第29話 どんとこい
どんとこい
シェルターに戻った攻撃班4人は戻るとすぐに機体の点検を行っていた。
「機体はどうだった」
「なんもおかしな所は無かったな」
「ほんとか?」
「ああ、まあ擦り傷は所々あったがな」
「マジか!」
「爆弾に巻き込まれてこんだけで済むってどんだけだよ!」
「いや半分は運だろ、直下で爆発していたらまったく被害がないなんてことないだろ」
「確かにな…」
「おいシュウ、サーベン会議室に来てくれ」
トラッドに呼ばれて2人は整備室から移動する、会議室では今後のことを隊長とシェルターの管理者ヨイチさんが話あっていた。
「こちらの増援は二日後か…」
「ああ、だが軍隊といっても船の回収班と増援は50人がいいとこだ」
「そんなもんしか来ないのか?」
「そうはいってもこの星は辺境だからな、ほぼ捨てたられた星だ、たまたま今回は強化ロボットが数機見つかったことで軍も余分に派遣することになったんだ」
「地下に眠る大型機か…」
「形はいまいちだが2人乗りで一人でも扱えるのが今まで無かったタイプだな、それに他の機種もあるかもしれない、直接の調査はまだしていないし軍の研究所だった倉庫跡地だ何が埋まっているのかはわからないからな」
「共和国軍も現金だな…」
「仕方ないだろう、それに今回は気功術のデータもある」
「隊長お呼びですか?」
「おお、今11地区の大型機のことで話していたところだ」
「海賊の話は?」
「それはこれからだ、俺たちは見ただけで直接対応したわけじゃないから、詳しいことはみんなの意見も聞かないといけない」
「海賊って結局何しに来たんです?」
「今回は王族の確保もしくは抹殺だろう」
「だがまさか魔族の軍艦を巻き込むとは…」
「あれは共倒れを狙ったのではないでしょうか?」
「俺たちを攻撃したふうを装って軍にダメージを加えて自分たちの立ち位置を有利にって?」
「シュウいつの間にそこまで読めるようになった?」
「いや普通そうしませんか?普通じゃないか…」
「海賊の首領はそう考えてもおかしくはないな」
「そうなるとやつらは次にどう出ると思う?」
「軍がなかなか攻めあぐねているのに同じ方法で攻めてくるとは思いません」
「どうしてそう思う?」
「俺らで結局20機ぐらい壊しましたよね、まあ最後は海賊の爆弾でしたけど」
「海賊たち上から見ていたんでしょ」
「そう俺たちと軍が戦うところを覗いていたのは確かだ、だからあそこに爆弾を落としたんだからな」
「ならばこちらの数も機体の頑丈さもばれていますよね」
「ああたぶんな」
「それなら軍と同じように攻めてくることはあまりないんじゃないですか?」
「それじゃやつらはどう攻めてくると?」
「たぶん手を組みたいとか、取引しないかとかじゃないか?」
「ありえるな…」
「海賊のやり口だとかは分かりませんか?」
「昔のデータしかないな、なんせ海賊もそれほど数がいるわけじゃない、もともと悪徳商人と冒険者崩れが合体したようなものだ」
「ああ~そんな感じなんですね」
「基本は暴力と強奪、そして嘘つき騙しが常套手段だ」
「じゃあますます正面突破は無いですね」
「俺もそう思う」
「だとしたら騙しに対しての対策が一番では」
「そうだな」
「海賊対策はそれで行こう、後は魔族軍の増援対策か…」
「もう三日たちます、魔族の増援も明日あたりにはやってくるかもしれません」
「魔族軍は増援が来た後どうすると思う?」
「俺がやつらだとしたらもうここには攻め込みません、他のシェルターへ攻め入ってそこで人質を取って交渉しますね」
「ほんとシュウはどうしたんだ?」
「そんなにおかしいですか?」
「なんか急に頭がよくなったんじゃないか?」
「そうでしょうか?」
「まあそれはいいことだ、そうか…では他のシェルターに注意喚起しておいた方がいいな」
「はいそうした方がいいと思います」
隊長とシェルターの管理官ヨイチさんはすぐに他のシェルターへと注意喚起の連絡をする。
「あらここにいた」
「女王様」
「何でしょうか?」
「ちょっと手伝ってほしいことがあるんだけど」
「手伝ってほしいこと?」
女王に付いて行くと食堂へと入って行く、そこには姫様も座っていた。
「頼みたいことって?」
「ええとね今から話すことはほかの人には言わないでほしいの」
「ええとそれって皆にかかわることではないってことですか?」
「そう私からの頼み事」
