第11話 美女は微笑む
美女は微笑む
とりあえずそのままの状態で俺たちはシェルターへと帰ることになった。
問題になったのは船の大きさと今の状態、捜索するにも時間がかかりすぎる。
それとあの船を移動させることができる装置を探さないといけないということ、あの船のコンピューターは今止まっていて、調べてからじゃないと動かせないという。
それならばBIW式宇宙航行移動エンジンを積む他の船をあの近くまで持ってきて、その船の装置を使用して物質転移装置を使い作業しやすい場所に移動させなければいけなくなる。
結局、敵もウィルスも無かったのだが、それ以上の面倒ごとがこれから始まるということがこの後分かった。
「本日の捜索はこれで終わる、何か質問は?」
「いえありません」
すでに3時を回りカプセルは強化ロボットと作業車で運ばなければならず、3人を残し全員が瞬間移動ポッドでシェルターへと帰ることとなった。
「そのロボットはお前が運転していけ、今は登録者以外運転できないからな」
「やった!」
転移カプセルは隊長の強化ロボットが運び、俺がコールドスリープカプセルを一つ抱え。
もうひとつは作業車に積んで帰路に就いた。
時刻はすでに午後3時を越え、時間的にもぎりぎりというところ、反重力装置が付いたカプセルはかなり軽くなるが、一人で運べるところまでしか軽くはならない。
これらのカプセルは生体エネルギーを使用しているという話だが…
俺が抱えているカプセルで眠っているのは25歳前後の女性で、容姿はかなり美しい。
金髪で色白身長は180センチぐらいありそうだ。
この人ならば起きてもらえば墜落の理由など、色々話を聞くことができるだろう。
だがあちらのカプセルの少女から話を聞くのは難しそうだ。
「死にたい」と言い放った少女、彼女は当分カプセルから出られないという。
「ただいまー」
「お帰り~」
時刻は5時半、何とかシェルターに時間内でたどり着いた、持ってきたカプセルはとりあえず地下1階後部の倉庫へと移動、即女性たちから立ち入り禁止の申請がされて、俺たちはカプセルを見ることさえできなくなった。
「なんで?」
「なんで って、当たりまえでしょH!」
「ああ~そりゃそうか仕方ないよ」
カプセル内の女性2名はほぼ裸、薄いベールのような布で覆われてはいるが、ほぼ全裸に近い。
男性にとってはかなり興味をそそられる、ましてや僕らティーンには。
それにもう一人の女の子は治療中だという話し、あのカプセルには2つの機能があるらしい。
一つはコールドスリープ、もう一つが完全治療装置、パーフェクトリペアラボという最新式の治療カプセル。
四肢の欠損はもとより、癌(ガン)や脳梗塞などなど、もちろんウィルスの治療もできる優れもの。
彼女が死にたいというのはあの容姿だったから、確かに両足と片腕がなく顔の半分の皮膚がない状態で目が覚めれば、女の子は見られたくないと思っても仕方ないが。
今 仲間の女性たちが彼女を説得しているらしい、といってもカプセル越しだ。
そうあのカプセル内の治療システムでもすぐに体が元通りにはならない。
墜落するまでは通常のコールドスリープを使用していたため、治療が始まったのは昨日からとなる。
デジタル説明書には四肢の欠損修復には約1年かかると書かれていたらしい。
と言う事で、もう一つのカプセルの女性を起こして話を聞くことが決定された。
通常のコールドスリープは約1時間で解ける、あの船は約10年旅してきたらしい。
カプセルの操作日時で分かった情報だ、ということは俺たちがこの星に逃げて来てからさらに10年後もどこかの星では戦争していることになる、まああの船は俺たちが住んでいた星系とはまた違う星系から来たらしいが。
「おい カプセルの別嬪さん目が覚めたってよ」
「マジ」
「今、食堂にいるってさ」
男の子ならそういわれて行かないやつはいない、地下2階の食堂に行くとそこには人だかりができていた。
金髪碧眼ボンキュボン、憧れだ…そこいらにいる女なんて比べ物にならない。
「あ ありがとうございます」
「それじゃまた後で」
「おいおい見に来るのはいいが、各自の作業はもう終わったのか?」
隊長がそういうと半分以上の人がサ~とどこかへ去っていく、俺は空くのを待って話しかけることにした。
「姫様はどちらから来たんですか?」
なぜ姫様なんて言葉が浮かんだのだろう?なぜかそう感じたからそう尋ねた。
「あ はいわかっちゃいますよね」
「普通の人であのカプセルを使う方はいないと隊長も言っていたので」
「私の名前はオシアナ・オースティン・アルフレア、アルフレア王国の女王です」
シルバーリバー星系の端に位置するこの廃棄惑星の名は第154開拓惑星イコシ。
彼女が元居た星はアクアロード星系の手前にある3番目の惑星ビュリア。
その星からは太陽が2つ見え、月が4つもある美しい星だという。
彼女の年齢は27歳、結婚もしていて子供もいるという。
「もう一人の子は?」
「私の娘ですもう16歳になります」
ん?年齢が合わないと思うのは当然だが彼女は星の戦争に巻き込まれやはり同じように怪我をし、娘より先に治療ポッドに入り眠りについたらしい。
他の王族は皆殺しになり、すでに兄弟も父も死亡し命からがら逃げてきた。
パーフェクトラボの使用を余儀なくされたのは、彼女の怪我が下半身損失と言う命に係わる怪我を負ったからだと言う。
臓器損傷及び臓器欠損と言うピンチをいち早く解消するためにこのポッドに入り8年、その間はずっと宇宙船での移動。
そして敵対する星の宇宙船に補足され、立ち寄った星の探索中に今度は娘が負傷。
2人して生命維持ポッドのお世話になったという。
「そうすると王女様はまだ命を狙われていると?」
「私にもなんでここまで狙われるのかはっきりしたことは分からないのです」
「何か言い伝えや持ち物の中に大事なものがあったりしませんか?」
「どうしてそれを?」
「こういう話の場合、逃げる人の方が追われるのは、その理由に何か重大な情報や貴重なお宝があったりするのが定番じゃないでしょうか?」
「でも…何も持っていませんが」
「情報は?」
「BIWで拡張された脳のストレージに重大な情報があったりしませんか?」
女王はしばし考えていたが思いついた節があるのか、話し出した。
「そういえば私が子供のころ叔父にあたる方からいいこと教えてあげるといわれて」
(なにそれあやしい)
「そういうことじゃないです!」
「ん…もしかして心眼?王女様って能力者?」
「あ…知られちゃった、では話さないといけないみたいですね」
「え?」
「その 叔父から教わったのはキコー力を利用した魔術とスキルです」
キコーというのは気功術の略称気功術はもともと魔術と同じで気力=魔力という図式。
キコーの方が現在の認識度が高いが昔は全部魔術だった。
魔法防御=気功防御
気功癒術=癒術魔法
名前の頭文字が変わっただけであとはほぼみな同じ、そしてその叔父さんは王女にそのルーツや種類そして、開発方法を教えてくれたという。
「そのぐらいしか思い浮かばないわ」
「そうですか…」
「あなたお名前は?」
「シュウ・ミスイといいます」
「すう?」
「シュウ・ミスイです」
「ミスイ…」
「そうだ・おじさんからいただいた情報あなたにもあげましょうか?」
「え…そんな簡単にあげちゃってもいいんですか?」
「ええ」微笑
そう言うとにっこり微笑んで俺の両手を取ると何か呪文のような言葉を話し、身を乗り出すと俺のおでこに自分のおでこをくっつけた。
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