第3話 シェルター

シェルター


一つのシェルターで暮らせるのは200人が限界、俺たち孤児がここに送られてくるまではこのシェルターでは60人で暮らしていたらしい、そこに30人以上増え、当然食料も余分にいるようになった。

部屋を人数分使わせると掃除する場所が増える分仕事がかさむと言うわけだ。

このシェルターの管理者は56歳になったおじさんでヨイチという、もちろん既婚者で奥さんも一緒に暮らしているし息子や娘もいる。

その他にも夫婦が5組いて、その子供達も10人以上いる。

同じ時期にこの星へ送られて来た為、ほぼ全員が同じような年齢ということもあり子供達は全員がクラスメイトみたいなものだ。

俺が脱出艇のカプセルに入れられこの星へ来たのは4歳の時、コールドスリープで眠らされ遠い星から送られてきた、到着するまでに10年以上経っていたという話なので普通に生きていれば現在は25歳ということになるのだが。

コールドスリープ中の年齢加算はゼロという法則が承認されていて、300年経っていようと実年齢は変わらず眠っていた時間までは加算されない。

まあ10歳児でコールドスリープ使用して100年経ったから110歳と言われてもピンとこない、今の歳で俺はいいと思うが中には異を唱える人もいないなわけではない。

それは眠っている間に脳の一部を活性化させた状態で知識を得ることもできるからということ、歳は眠っている間も取り続けるという発想。

外見は変わらないんだけどね。


ともあれこのシェルターには今子供ばかり50人近くいる、下はゼロ歳から上は19歳まで。

エージと俺は同じ年だがリーザは一つ上の16歳。


「おいそこにいるとじゃまだぞ」


シェルターに続々と採掘場や他の施設から働きに行った仲間が戻ってくる。

もちろんロボットもシェルター内に保管するので入口近くに突っ立っていれば邪魔なのは言うまでもない。

すぐに奥の方へと移動すると、自動ドアのその奥ではバイオトープから集荷した葉物や果実の選別作業を行っていた。


「いい出来だね」

「この間は施設が壊れて散々だったからね」

「ああ施設一つやられたみたいだね」

「ミルルーこっちも手伝って~」

「わかった~今行く~」


この星で獲れるのは植物系の食材だけだ、もちろん大豆やコメのような穀類も生産しているが動物系の食料は一切ない、それは動物系=牛や豚といった食材を得ようとすると結果として植物がそこに飼料として取られるから。

それならば飼料を余分に作らなければならない分、無駄が多いということになる。

この星の特異性を考えると動物の飼育は難しい。

気温は昼間の20度から日が沈むと一気にマイナス60度へと下がる、バイオトープと同じ温室を作り動物を育てるにはかなり難しい環境なのだ。

バイオトープの植物は水耕栽培が多いが改良土を使用した栽培も現在は行われている、土は使うがこの星は水が豊富なのでそちらを使った方が無難であり温度調節がしやすいようだ。

もちろん外気に触れる場所では植物も生きていけないため、土や肥料は他の星から定期船で持ってくる、殆どの肥料は浄化剤を混ぜて使用している。

定期船で運ばれた土壌や肥料が汚染されている可能性があるからだ。

こういった施設や農場がこの星には100k沖に点在すると聞かされているが、他の施設にはあまり行ったことがないので、この星が現在どうなっているのかはあまりわからない、まあBIW(ビーアイ)による伝達ニュースでほかの施設のことも少しは分かるのだけどね。


「おかえりー」

「エージ」

「そっちはどうだ?」

「第9はもうほとんど残っていないな~」

「第10もそろそろ実入りのいいお宝はなさそうだぜ」

「第11が来週から調査するぞ」コッド

「コッドさん」


コッドは元軍人、いや今も、かな。

この星へは赴任してきたらしい、それも11年前。

戦争により廃棄惑星にたくさんの難民がやってくる、管理していた星系に所属する政府から監理官や医師などはもちろん。

場合によっては星の情勢を安定化するため、軍人も派遣されてくる。

だが軍人といっても、この時代の軍人はなんでも屋さんに近い、戦争という戦いは近代科学兵器を使用すれば一瞬で終わってしまう。

そうなると人はボタンを押すだけになる、だが生きていくためにしなければならないことは、ボタン一つでは終わらないのだ。

細かい作業や現場で必要なことを考え順応し生き抜く、戦い以外の全て、なんでもできないといけないのだ。


「来週の月曜、調査に出るぞ、エージお前も参加だ」

「いいな~おまえは」

「ラッキー」

「シュウお前もバックカバー要員として参加だ!」

「まじ!」


第11採掘場は第10採掘場の100メートル先だがその範囲は6kと少し広い、その理由は泉があるからだ。

現在の調査では汚染されている可能性もあるという話だが。

先にも書いた通り泉といっても凍り付いている、そう厚い氷の約5メートルから下であれば水が採取できる可能性があるが、現状そこまでたどり着くのは難しい。

その手前には今でも廃棄施設を守るガーディアンとセキュリティーシステムが生きているからだ。


「後でブリーフィングをやる、飯が済み次第7時半から第3会議場に集合だ」

「了解っス」

「ラジャー」

「やった~」

「おお~」


俺たちは連れ立って回収検査所へ顔を出す、ここで今日取れたガラクタを見てもらうのだ。

俺は背中に背負っていたバックパックを下ろし、中から金属片や基盤それと希少な素材や部品を取り出しテーブルの上に乗せた。


「千Gってとこかな」

「たった?」


まあ廃棄採掘場でとれるお宝など金になるだけましなのだ、目の前にいる女性はグラニー・ローゼンバーグ27歳 回収所の主任、単眼の眼鏡を目に付けお宝を注意深く見ている。

今日の収穫千G(センジール)は単純に言えば飯1回分だ、要するに今日は飯1回分赤字ということ。

一応今までの稼ぎが有るので赤字は免れているが、それも半月で底を突きそうだ。

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