第5話 地震?事件か?

地震?事件か?


(マ マジか…)


まあパンだけはかじったままテーブルの下に逃げたので、なんとか半分はおなかの中へ入れることができたが、気分は最悪だった。

女子たちはすでに食事も終わっていたのでエージと俺だけが悲しい顔をしている。


「おーい、怪我人はいないか?」

「俺たちは大丈夫です」


見る限り食堂にいた仲間にはそれほど怪我をしたものはいなかった。


「何だったんだ、今の?」

「さあわかんないよ~」


この星はそれほど地震が起こらない、もともと火山も少なくコアである星の中心にあるマグマは殆ど冷えている、そのため地表は安定していて気温が低いというわけだ。

なので、先ほどの揺れは何かがこの星に降ってきたと考えるのが妥当だ。

テーブルの上をさっさと片付け、俺たちは指令所へと走っていく。

指令所は地下1階倉庫の前にあり回収所の後ろだ、そこにはこの施設だけじゃなくバイオトープ全体のシステム操作や監視カメラの操作を行う場所がある。


「何があったんですか?」

「今調査中だ」

「おい勝手に入るな!」

「ちぇ!」


指令室にはすでに大人が10人以上集まり壁に貼られたモニターを見ている。

脳内のホロウ画面は外部にある監視モニターとは直結しておらず精査したのちデータとしてみることができるようになるため、BIW(ビーアイ)を利用してホロウモニターで見るには数時間待たなければならない。

俺達は大人の邪魔にならない端っこの方で壁一面に貼られた画面の様子を見ている。

同時に表示された映像は10か所、どうやらバイオトープはさほど被害はなさそうだが一部の壁や屋根に損傷がみられるため自動操作で修復を試みている最中だ。

問題なのは施設のカメラではなく採掘場の監視カメラ、その中でもエリア20以降の場所になるところから50k先のエリア。

今 小型のF(フライ)ドローンと呼ばれる探査機械が問題のエリアへと調査のため向かっている。

この時間はすでに外気温はマイナス60度、外に出れば数分で凍り付く気温だ。

第10採掘場には探査用システムのボックスが設置されている、2メートルのキューブ型の箱の中にF(飛行タイプ)C(車タイプ)2種類のドローンが格納されている。

事故や事件が起きた時、危険な場所へと情報確認に行くために用意したものだ、なにせ午後6時を過ぎれば人が行動できる寒さを超えてしまい、外で何が起こったのかを調べに行く事など出来ないからだ。


「バイオトープは第一が3か所、パネルが剥がれ落ち現在修復中、他にも数か所被害が出ている」

「他の施設は」

「水源の取水施設のパイプに亀裂がみられますが現在は漏れ出た水も凍り付いていますね、明日修理しないと…」

「あ ドローンの映像入ります」

「なんだ、あれは?」


そこには巨大な宇宙船が地面に突き刺さっている映像、もし普通に衝突したならこの星の半分の生き物に被害が起こるぐらいの大きな宇宙船とみられる物体。

巨大な宇宙船しかもその船体の半分ぐらいが焼けただれたように溶けてしまっている。


「2kだと!」

「はい計算によるとこの宇宙船のような物体はかなり大きいようです」


2k、長さなのか幅なのかはわからないがたぶん突き刺さった地面から上にそびえ立っている先端の部分までのことだろう。

通常、外宇宙へ行く宇宙船であれば大きさはせいぜい2百から5百メートルが良いところ、この時代の宇宙船は瞬間移動方式を利用したゼロ移動航法だ。

なんでもキコー力を利用した転移装置を使い空間と空間を入れ替えるのだとか。

外宇宙から1光年の距離で有っても数日で到着する、俺たちの脱出ポットにはそれが無かったため10年という歳月が必要だったが、今回は宇宙船のままなので、いったいどのぐらい遠くから飛んできたのかはわからない。


「どうだ?」

「やっぱり電磁波がかなり出ていますね」

「おお~」

「なんだ?」

「知らないのかシュウ!高い電磁波が出ているとセキュリティーシステムやガーディアンの通信を阻害するんだ」

「じゃあ」

「そういうこと明日からお宝取り放題!」


まあそう喜ぶのは無理もないのだが、それで済むわけがない。

当然のことながら宇宙船には誰が乗っているのか、それに強い電磁波は何のために出ているのか、通常強い電磁波は外部のシステムを遮断する、阻害するために出ている。

ということは近くによればこちらのシステムもダウンしてしまいかねない。

作業用のキコー式強化ロボットも船に近寄れば動くかどうかわからないのだ。


「電磁波は有効範囲10kか…そうなると助けに行くにも途中の採掘所を避けないと難しそうだな」


50k先その手前10kまではシステムダウンだがそこまでは強化ロボットで進むことが可能。


「宇宙船まではやはりうちのシェルターが一番近いようだな」

「そのようですね」

「第11採掘所の調査の前に宇宙船探索か、今日の会議は急遽宇宙船の調査に変更だな」


午後8時、30分遅れで始まった第11採掘所への調査会議だったが、墜落した宇宙船の捜索会議へと変更された。

だが現場までには、第13採掘場と第17採掘場を通らなければならず2か所共に電磁波の範囲外。

システムやガーディアンを回避しながら進まなければならず、かなりの危険が付きまとう。

さらには宇宙船に要救助者がいた場合は、その調査に最低二日の時間を要する。

宇宙船の所在が味方か敵かも分からないのに、要救助者がいたら助けなければならないのは、宇宙救助条約による協定のため。

敵味方どちらか分かっていなくても、該当する惑星を管理する当事者の団体または国及び組織はこれを敵味方に関わらず救助しなければいけない。

良い法律だが、宇宙には平気で生き物の命を奪う生命体も複数存在する。

まあ宇宙船に乗り遠くまで出ていくほど科学が発達している生物には、そこまでの残虐性はあまりないと言える。

そうでなければそこまで人口を増やすことも科学力を発展させることもできない、ただしどんな事でも例外は存在する。

それは他者から科学力を奪った場合や、何らかの形でその科学力を手に入れた場合、寄生された場合というのも考えられる。

会議は夜遅くまで続いた。


「どうするんだ?」

「いやいや無理だろう、そうなると行き帰りだけで2時間はかかる」

「それに危険地帯をどうやって抜けるのか?」

「転移ポッドを使おうと思う」


BIW(ビーアイ)による瞬間転移装置=宇宙空間ゼロ時間航行法、宇宙空間を瞬間転移で移動できるのだから、そのシステムは地上での短長距離移動にも運用できるはず。

そう、その装置はあるのだが、陸地用の装置は小さい、しかも一人用なので一遍に全員運ぶというわけにはいかない。

それに使用にはキコー力というエネルギー理論システムを要する、そう人の持つエネルギーを使用するということ。

そして装置を動かすにはその数値がレベル5以上必要、このキコー力はキコーレベル発現計測装置で測ることができる。

もちろんその装置も発掘したガラクタを修理して使えるようにしたものだ。

この時代では計測装置を使うことはほとんどない、普段キコー力を測らなければいけないことなどあまり無いからだが。

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