第7話 宇宙船の探索

宇宙船の探索


朝早く出発の準備を始めたが外気温はまだマイナス20度、捜索部隊1班の5人は各自荷物をロボットや乗り物に乗せシェルターを後にする。

コッドが操る戦闘型強化ロボットには足にタイヤが付いた駆動タイプ、少ししゃがむと変形するので車のような乗り物になる。

ただし今回は背中に移動ポッドを積んでいるのでそこに人が乗ることはできない。

そういうことで今回はもう一つ乗り物がある、こちらはバイオトープで使用している荷物運搬用の作業車。

スピードこそそれほど出ないが、それでも歩くよりは早い。


「早く乗って、すぐ出るわよ」


寒さを凌(しの)ごうと上着を真深にかぶると作業車に乗り込む、本来コンテナ車を後ろに数台連ねて運転するのだが今回は人間のみ乗せて走る。

2つの形が違う乗り物がギュルギュルという音を立てながら40k先の墜落現場手前を目指し走っていく。

作業車の運転をしているのはマーサ、彼女もややキコー力が高いのでキコー力を使用して走る車の操縦者に選ばれている。


「さぶっ!」

「いつもは1時間遅いからきついですね」

「仕方ないわよ、帰りが心配だもの」


この車には窓がない屋根は収穫用のラックが乗るための棚になっており、現在はその棚を折りたたみ腰かけている。

バイクのようなハンドルに前タイヤが2つ、椅子にまたがると後ろの荷台はタイヤが6つあり安定性は結構高い、いつもは収穫した果物や野菜の籠が10個以上乗せられたまま走る。

勿論、運転席は単独だが屋根付きなので走行中の寒さは何もないよりはましになる。

約1時間が経ち未調査の区画へと進んでいく、そこから先は危険地帯だが道としての隙間は一応確保されているようだ。

少しハンドルを右に左に変えながら瓦礫の街をどんどん進んでいく。

5kほど危険地帯を進んだところでアクシデントが発生、進むべき道が瓦礫により閉ざされていたのだ。

これでは作業車は進むことができない、前を進む強化ロボットが姿を変形させ立ち上がると目の前にある瓦礫に手をかけ押し出した。


「ギョルギョルル」

「ガグー」


道をふさいでいたのは宇宙船が墜落した時に弾き飛ばした瓦礫の残骸だった。


「これでいけるだろう」


だが目の前にいつの間にか、この地区を守るガーディアンが現れた。


「キュシュー」

「くそこんなときに!」

「さがれ!」


マーサは作業車のギアをバックに入れると空回りするタイヤの音を聞きながら後ろへと急加速する。

前にはガーディアンと組み合うコッドの強化ロボット。


「ガ ギャ ゴゴ」


力は拮抗しているようだがコッドの乗るロボットには転移ポッドが積まれているのでどう考えても分が悪い。

採掘場が番号で分けられているのは、区画ごとに1機のガーディアンが稼働しているからに他ならない。

だが、ギリギリどちらの地区にも入らない場所もあったりする、それは道路だ。

中には瓦礫で寸断されている場所などもありそれらをうまく使い進んできたのだが、ガーディアンとの衝突を避けられない場所もある。

この場所もその一つ、ましてや道を瓦礫がふさいでいるので、ガーディアンもそれに気付き道からどかそうと出てきたのかもしれない。

タイミングが悪かった、だが数分が立つのにいまだに向き合い押し合うような状態。


「あのガーディアン少しおかしくない?」

「そう?」

「なんか押すだけじゃない?」


確かに腕と足があるのに押すだけで武器らしきものは使ってこない。


「ちょっと見てくる」

「あっシュウ だめよ!」


実はガーディアン回収できれば人が乗れる強化ロボットになる。

ということは操縦できるコックピットがあり背中と首の隙間には停止スイッチがあったりする。

今はほぼ止まっている状態なので、ガーディアンに近寄り首まで登れれば、停止させることも可能。


「隊長ちょっと頑張っていてください」

「ああ、たのむ!」


「カンコン」

「クシュークシュー」


腕のギアと油圧ポンプが空回りしているようだ、その分力が入らず同じ動作を繰り返していた。


「確かここに…あった!」


首と背中には外装甲の板がありその隙間に手を入れるとフックのような手でつかめるレバーがある。

動いているままであれば止めるのは難しいが、ほぼ止まっているなら話は違ってくる。

機体によじ登りレバーを引けばその状態で緊急停止するのだ。

そして反対側のレバーを引けば今度は搭乗者用のハッチが開く。


「隊長!初期化していいですか?」

「仕方がない やってみろ」


本来は手柄を立てたものがこの役目をするのだが、今はそういう状態ではない。

それにこのままおいておくわけにもいかず、コクピットの中にシュウは入ると座席に座り初期化メニューを呼び出す。


「このスイッチを押すと…」


自分の脳波に連動してホロウ画面が立ち上がり各種設定のページが目の前に浮かび上がる。

各項目をチェックして、再起動すると名前と操縦者の脳波指定を入力しろというページが出る。

俺はそこにMISUIと入力し自分の脳波IDを入力する、この項目は後からでも変更が可能なので、もし他の人間が搭乗する場合は同じように初期化し設定をし直せばよい。


「これで設定完了!動け!」

「ウイーウイー」

「よしシュウ動かせるな、俺の後ろをついてこい!」


ホロウ画面には右腕に赤い点滅が見えるがたぶんそこが故障している部分だろう。

脚部は問題がなさそうだ。

そのまま操縦して何とか宇宙船の10k手前へと無事全員がたどり着く。


「よくやった、だがまだお前のものになったわけじゃないからな」

「あ~ それは分かっていますよ」

「よし転移ポッドを設置しよう」

「タシュタシュタシュタシュ」


転移ポッドを地面に固定する、ポッドの下部は倒れないように地面へくさびを打ち止める。

たまたまこの地区が17番地区だったようで、その地区のガーディアンを手に入れたことになった。

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