「姫様もその話の仲間ということ?」
「そうよシュウちゃんだけじゃ難しいから」
いつの間にかシュウのことを女王はシュウちゃんと呼ぶようになっているがシュウはさほど気にしていない。
「話の内容は?」
「海賊のことなんだけど、できればやっつけて積み荷を奪ってほしいんだけど」
「姫様は先に聞いているんでしょ」
「ええそうよ」
「正気ですか?」
「本気よ」
「もちろんよ」
「理由をうかがっても?」
いきなり海賊から積み荷を奪ってと言われて、はいそうですかやりますと言うわけにはいかない。
当然のことながら理由も聞かなければいけないし、それがいかに困難かも2人は分かっているはずだ。
それに2人は参加するつもりだがそれは難しい、海賊をどうにかするにもあそこへ行くのに徒歩じゃ無理、だから強化ロボットか作業車が必要。
まあやっつける段階で強化ロボットの1択しかないのだがそうなると姫様と俺の2機のマシンで海賊をやっつけに行くってことだ。
「あの海賊の船には親戚が乗っているのよね」
「親戚?」
「前にいったじゃない、苗字の話」
「ああ確か言っていましたね」
「たぶんエルフの一族なんだけど苗字がキルムだと思う」
「それってなぜわかるんです?」
「ええと…シュウちゃんなら話しちゃってもいいか~、私のスキル先読みと心眼の能力でわかっちゃうのよ」
先読みは未来視と同じだが違いは近未来か遠い未来かの違いぐらい、その差は個人の考えで違うため他の人にはよくわからない。
心眼は前に女王がシュウの心を読みHなことじゃないとか、言わなくても先に答えを話したりすることでなんとなくわかる。
ちょっと見のほほんとしている彼女だが、持っている能力はとんでもなかった。
しかも魔法とは違いいつでも知ろうとしている他人の考えが分かってしまうのだから。
海賊は獣人や魔族が多いらしい、変身魔法を使えないと商人となるのは無理、だから人族で魔法を使用できるエルフを商人に仕立て上げ、だまそうという計画でやってくるだろうという話。
「それで近い未来にそのエルフでしたっけ」
「そうその子が接触してくるわ」
「どうすればいいんです、海賊の宇宙船まで行って叩くんですか?」
「いえいえそこまではしなくて大丈夫よ、向こうからやってくるから」
「作戦なんかはありますか?」
「ええとね海賊さんは私たち親子が目的なのは知っているわよね」
「らしいですね」
「たぶんそのエルフの子を商人かなんかに仕立てて商売を持ち掛けてくると思うの」
「それで?」
「うまい具合に話を長引かせその間に海賊さんの仲間を排除して」
「やつらを人質にしてうまくいったと見せかけて海賊船に潜入して、後はボコボコね」
「それは時間的に厳しくないでしょうか?」
「う~~ん、シュウちゃんあのファイルは開けてみた?魔法ファイルの上級の5番」
「上級魔法の5番ですか?」
「その中に転移魔法のファイルがあるんだけど」
ロストマジックとはいえ転移魔法は瞬間移動ポッドの元になる魔法の一つ。
近代では個人で詠唱し瞬間移動する人はほとんどいない、もちろん一部の魔族やエルフそれに魔法の修行をしている人族であれば使えるものもいる。
「瞬間移動ですか?」
「シュウちゃんもうキコーレベル12は超えたわよね」
「ええ昨日14以上と判定されました」
「じゃあ使えるわよ」
「ん?」
「海賊全員お縄にして瞬間移動でここに戻ってくればいいのよ」
「その前に海賊をどうやって倒せと?」
「あらレベル15ぐらいあれば魔族や強化人間も気功防御や気功強化術使えば簡単よ」
「クリスちゃんも覚えたでしょう」
「まさかあのデータ、ママがシュウにあげたなんて知らなかったけど、あの後ママから残りのデータ全部もらって勉強したわよ、だから私もキコーレベル10以上あるし、戦うのは任せてもらっても大丈夫よ、というか任せなさい!」
「でも2人じゃやはり足りないな、一応隊長にも話しておこう」
「う~ん、お手柄独り占めできたのに、欲がないんだからシュウちゃんは・」
いやいや2人では後のことを任せられる人間が最低あと2人は必要だろう、最初に海賊の見張りや仲間を倒す役も必要だし。
海賊の船まで行って邪魔させないための見張りも必要だと思うのだが、そういうことの細かい設定を女王様は省いて考えてしまっている。
そこだけで考えるとものすごい不安が頭をよぎってくる。
女王と姫を食堂に残し一人会議室へ行くとコッド隊長に耳打ちし、事の顛末そして情報を話してみた。
