第13話 専用機
専用機
狭い施設の中でもそういった会話をするのがエチケットなのだとか。
特に女子たちはそういう傾向が強い、すぐに返事しないとむくれるわ、機嫌悪いわ。
だから女子がいるときは努めて話すことにしている、何も言う事が無い場合もね。
1階の機械管理部には強化ロボットや作業車それに転移ポッドなどの機材を整備する部門がある。
「ダリさんお呼びですか?」
「お~シュウご苦労」
「それで?」
「この機体お前が手に入れたんだよな」
「そうだけど何か問題ですか?」
「困ったよ、可動部の整備は終わったんだが、登録人の変更ができねーんだよ」
「マジ」
「変更できないと他のやつに渡せね~んだよな~」
「でも俺普通に登録しただけだしロックもかけてないですよ」
「おっかしーなー」
「ちょっと乗ってみます?」
「おお…」
コックピットを開けて座席に座りホロウ画面を立ち上げ始動、搭乗者変更画面を開き搭乗者の項目を見て操作すると。
「ダリさん誰に変更するんです?」
「サーベンがそろそろポイント10万G溜まるって話だ」
「それじゃ氏名変更をタップ」
「ブー」
「えっ!」
「じゃあロック選択画面…」
「何々…当機は最初に登録した人物の専用機となります、登録者を変更されたい場合はコンピューターモジュールを交換してください。」
「なんだって!」
「名義変更はコンピューターモジュールごとだってさ」
「本当か?」
このロボットは外見だけ変わっている、それだけだと思っていたが、中のシステムもかなり古かった。
キコー力で動くこと自体は変わらないが1万年ぐらい前の強化ロボットの初期型で多分試作機なのではという話だ。
外観が他のロボットと比べると少し丸みを帯びている、もしかしたらデモ機だったのかもしれない。
「ダリさん」
「19228年式製造番号001・URVプロトタイプ・オール…搭載コンピュータータイプZR1000」
「どうです?」
「こりゃ搭乗者変更は無理だな、交換するための心臓に当たるコンピューターモジュールがねえや」
「こりゃお前の専用機にしきゃ出来ねえな…」
どうやらかなり珍しい機体を手に入れてしまったらしい、外見の色も真っ白でタイヤのモジュールもないので基本普通に歩いて移動するしかないタイプ。
重量はかなり軽く500kちょっとと言う。
それに、どうやらこの機体は空を飛べる機能も備えているようだ、空を飛ぶには専用のアタッチメントが必要と説明書に書かれていた。
「で俺はどうすれば?」
「明日からこの機体はお前が使え、俺が隊長に話しておいてやる」
「でもな~ これには持ち運ぶための背部ハンガーがねーんだよ」
「外装は強化樹脂製らしいから溶接もできねえ」
「要するに?」
「移動と白兵戦にしか使えないってことだ、荷物運ぶにゃ専用のバケット作るしかないかもな…」
そこへサーベンがやってくる。
「ダリルさん俺の機体は?」
「それがな、この機体は最初に登録したやつしきゃ受け付けねえんだ」
「ほんとに!」
「ああ、まあすぐに11地区のガーディアン手に入るから少し待っていればいい、それにこの機体は荷物運び用じゃねえから採掘場では経費の割には儲からねえぞ」
「ということでこいつはシュウ、お前専用だ、大事にしろよ」
「えっ!それって俺貧乏くじ引いたってこと?」
「それは考えようによるな…まあがんばれ、いずれ暇なときバケット作ってやるよ」
「そんな~」
まあそれでも10万Gためなければ回ってこない強化ロボットの操縦席。
それが棚ぼたで手に入ったのだから運がいいというしかないが、後はこの機体を採掘場でどう使うかの話。
その日は女王様や王女のことなど忘れ、手に入れたロボットの説明書を何度も読み返しいつの間にか夢の中へ。
夢の中ではヒーローになりいろんな国に行き綺麗な女性とラブラブしたり怪物と戦ったり、まるで実際に自分が体験したような何故かそんな夢をいくつも見た。
「ふあ~」
「そろそろ朝か、まずは気功を丹田に?」
「??」
「シュウちゃん、何しているの?」
「えっ!気功術だよ」
「気功術?」
同室の男子一つ下のリーク・ジョーダンは不思議な顔をしながら俺を見ていた、時刻は朝5時。
まだ昨日の疲れもあり、起きている奴は少ししかいない。
「気功術っていうのは…えっおれなにして…」
そう思いながらも気功術の初期動作を俺は自然にやり始めた、今までしたこともない動作。
そして体中を気で満たし、次に気を纏い肉体を防御する。
気功防御術、頭の中にある情報がそれを毎日続けると良いと薦めてくる。
「これは…なに?わっけ わかんね~」
「どうしたの!」
「いやなんでもない、なんかこうすると落ち着くんだよ」
「ほんと、どうすんの?」
なぜかリーク相手に気功術の指導を始めることに、今までこんなことはなかったのに。
なぜか今はそれが当たり前のように感じる。
この日からシュウの行動は少しずつ変わっていく、だが…周りにはそれ程変化したようには見えていなかった。
気功術を一通り終えるとベッドからはい出し、作業着に着替えて洗面所へと向かう。
朝は必ず歯磨きとうがいの実行を忘れない、鏡には昨日と変わらず薄茶色の髪にやや焦げ茶色の目を瞬かせている自分の顔が映っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます