第26話 魔族はやはり侮れない

魔族はやはり侮れない


魔族の宇宙船の中では今日起きたことすべてに対して、結果と成果そして費用などを作戦会議で話し合っていた。


「将軍それではこちらの身が持ちません」

「そうか…」

「ドーラはどう思うのだ?」

「私ならば彼らの別の施設を襲います」

「負けたままにしておくと?」

「負けはほかの勝星で相殺できます、いつまでも同じ場所を攻めても勝を取ることができないならば、勝を取れる場所へ攻撃を変更なさってはどうでしょうか?」

「悔しいがその方がよさそうだな…」

「確かここから200k離れた場所に同じようなシェルターがあります、そちらを攻めてはいかがでしょう」

「ではそうしよう」

「だが本日やられた機体の回収は行わなければならない」

「はいそれならば3機を回収に後の7機で別のシェルターを攻撃ということで作戦を」

「わかったではそうしよう」


魔族の攻撃はシュウたちのいるシェルターから約250k離れた場所にあるシェルターへと矛先を変更したが、話はそれだけでは終わらなかった。


「副官!ご命令通り話は通しておきました」

「ご苦労様」

「本当によろしいので?」

「いいのよ、このままでは負けて帰るだけでしょ、それに増援が来たってそれほど状況は変わらないわ」

「ですが奴らはならず者ですよ、後でこちらを襲ってくるかもしれません」

「かれもそこまで馬鹿じゃないわよ、こちらの切り札は多いほどいいのだから…」


副官であるドーラ・マルセラは部下に頼んで宇宙海賊へと情報を流した。

宇宙海賊、非合法の略奪組織だが、今では星一つ以上抱え魔族よりも悪どい事をいたるところで行っている。

それは強盗や破壊だけではなく、火事場泥棒や賞金稼ぎなど金を稼ぐことに関してはどんな悪事でも躊躇しない。

今逃げている王族には元々賞金がかかっており、軍属でさえうまく死体を確認できればかなりの報奨金を受け取れることになっている。

今までは手柄を独り占めするためにこの場所を知らせなかったが。

数回の戦闘で獣機が10機以上やられてしまうとは思ってもみなかった、このままでは手柄どころか軍法会議で降格かもしくは除籍、下手をすれば責任を取らされ懲役刑もあり得る。

今のままでは自分たちは負けたままで帰るという結論しか出てこない。

それならば手柄を他に譲ってもそれをアシストしたという記録があれば、成果はなかったということにはならない。

勿論将軍はそれを嫌うだろう、だがそれはそれ。

他から得た情報をうまく使い海賊たちが自らここまでかぎつけたと思わせればよいこと。

そしてばれたときには魔族一人が責任を負う、いや負わせてしまえばよい。


「このあたりにうろつく宇宙海賊は私たちの星より距離が近いから、たぶん明日には到着するかもね」

「明日!」

「そうよ、そうなれば敵は私たちの軍と海賊2つを敵に回すのよ、面白そうじゃない?」


魔族の部下はドーラが薄笑いを浮かべているのを見てぞっとした。

もともとサキュバスであるドーラは幻惑魔法の使い手だ、それならば将軍も幻惑魔法で操ればよいのではと考えることもできそうだが。

そうすると結果として責任を取るのは自分になってしまう可能性が高くなる。

うまく立ち回るには大きな責任は他人がかぶり小さな責任も他人に押し付ける、結果として自分は責任を負わなくて済むというのが、彼女のベストなシナリオ。

そのため、将軍にはうまく動いてもらうようにサポートし、陰で別なことを企むのがちょうどいい。


「明日が楽しみだわ」微笑


ドーラは勝利ではなく人族が慌てふためく姿を夢見た、確かにそうなれば人族は慌てるだろう。だがそれほど世の中は甘くはないことを彼らは後で知ることになる。

世の中はやはり努力と無欲が最終的に幸運を招き入れるからだ。

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