第21話 襲撃は回避された?

襲撃は回避された?


戦闘はほんの10分程度その間のやり取りはシュウと相手の大将しか知らないが、機体を整備倉庫に運びいれているとバイオトープからの作業車も戻ってきた。

もしあの獣機がまだ他にいて襲ってきたならかなりの被害が出ただろう、運よく先制攻撃が決まり相手が逃げ出したから何とかなったが次はどうすればよいのか、シェルターにいる大人たちは考えざるを得なくなった。

シュウが機体を整備倉庫に入れると何人もの仲間が走り寄る。


「シュ!シュウ お前…よくやった!」


まずは整備のダリルが近寄ってくる、そして姫様が抱き着きエージが肩をたたく。


「やったぜ!」

「すげーな、どうやったんだ、あれ?」

「も~心配したんだから~」姫

「やったな~」


その外側から女王が微笑みかける、まるでこうなることが分かっていたかのように。

その後は祝勝会と言うより明日どうするかの話が先だった、この星は夜の間外へ出るやつなどいない、それは敵さんも同じこと。

今頃外の作業をしていた敵は宇宙船の中に逃げ帰っている頃だろう。

その日は遅くまで会議をすることになった、機体の整備担当も寝る暇もなく明日に備えて壊れた個所を補修して行く。

コッドの機体も本来強化ロボットのあるべき姿へとパーツの交換をしていた。

通常の機体にはアームやショベルなどの作業用ハンドモジュールを取り付けるが。

戦闘用は別だ、戦う相手や作戦により武器は様々。

今回の敵はヒットアンドウェイを得意としていそうな獣タイプ、見たところほかに武器はなさそうなので、前足の爪とあの大きな咢(あぎと)でかむのが攻撃だと思われる。

ということは動きを止めてからの攻撃が有効、ならば基本は盾と剣または槍。


「それで隊長作戦は?」

「スパイドローンの情報をもとに作戦を立てようと思う、映像をだしてくれ」

「はい」

「昨日宇宙船に仕掛けておいた監視カメラと今日11地区に置いてきたドローンの映像だ」

「うわ~ 強そうだ」

「今日ここまで攻めてきた獣機は黒豹タイプと分類していいだろう、他にもクマのような大きい奴もいる」

「当然だが今日やっつけたやつは懲りずにまた来る、援軍を連れて な」

「迎え打つ俺たちの手持ちは、壊れかけの強化ロボット7体、俺とトラッドが乗ってきたやつはもともと軍用だから武器に換装すれば対応できるが、他は旧式のガーディアンだ」

「これらは武器と言っても大した武器を付けられない、せいぜい大きな爪ぐらいだ」

「それじゃ負け決定か?」

「いや、さっき聞いた話だが少し性能を上げる方法がある」


隊長がシュウの方を見てうなずく。


「みんなこれは最後の手段だと思って聞いてくれ、うまくいけば何倍にも戦闘能力を上げられる」

「シュウよ、それ本当か?」

「本当かウソかは信じてもらうしかない」

「で どうするんだ?」

「これから話すのは基本的なことだ、俺たちはBIW(ビーアイ)を使用して脳内拡張をしているよな」

「ああそれは皆、知ってる」

「じゃあその元になったのが気功術という魔術だということは?」

「気功術はキコー力だよな」

「そうだ」

「俺たちは小さいころにBIW(ビーアイ)を使って記憶や情報をたくさん手に入れたが、その情報は10分の1にしかすぎないってことは?」

「そうなのか?」

「ああ今のBIW(ビーアイ)に含まれる情報はここ3千年以内のことだ」

「でそれより前の情報が抜けているってこと?」

「そうだキコー力のその先が今のおれたちには必要なんだ」

「おれがさっき勝てたのは機体にキコー力の防御幕を張って強化したからだ」

「なんだ、それ?」

「長い歴史の中でBIWの基本システムだけが重要でほかは切り捨てられてしまったらしい」

「確かにBIW(ビーアイ)は便利だよな、居ながらにして情報を得られるしホロウ画面まで脳内で処理してくれる、キコーテレパスも」

「でそこなんだがこれらはすべて元は魔法からのフィードバックだって、俺は初めて知ったんだ」


魔法というのは昔の物語にしか出てこない超常現象だったが。

使えないはずの現象がどの時代の物語にも出てくる、これらは嘘なのかそれとも本当なのか。

過去にこれらを使えるようにした人類は遥か昔に星ごと滅んだが、今生きている人類はその末裔でもある。

魔法を読み解き、解析し機械化したのがBIW(ビーアイ)ブレーンイメージライター。

脳の使われていない部分を利用する、脳を解析し魔法を使う事で今までできなかった力を手に入れる。

過去の記憶を全ての人間に分け与え今以上の能力を身に着ける、それは大昔なら機械でしか敵わぬ夢だった。