「まったくなんでお前たちはそういう計画を…だがシュウ、俺に話してくれてよかった、それは皆でやろうその方が瑕疵(かし)が出ないはずだ、もし計画を知らないものが横から出しゃばれば海賊はそこから豹変する、そうなればやつらは絶対人質を取り計画は失敗してしまうからな」
「俺もそう思います」
そこからはみんなを集め計画のくわしい内容を詰めていった、参加する人数そして対応する行動など、さらに隠れて様子を見て海賊を取り逃がさないようにする人の配置などなど。
そう、もとよりこの作戦は2人で何とかなる話なんかではないのだ。
(女王様も言ってくれるよな2人でなんて)
一人を騙せばいいのなら2人もいれば何とかなるだろう、だが海賊とて変装してこちらへ乗り込もうとするのだ、最低5人はいるとみていい。
商人役とおつきの従者、さらに見張りやガード役、さらに失敗した時の連絡係。
これらを一遍に無効化しこちらの計画通り運ばせるのだから最低相手側の倍の人数が必要だ。
確かに瞬間移動魔法を使えば海賊が隠れている場所へ、瞬時に移動しやっつけるのもさほど難しくはない。
だがそれじゃメインで動かないといけないシュウに重い責任がのしかかる。
女王様はそういうことを丸ッと考えていないところが恐ろしい、まあ女王というのは一番上で命令する立場なのでそれは仕方のないことかもしれないが。
この後、女王発案の海賊無力化計画は着々と進んだ、この情報は他のシェルターにももたらされていく。
単純にこの星には海賊の仲間やスパイなどという者が一切居ないから連絡できることなのだが、普通の星ならばこうはいかない。
「これでいい、他のシェルターには訪れたら追い返すように言っておいた、こうすれば必ずうちのシェルターへ交渉しに来ることになる」
「あとは待つだけですね」
「ああ、それより向こうで暴れてもちゃんと帰って来られるんだろうな?」
「ああそれなんですけど何とかなりそうですよ、ファイルには瞬間移動魔法の使用マジックポイント量の計算式もありましたから」
もらったデータの中にあった各種魔法、中には鑑定眼や検索魔法、それに隷属魔法など。
覚えるのにも必死だが必要な魔法はいっぱいある、それ等も一つずつ確認しては確実にものにしていった。
「どうできるようになった?」女王
「何とかね」
「頼むぜシュウお前にかかってんだからよ」エージ
「大丈夫よシュウちゃんは優秀だから」女王
それにしても何万年も前にこれを考えた人はえらいなんてもんじゃない。
気功術で魔法の基礎を作り、まずは体の強化を中心に覚えこませ、レベルが上がると今度は魔法を覚えこませる。
気功術で高められた体の性能は魔法を使っても耐えられるぐらいに強くなっている、だからこそ魔法を使うことが可能になるというステップアップ方式。
本当にこれを自分の先祖が考えたと思うと、すごいとしか言いようがない。
すでに残りの魔法データは半分までになったが、さすがに上級魔法は一つの魔法でもかなり覚えるのが難しい。
魔法はその成り立ちや構造だけじゃなく魔法陣や唱える言葉も覚えなければならず、簡単な魔法ならすぐに覚えられるが、今覚えている魔法は相当面倒だ。
瞬間移動魔法も魔法陣を書くのが一番楽なのだが、その書き方だけで教科書1冊は覚えないといけない。
一応全部ではなく半分ぐらい覚えれば使えたりするがその場合は複数人での転移は難しい。
それに海賊船内でも他の魔法は使用することになる、身体強化は通常の気功術でよいから使用するマジックポイントも少なくて済むが。
もしかして使うであろう魔法に隷属魔法や隠密魔法なども含まれる、敵が知らないうちに無効化できる可能性のある魔法だ。
隠れて侵入そして隷属魔法で操ってしまえばそれで完了。
まあデータに書かれている通りうまく運べばだが。
魔法というのはちゃんと形をしっかり思い浮かべて行わないと、発動しなかったりする場合もある、その時はマジックポイントのみ減ることに。
複数の魔法を使用しなければいけない現場では、その一つの失敗が命取りになることも有る。
全員に計画の内容を伝えそれぞれの持ち場で海賊に対しての対応をレクチャーする。
そして次の日、女王の先読みの能力通り商人に変装した人物が丘の向こうから訪れた。
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