第9話 懇願

リーク「修行をつけろだと?俺がお前に?」

レイブ「はい。お願いします!」


そう言って頭を下げるレイブ。

しかし、彼を見るリークの目は冷たい。


リーク「くだらん冗談はよせ。俺がどうして、貴様の世話を焼かねばならん。」

レイブ「そ、それは…」

リーク「俺はこの学園であいつを超えて一番になるために来た。どこの馬の骨ともわからんやつに割く時間は無い!わかったらとっとと消えろ。」

レイブ「そ、その人は違うんですか!」


レイブはユーナのことを言う。


リーク「この女はやがて俺の伴侶となる。そんな奴がその辺の有象無象と変わらん強さなど、恥晒しも良いところだ。だから俺が直接みてる、それだけだ。こいつは最早俺のプライドの一部、弱いままでは俺が困る。」

ユーナ「は、伴侶…」///


伴侶という言葉にユーナは何やら嬉しそうにしているが、リークは鬱陶しそうに舌打ちする。


リーク「わかったら退け!そんなに強くなりたいなら一人で勝手にやれ。俺は知らん。」


そう言ってリークは立ち去る。


ヘレン「まあ、しょうがないわレイブ…まずは出来ることを頑張りましょう?」

レイブ「……」


しかし翌日、レイブはリークの部屋の前で再び土下座していた。


リーク「何度も言っているだろう!そんなつもりはない帰れ!!」


扉越しにリークの怒号が響く。


レイブ「どうか!お願いします!お願いします!」

リーク「帰れ!!!」


また、翌日も翌日も。

当然こんなことが続けば噂にならないわけがない。


セリア「ハァ…まさかこの様な事になるとは。」

グラン「リークの奴、また面倒なことになってんな。」


リークの事を教えたセリアは溜め息をついていた。

グランは少し面白い物を見る目で見ているが。


セリア「正直、彼に教えを請うとは思ってもいませんでした…ユーナさんも可哀想に…」


セリアはレイブに懇願されているリークを見ながらユーナを憐れむ。


ユーナ「い、いえ!私はただリークさんがお疲れのようだから大丈夫かと思っているだけですよ。」

グラン「あれ?リークの呼び方変えた?」

ユーナ「はい。リークさんが様付けは煩わしいと言っていたので。」


リークの現状よりユーナの呼び方の方が気になるグランだが、彼はこの状況に非常に興味が湧いていた。


グラン(本来、レイブにとってリークはあんなふうに頭を下げて頼みごとをするような相手ではない。正直、あの二人の関係の変化には興味があったが、こうも変わるか…さて、どうなるやら。)


グランとしてはレイブがリークに鍛えてもらうのは好都合だ。

レイブは本来なら自分が師としているルティファに鍛えて貰うのだが、その機会を奪ってしまった。

だから、何か変わりになればと思っていたがリークに頼むのは予想外だった。

ここで二人が仲良くなれば敵対する未来も変わるかもしれない。


グラン(けど助け舟を出そうにも、俺が直接ぶっ飛ばした手前、変に拗れそうなんだよな〜手加減しとけば良かったかな〜)


レイブから自分への印象はあまり良くないと思っているグランは下手に動くと面倒になると思い助け舟を出せない。


グラン(ま、ここは主人公君に根比べで頑張ってもらう他ないな。)


そして、先に折れたのはリークの方だった。

リーク「わかった…わかったからもう勘弁してくれ…」

レイブ「え…それじゃあ!」

リーク「但し!!」

レイブ「!」ビクッ

リーク「今期の学期末試験で、そうだな…10位以内に入れなかったらそこから先は無しだ!」


この学園にも当然ながら試験が存在する。

一年に3回学期毎に試験を実施し一年間での総合の成績を出すのだ。

ただし、中間テストは無いので一発勝負だが。


リーク「はぁ…俺は一切優しく鍛えるつもりはない。少しでも弱音を吐いたらそれでも辞めにするからな。わかったか!」

レイブ「は…はい!!!よろしくお願いします!!」


こうして、本来の世界線ではありえなかった関係が二人の間に出来た。



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