第28話 海賊はしたたか

海賊はしたたか


爆発に巻き込まれ約10メートル以上飛ばされたシュウたちは瓦礫にまみれながらも様子をうかがっていた。


【おい無事か?】コッド

【何とか無事です】サーベン

【ぺっぺっ口にごみが、俺も無事です】シュウ

【こっちもなんとか無事だ】トラッド

【なんですかあれ】

【いきなり爆弾落とすとか】

【魔族の船じゃないな、海賊?】

【賞金稼ぎにしちゃやり方が容赦ないな】

【海賊みたいですね】

【どうします?】

【一応魔族はこれでほぼ無力化できた、撤退した方がいいだろう】

【そうですね機体の点検もしないと】

【ああ巻き込まれた時はどうなるかと思ったが、気功防御術はすごいな】

【ええ調べてみないと分かりませんが操作系の機器に破損個所は見当たりませんよ】

【よし一度撤退する】

【了解】


身軽になった4機は来た道を引き返す、強化された機体はいつもの1.5倍の速さで戦場から離脱した。


一方魔族は。


「おい誰か誰かいないか!」

「将軍」

「くそっ!なんだあれは!」

「たぶん敵の攻撃かと…」

「敵だと、やつら自分たちも巻き添えだぞ、そんな攻撃があるか!」

「それに上空に見えた船体はやつらのものではないだろう」

「確かに」

「すぐに調べろ!」

「はい」


将軍は片腕が失った機体を操り何とか宇宙船まで戻ってきたが、そこには大きくめくれ上がり脚部を破壊され傾いた船体があった。

獣機を降りると額から流れる血も気にせず船体へ駆け寄る。


「おい無事か?」

「将軍、よくご無事で」ドーラ

「お~まだ生きていたか?」ジョバーン

「誰だ!」

「宇宙魔海賊ジョバーン参上!」

「お前か!何しに来た」

「決まっているだろ、お宝探しだよ」

「お宝だと!」

「おいおいしらばっくれるなよ、惑星ビュリアの王族には懸賞金がかかっているんだ、独り占めは無いんじゃないか?」

「おいこの馬鹿を叩き出せ!」

「いいのか?このことが知られたらお前は左遷だろうな、手柄は横取りされ船はめちゃくちゃ、敵には逃げられたんだろ、俺様が来たときにはお前ら軍部の獣機はもうすぐ全滅ま近かだった様に見えたんだが?」

