用に作成しましたが今回新たに修正を加えてカクヨムへと投稿することにしました、途中で文章が変更になることもございます。
なにせ思い付きだけで書き進めておりますので誤字脱字、意味不明など沢山ございますがご容赦ください。
2023年8月20日
夢未 太士
手に入れたのはロストマジック、運命を切り開いて突き進め! 夢未 太士 @yumemitaisi
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