だが本来必要なのは気功力からなる人の持つ可能性、大切なのはそっちの方それは人類の可能性を飛躍させる。


「気功術という気を操る訓練法がある、錬気術ともいう」

「この訓練法を用いて自分の肉体を強化することにより今の数倍の感覚スピードを得ることができる、そうすればマシンの操作は格段に上がる」

「マジかよ!」

「ああ 本当だ!俺の戦いを見ただろう二日前から暇なときはずっと気功術の訓練をしていたんだ」

「今からその情報をBIW(ビーアイ)を通してみんなに配布するから、データを開いてやってみてくれ」


指令室にある管理コンピューターのBIW機能を仲介して全員に気功術の情報を丸ごとコピーする。


「お~なんだ、これ?」

「へ~~こんな方法・初めて知った」

「うそ~でも・へ~ あっおもしろ~~」


受け取ったデータを見て感じ方は様々だが、これで全員の体力や防御力の底上げができる。


「これを暇な時や寝る時に必ずやってくれ、できたら指示に従ってまずは防御法を試してくれ」

「こ こうか?」

「う!おっ光った!」


キコー力に差はあるがもともとBIW(ビーアイ)を使用して拡張した脳の中は気功術をすでに行っている状態にある、今までは意識しなかっただけ、これからは意識して修行することになる。

それはほんの数分のこと、ほぼ全員のキコー力は1から2以上アップする。


「もしかしてこれ使えば強化ロボットなんていらなくね?」

「それは気功術の達人にまでならないと無理かな」

「おいおい気功術で防御は何とかなるけど恐怖心まではなくなんねえだろ」

「それに防御だけじゃ勝てねえんだからな」

「ははは」


それからは全員で強化法の武術の型をやり、そのあとは次の気功癒術、そして気功付与術。

夕飯も忘れて夢中で没頭する仲間たち、数時間でキコー力は10歳児が最低4最高はシュウの14レベルまで上がっていく。

このキコー力で強化マシンの性能もかなり上げることができる、本来操縦に必要なキコー力は4から5だがそれ以上あれば操作のスピードやパワーは当然増える。

今までなら大して変わらなかったキコー力だが、それが倍近く上がるとどうなるか。


「お~なんだ、これすげー体が軽い」

「気功強化術で強化すれば初級でも自分のパワーの1.5倍以上出すことができる、もちろんキコー力のレベルによって上がるから、気功の訓練はずっとしなければならない、さぼれば下がってしまうので注意しないといけないけどね」

「これ悪いことすると下がるって本当か?」

「たぶんこれだけ能力が上がる方法、悪いことに使われないように、当時のご先祖様はわざとリミッターをかけたんじゃないかな」

「もしかしてやつらが狙っていたのはこの情報か?」

「ありえないことはないけど、たぶんまだほかにあると思うよ」

「まあこの情報あいつらが知っていても使えないもんな」

「ああ確かにそうだ悪い奴らはこの力を使えない」


気功術も含め準備は着々進んで行った、次の朝になるころには全員が別人とまでは言わないが、それほどにまで変化したのは言うまでもない。

さらにシュウは先祖の爺さんが残したファイルの中からレベル8までの魔法を全員に教えることにした。

レベル8の魔法それは延命魔法、キコー力レベル8になると使うことができる魔法で、若返ることも含めた3つの魔法からなる。

まあこの魔法を使うか使わないかはその人の自由だが、もちろん若者には必要のない魔法だ。


「ちょっとちょっと」女王

「ここまで教えちゃうなんて、あなた欲がないわね」

「え?そう?」

「そうよ~、昔は道場でお金を取って教えていたんですって」

「そうなんだ、でも今はそんなこと考えていられませんから」

「まあそうだと思って渡したんだけどね」微笑


女王はシュウを見て終始にこにこしていた、そう彼女には昔出会った叔父さんの面影が彼とダブって見えていた。

何を隠そうシュウは彼の直系の子孫なのだから。


「よし訓練はこれぐらいにしておこう、作戦なのだが」

「隊長! ズルいっすよ! ここまでなんて言って自分はまだやってるじゃ無いっすか?」


そう言葉では次へ行こうと促し手のひらの上で魔力球を作りそれをキープしている、もうすでに隊長も上級クラスになっている。

まあもともと隊長さんは訓練の鬼でもあり毎晩のトレーニングは欠かせない。

魔族たちは自分たちより劣っていると思っていた人族が一晩でここまで変わっているとは思わないだろう。

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