第10話 カプセルの中の少女

カプセルの中の少女


ドアの横にあるパネルに触れても動かない、ならばこういう時のために使われる通力パネルという道具をコッドはバックパックから取り出すと手袋のように手にはめて起動させる。

要は通電システムのようなもの、いちいち分解して線を繋がなくても装置をはめた掌を止まっているシステムに触れさせるだけで動かすことができる。


「ギッ…ズズ…」

【あいたぞ】


隔壁の下はさらに奥へと続いている、注意深く下へと降りていくと下にもいくつかの死体が。


【こりゃ運び出すのも難しいかもな】

【一度船を真横に位置修正しないと全体捜索は無理ですね】


瞬間移動式ゼロ時間航行、形と大きさがわかれば後は別の場所へ位置指定、そうすれば本来の船の停泊角度へ戻してあげることが可能だ。

たぶん船がこのぐらいの損傷で済んだのも大気圏外から落ちたのではなく、地上に近い位置へ一度瞬間転移し、その後引力で引き寄せられたと考えるのが妥当、要は昔の航空機の墜落に近い、大気圏外から落ちたのであれば船はバラバラ地表も半径600k周辺は大きな穴が開いていただろう。

俺たちはどんどん下へ降りて行った。


【なんでくるの?来ないで!】


3つほど隔壁を開けながら45メートル下がったところでシュウが生存者のキコー力を感じ今度は横の扉を開け先へと進んでいく。

船の全長は本来3k以上あるのだろう、見たところ葉巻型と見られる円柱形の船。

中もかなり広いため船室もかなり多い。

横の隔壁を2つほど進みさらに下の隔壁を開けると、そこはコールドスリープルーム。


【どこだ!】

【なんで!】


キコー力を使用したコールドスリープのカプセル、墜落した衝撃でかなりの数のカプセルはすでに壊れ死体が散乱している。


【君はどこ?】

【来ないで!来ちゃいや!】


防毒マスクのおかげで腐臭をかぐことはなかったが、自分たちの体温でややマスクが曇り始める、防毒マスクの上部には外部カメラもついているので映像は補足修正されそれほど問題はないが。

この探索に防毒マスクがなければかなり悲惨なことになっていたはず。

壊れたカプセルをどかしながら、キコー力を探ると壊れて散乱したコールドスリープ装置の下の方にわずかだが稼働しているカプセルを発見する。


【いた!】


そのカプセルだけは全くの無傷、だが中にいた人はまだ眠ったまま。

シュウはキコーテレパシーを使い話しかけてみる。


【声をかけたのは君か?返事をしてくれ】

【…】

【ああそう、返事しないならいたずらしちゃうけど、いい?】

【え~~~それはやめて】

【君はまだ目覚めていないの?】

【…】

【ええと名前は?】

【…クリスティ】

【僕の名前はシュウ・ミスイ】

【シュウ、とにかくこれ片づけて救出しよう】クイント

【じゃあこれから君を外に出すよ】

【やめて、私は 死にたいの もう放っておいて】

【おいシュウこっちにも生きたカプセルがあるぞ】

【マジ、そっちか】

【ああそういうことか】

【ああ 2つあったんだ】


カプセルの中で目を覚ました少女は顔の皮膚を半分失い、両足そして片腕を失っていた。

コールドスリープの生命維持装置を生体の損壊を一時停止するために利用したのだ。

装置の稼働が一部停止しているため、本来彼女はすぐ死ぬはずなのだが両足片腕の腐敗は進まず、ストップしたまま生きていた。


【おいあまりしげしげと見ないでやれ】コッド

【殺して~死にたい~~】


結局カプセル2つが見つかって、一つはまだコールドスリープが稼働したままだが、一つはすでに解けた状態。

そして分かったのがこの2つのカプセルだけがほかのカプセルとは違い特別製だったこと。

なぜ特別製なのかは後で知ることになるが、まずはカプセルを楽に運べるように補助装置を作動させる。

それは反重力発生装置、単純に言えば重さが20分の1ぐらいになり一人でも運べるようになる、おおよそ300k近くあるコールドスリープのカプセルにはいくつかの機能がついていた。

その一つがガード機能、衝撃で壊れないように何かのエネルギーが周りを覆っている。


【おいぶつけるな】

【大丈夫ですよ】

【なんで死なせてくれないの?絶対呪ってやる……】


死にたがり屋が発する馬事雑言はそのままに、俺たちはそのカプセル2つを外に運び出した。

無茶な苦情をテレパシーで発している少女は起きてはいるが、どうやらこのカプセルからは出せないらしい。

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