「お前には関係ないことだ」

「いいのかそんなこと言って?機体はボロボロ船も動きそうもない、これからどうやって戦うんだ?」

「もうすぐ増援が来る、お前たちのことは伝えておく、さっさと失せろ!」

「おおこわっ!後で吠え面掻くなよ」


海賊はそういうと自分達の機体の方へ歩いて行った。


「おいなんで奴が来ているんだ!」

「情報が漏れていたのでは?」

「くそっ!これでは何も得られず帰ることになるんだぞ!」

「落ち着いてください将軍」ドーラ

「これが落ち着いていられるか!」

「今度はやつらを泳がせて、横から手柄をさらえばよいのです」

「あいつらをおとりにするのか?」

「そうです」

「だが今使える機体は一つもないんだぞ」

「確か予備が2機、船の中に残っていたはずです」


本来ならば20機のところだが2機の予備が船に乗せてあった、だがそれは試験機であり大きさも動かし方も今までの獣機とは違う実験機だった。


「おいあの機体はすぐには扱えないんだぞ」

「ですがすぐ使える機体はその2機だけです」

「ぐぬぬ…」

「すぐに整備させろ!、それから次はお前も参加しろいいな!」

「私もですか?」

「そうだ」

(こいつ勘ずいてるのかしら)ドーラ


一方海賊は。


「久々に将軍とドーラのやつを見たな、かなりおかんむりだが相当頭に来てたようだな」

「親分は将軍も知り合いで?」

「あいつは一応、とお~い親戚なんだがな」

「本当ですか?」

「ああ本当だ、昔はよく遊んでやったもんだが、ここ50年ぐらいは会っていねえ」

「へ~」

「お前ら信用してねえだろ!」

「いやいや し 信じていますって」

「ほんとか~、まあいい直にわかる、あいつは俺に頭が上がらないはずだ、昔助けてやったこともあるからな」

「それで王族の情報は?」

「やっぱり2名の王族がこの星に逃げてきてますや」

「それで」

「それで?」

「だからその王族をかくまっていんのはどいつだ!」

「あ~はい地元の廃棄物収集屋ですね」

「ああごみあさりか、それで」

「今のところ先ほど見た4機とさらに2機いるって話でやす」

「つまり6機か…どうして将軍はたったそんだけの敵にやられてやがるんだ」

「前はもっと楽勝で勝っていただろう」

「確かに俺らが来た時負けていやしたね」

「爆弾投下する少し前、追いかけまわされていただろ」

「そうっすね」

「いつから追うのやめて追われる方になったんだか…わらかしてくれるぜまったく」

「何かありそうっすね」

「お前も気付いたか、ありゃロストテクノロジーっつうやつかもしんねえ」

「ろすとてく?」

「失われし遺産っつうやつだ」

「今回逃げていんのは古~い王族の女王と姫様って話だが、惑星ビュリアの王族でその中でも一番大きな国の女王様だっつー話だ」

「ああ昔聞いたことありやすね」

「ほんとか?」

「いや あ 小耳にはさんだ程度でやす…汗」

「でそこの王族は魔法に長けていて、素手で戦う身体強化の魔法にかけちゃピカ一だって聞いたことが有る」

「それが?」

「ああその技を伝授されてたんじゃねーかっつうことよ」

「それがお宝っすか?」

「お前ら…金銀財宝+女だけがお宝じゃないってことぐらい分かんだろ、例えば土地なんかもそうだ、売れば金になる情報なんざいくらでもある、そーゆう情報は簡単に手に入るもんじゃねーんだぞ」

「もし金や銀を作り出す魔法がありゃおめえだって知りたいだろ?」

「ああ確かにそっすね」

「ありゃたぶん強化ロボットに付加する強化魔法の情報と見たぞ」

「そいでどうしやす」

「やり方は2つだな」


海賊は戦って負けると思う勝負は相手が同じ海賊ならばなめられないためにも逃げたりはしないが。

もしかして自分たちより強いかもしれない相手にはどう出るのか。

まあすぐに思いつくのが騙してお宝ゲットというのが一番ポピュラーな方法。

そしてだまし方は2種類以上あるが、簡単に思いつくのが嘘をついて助けを求めるという方法、もう一つは商人のふりをして商売人として近づく。

この2つには変装が不可欠だが、もちろん海賊は無理というか、変身魔法が使えないと無理だ。

そしてお宝または情報を用意すること。

この星だと助けを求めるなんていうのはもってのほか、その間に凍えて死んでしまう。

海賊船のメインコンピューターの情報にもこの星が夜は生き物が暮らせない極寒の星だと出ていた。

となると商売人として近づくのが妥当だ、だが人選をどうするか…


「確か前の星から連れてきた売り物のエルフがいたよな」

「エルフですか?」

「おおあの女なら変身魔法を使えるんじゃないか」

「そういやー捕まえたとき変身が解けたって言ってやしたね」

「ちょっと連れてこい」

「わかりやした」


船内の隔離室に閉じ込められていた奴隷として売られるはずのエルフ、いまだ奴隷契約もしていないが、首には電磁方式の拷問具がはめられていた。

つかまった時に着ていた服はそのままだがすでに数年閉じ込められているため、服は汚れ彼女の外観は浮浪者のようだった。


「親分、連れてきました」

「おおごくろう」

「さーてと、お前は魔法を使えたよな?」

「…」

「返事をしろ!」


首から伸びた鎖を強く引っ張る。


「グッ!」

「言うことを聞けよ、今回はお前に仕事だうまくいけば逃がしてやらないこともないがどうする?」

「仕事?にがす…」

「そうだ仕事をしてくれりゃ、逃がしてやろう」

「仕事する」

「よしよし、お前魔法使えるよな、変身魔法だ」

「変身…できます」

「よしよし」


連れてこられた女性は、いわゆるエルフ族 少しとがった耳に美しい容姿、彼女はエルフ族が住む星から捕獲されてきたのだ。

つかまったのは彼女一人ではない、海賊は彼女達を売りお金を得るために捕まえてきたが、その金額が折り合わず、いまだに解放されない状態。

食事も少しは出されているためそれほど痩せてはいないが。

今の状況は栄養失調に近い、目はうつろで肌はくすんでしまっている。


「とりあえずこいつに食い物を与えて商人に見れるようにしておけ」

「へい」

「これで何とか準備はできたが…どこから切り込むか…」


海賊が訪れるのは少し後だがシュウがいるシェルターでは、問題が複雑になっていた。

だが、それは以前と比べればまだ希望の持てるものだった。

なにせ気功術の情報は魔族との力の差を埋めるだけではなく、今の人族にとっては革新的な物だったのだから。

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