第7話 ヒントを求めて
レイブ「はぁ…」
レイブは深く溜息をついている。
昨日の決闘の後、目覚めたのは夜になってからだった。
幼馴染のヘレンは起きるまでずっと付き添ってくれていた。
担任のアリサ先生から事の顛末を聞いた。
自分は魔法を使われることなく負けたこと、点数的にもう後がないことを。
ヘレン「レイブ…」
レイブ「彼は凄いよ…」
ヘレン「え?」
レイブ「紛れもない天才だったよ、どうしようもない位に強かった…」
ヘレンは幼馴染の背中を心配そうに見ている。
彼はここ最近で学園の笑い者だった。
初日から首席に挑んで返り討ちにあった愚か者、相手との実力も理解できない馬鹿など散々である。
別にレイブはそのことを気にしている訳では無い。
ただ、グランの圧倒的な力を前にしてどうすれば良いのか全く分からなくなっていた。
授業が始まってからの最初の休日だが、心は休まらない。
レイブ(僕にはやっぱり才能が無いのかな…)
そんな事を考えてしまう。
自分と同じ無属性で産まれてきた者同士、違いは無いと思っていた。
レイブ「ハァ…」
ヘレン「レイブ…」
彼女と幼馴染にどう声をかけたら良いかわからなくなっていた。
彼女はレイブと違って属性を持っている、レイブの気持ちはどうしてもわからないのだ。
二人で歩いていると、学園にある中庭の中に居る人物に目が入った。
レイブ「あれは、グラン君。」
数日前に自分を打ち負かした相手、そんなグランは庭の中心に座って目を閉じていた。
ヘレン「何してるのかしら?」
レイブ「さあ、僕にはわからないけど、きっと凄いことをしていると思う。」
グラン「…」
グランはここ数ヶ月の間、自身の魔力活性状態から更に強くなる方法を考えていた。
最初はリークを誘ってみたのだが。
リーク『お前と一緒に修行なんてまっぴらごめんだ!俺は俺のやり方でさらなる高みへの道を見つける。』
と言われ断られる。
当初、魔力活性状態と身体強化を併用しようとしたが体力の消耗が激しいため断念した。
グラン(この状態の弱点は燃費の悪さだな。おそらくリークも気づいているし。さて、どう克服するか…)
セリアの修行を手伝いつつ、弱点の克服について頭を悩ませるが思い付かず分身を発動して魔力操作技術を上げることしかできていないのだ。
当然魔力感知も発動しているのでこっちを見ているレイブとヘレンには気づいている。
そんなグランを見ていると背後から。
セリア「何をしているのですか?」
レイブ ヘレン「「うわぁ!!」」
ヘレン「せ、セリア殿下!?おどかさないでください!」
セリア「あら失礼。」クスクス
レイブ「どうしてこちらに?」
セリア「彼の様子を見に来ただけです。ここ最近はああしている事が多いので。」
レイブ「彼は何をしているですか?」
セリア「なんでも、さらなる高みに至る為の方法を考えているのだとか。相変わらずの修行馬鹿ですよ彼は。」
レイブ「凄いですね、彼は…紛れもない天才なんだな…」
セリア「天才…ですか。」
その言葉にセリアはジッとレイブを見つめる。
レイブ「な、何か?」
セリア「あなたは、彼に勝ちたいですか?」
そう言われてレイブは戸惑う。
レイブ「も、勿論です。」
セリア「なら、一つアドバイスです。あなたは彼を天才だと言いましたね。」
レイブ「はい…」
セリア「そう思っている間は、絶対に彼には勝てませんよ。」
レイブ「え?」
セリア「私が言えるのはこれだけです。それと、別にあなたの筋は悪くないと彼も思っていますよ。後、彼をもっと知りたいならもう一人の首席の所に行きなさい。気難しい人ですが、認めてもらえればなんとかなるでしょう。多分、彼は修練場に居ますよ。」
そう言うとセリアはグランの方に歩いていった。
グラン「世話焼きだな。」
セリア「別に、私は彼には興味はありませんよ。ただ、彼のそばにいる彼女の事を思ったら背中を押すぐらい良いかと思っただけです。」
グラン「そうかい。」フフ
セリア「なんですか?」ムス
レイブはセリアから言われた事を考えていた。
レイブ「もう一人の首席…リークって人だよな…あの人、ちょっと怖そうなんだよな…」
ヘレン「まあ、気難しい人って言ってたからね。」
ヘレンは少しだけリークと話したことがあるが、彼は苦手な部類だった。
他人に興味がないというか、無愛想でどこか偉そうというか。
レイブ「けど…彼をグラン君の事を知りたい。それが彼を超えるヒントになるなら。」
レイブ達は修練場に足を運ぶ。
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